早産は全妊娠の5%に発生するといわれています(日本産婦人科学会より)。言い換えると、20人妊婦さんがいたらそのうち1人は早産になるということになり、決して少ない数字ではありません。

もし、早産になった場合、どんなリスクがあるのでしょうか。あまり知りたくないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、知ることで安心できる部分もあるかもしれません。この記事では、早産することで起こりうる合併症やその発生頻度について解説します。

目次

早産とは?

日本では妊娠22週0日~妊娠36週6日までの出産と定義されています。
要するに、赤ちゃんがあるべき予定よりも早く生まれてしまうことです。

赤ちゃんはお母さんのお腹の中である程度の大きさに育ってから外にでてきますが、早産の場合には未熟児で生まれてくる可能性が高くなり、未熟児でない赤ちゃんに比べると出産および発育の過程でいろいろなリスクがあります。

早産になることで起こりうるリスクは?

まず早産によって、赤ちゃんにどんな影響があるのかが気になるかと思います。
早産になることで起こる様々な合併症は、出生後早期に現れるものと、数年経って赤ちゃんが成長してからわかるものとがあります。

出生後早期に現れる可能性のある影響

  1. 無呼吸発作などの呼吸障害
  2. 徐脈や頻脈、不整脈チアノーゼなどの循環障害
  3. 嘔吐、吐血、腹部膨満などの消化器障害
  4. 多血症、貧血などの血液異常
  5. 体温調節障害
  6. 低血糖、高ビリルビン血症(黄疸として表れます)などの代謝異常
  7. 感染症(免疫が不完全なため、菌やウイルスに弱い状態です)
  8. 未熟児網膜症(目の血管が未熟なため、本来血管がないところに増殖したりして最悪の場合失明に繋がります)

これらの症状は、赤ちゃんが未熟な状態で産まれることによって、身体の機能がついて行くことができないために起こります。
適切な治療を受けることで治まっていきますが、呼吸障害によって脳へのダメージがある場合や、未熟児網膜症を発症した場合などは、数年後になんらかの障害が現れることもあります。

成長過程で現れる可能性のある影響

先にも述べたように、出生時の症状が成長過程に影響する場合があります。超低体重で生まれた場合、成長過程であらわれる主な疾患・症状として、次のようなものがあります。

  1. 知的障害
  2. 脳性麻痺
  3. 失明
  4. 弱視
  5. 聴力障害
  6. てんかん
  7. 呼吸障害
  8. 喘息

もちろん、低体重で生まれたすべての赤ちゃんが上のような疾患・症状を抱えるわけではありません。症状が重い子もいれば、比較的軽くて済む子もいます。

大切なわが子や子育てのことを思うと不安かもしれませんが、医師や看護師さん、家族としっかり情報共有をしながら向き合っていけたらと思います。

生存率が気になる方へ

赤ちゃんが生きられるのかについて、知りたい方もいらっしゃるかもしれませんね。
下記の表は死亡率に関する詳細な数字が書いてありますので、知りたい方だけ見ていただければと思います。

その赤ちゃんの状態や産まれた週数、合併症の有無によっても違ってきますが、なかでも出生時の体重は死亡率を大きく左右する要因となり、小さく生まれるほど生存率も低くなってしまう傾向にあります。

少し前のデータになりますが、2000年には次のようなデータが報告されています(日本産婦人科学会より)。

体重 死亡率
500g未満 62.7%
500g~999g 15.2%
1000g~1500g 3.8%

だいたい妊娠22、23週あたりの赤ちゃんの体重が500g前後になります(おおよその目安ですので、発育に遅れがある場合は除きます)。

上記の死亡率を見て色々と思うところがあったかもしれませんが、周産期の医療技術は現在も確実に進歩しており、死亡率はどんどん低くなっています。
ストレスを溜めないことが早産の予防にもなりますので、過度に不安にはならないようにしましょう

最後に、お母さんに知ってほしいこと

以上のように、赤ちゃんの在胎週数(お腹に中にいた週数)と出生体重は、赤ちゃんの将来と密接な関わりがあります。

お母さんができることは、しっかり食べられるときは食べて赤ちゃんに栄養を送り、不要なストレスを避け、休養・睡眠を適度にとり、なるべく健やかな生活を心がけることです。同時に、適度な気遣いや情報交換、悩みの共有は、お母さんだけではなく周囲の人にもできる協力です。

実際の生存率や障害の発生確率を見て、様々な思いを抱えると思います。
もし、早産の可能性があって安静入院中の方は、1日でも長く赤ちゃんがお腹の中で育つことを祈りつつ、安静生活を赤ちゃんと一緒に頑張りましょう。

妊娠37週以降の出産を目指して、無理をしない生活を心がけて早産のリスクを減らしましょう。