双子、三つ子、四つ子…と子宮内に胎児が複数存在する状態を多胎妊娠といいます。妊娠検査薬で陽性が出た時点では、赤ちゃんが2人以上いることを想定している方は少ないかもしれませんね。病院で検査して初めて、多胎妊娠であることがわかり、驚きと共に今後の妊娠経過や出産時はどう産まれてくるのだろうなど、心配なことはたくさん出てくると思います。ここでは、多胎妊娠におけるさまざまなリスクと、分娩方法などについて見ていきましょう。

目次

多胎妊娠の分類

多胎妊娠は、胎児の人数、受精卵の数、羊膜と絨毛膜の数の3つの分類方法があります。

胎児の人数

双胎(双子のこと。胎児が2人)、品胎(3つ子のこと)、四胎(4つ子のこと)と呼び方が違います。

受精卵の数

双胎妊娠の場合、1つの受精卵が細胞分裂する過程で2つに分かれたものを一卵性双胎、同時に2つの卵子が排卵されてそれぞれ受精したものを二卵性双胎といいます。

品胎以上の場合、1つの受精卵から3つに分かれた一卵性多胎や、一卵性双胎と単胎の組み合わせ、双胎が2組など、いろいろなパターンがあります。

羊膜と絨毛膜の数

羊膜と絨毛膜は、赤ちゃんを包む膜です。羊水と赤ちゃんを包むのが羊膜で、その外側に絨毛膜があります。羊膜が個室、絨毛膜が家と思ってもらえばわかりやすいかと思います(絨毛膜には胎盤臍帯というライフラインが付いてきます)。

妊娠15週頃にはこの羊膜と絨毛膜がくっついてしまうため、妊娠10週までに診断を受ける必要があります。この分類によって、妊娠・出産のリスクが大きく変わるため、重要な分類です。下記の3つに分けられます。

  • 一絨毛膜一羊膜双胎(MM双胎):胎児が二人とも同じ家(絨毛膜)の同じ部屋(羊膜)にいる状態。
  • 一絨毛膜二羊膜双胎(MD双胎):胎児が二人とも同じ家(絨毛膜)の別々の部屋(羊膜)にいる状態。
  • 二絨毛膜二羊膜双胎(DD双胎):胎児がそれぞれ別々の家にいる状態。二卵性双胎のほとんどがこの状態。

一絨毛膜双胎の場合、同じ家(絨毛膜)で同じライフライン(胎盤)を共有するため、バランスが取れなくなり、さまざまな問題が出やすくなります。特に部屋(羊膜)も同じである一絨毛膜一羊膜双胎(MM双胎)では、臍帯が絡まるなど物理的な接触の問題も出てきます

二絨毛膜二羊膜双胎(DD双胎)は家(絨毛膜)も部屋も別々なので、他の2つと比べてリスクは低くなります。

多胎妊娠の確率

多胎妊娠はHellin の法則によって1/89(n-1)(n:胎児数)の頻度で発生するといわれていて、双子だと89人に1人(1.1%)、三つ子だと7921人に1人(0.01%)の確率になります。平成22年のデータでは、単胎が1,076,562件(99%)に対して、双胎が10,394件(0.96%)、品胎が162件(0.015%)、四胎以上が2件でした専攻医教育プログラム 1. 多胎妊娠より)。

多胎妊娠のリスク

多胎妊娠のリスクは母体側(おかあさん側)と胎児側(赤ちゃん側)に分けられます。

母体側

1.流産早産

子宮の過度な伸展・増大によって子宮収縮が起こりやすく、破水も起こりやすい状態です。早産は一般的には双胎妊娠の40%,品胎の85%に認められるとされており(日産婦誌52巻1号より)、妊娠早期からの安静入院や子宮収縮抑制剤の投与の可能性が高くなります。

2.妊娠高血圧症候群(HDP)、HELLP症候群

胎児の人数が多ければ多いほど、循環させる血液の量は多くなり、心臓や血管、腎臓など各器官への負担は大きくなっていきます。これらの過度の負担によって、妊娠高血圧症候群(HDP)やHELLP症候群などの命の危険を伴う合併症へと進行する恐れがあります。

妊娠高血圧症候群(HDP)は双胎で20%,品胎で25~60%,四胎で90%以上であると報告されています日産婦誌52巻1号より)。

3.貧血

循環させる血液の量は多い状態ですが、それに対して赤血球などの血液成分の増加量は少なく、胎児の発育にどんどん消費されるため、貧血の状態となります。

4.微弱陣痛弛緩出血

子宮が過度に伸ばされた状態が続くため、子宮収縮が弱くなる場合があります。そのため、陣痛が微弱で分娩が長引いたり、出産後に出血が止まらない弛緩出血の状態になる場合があります。

胎児側

1.双胎間輸血症候群(TTTS)

一絨毛膜双胎に起こる特殊な病気で、共有している胎盤でお互いに繋がっている血管(吻合血管といいます)のバランスが崩れ、片方に血液が余分に流れ、もう片方は血液が足りない状態になる状態です

血液をもらいすぎる方を受血児、血液が足りない方が供血児と呼ばれますが、受血児は心不全や胎児水腫(全身がむくんだ状態)、供血児は発育不全、腎不全となり、双方とも命の危険を伴います

2.双胎一児死亡

一絨毛膜双胎で片方が亡くなった場合、吻合血管を介して生存している胎児から亡くなった胎児へ血液が流れ込む場合があり、生存している胎児に脳障害が起きたり、亡くなるケースがあります

3.胎位異常(懸鉤など)

懸鉤(けんこう)は、胎児同士が引っかかり、分娩が進まなくなる状態をいいます。一絨毛膜双胎に多く発生し、帝王切開分娩となります

4.胎児発育不全(FGR)

何らかの原因で胎児発育が遅延または停止する状態で、双胎の場合、片方は正常な発育でも、もう片方の発育が遅延するケースもあります。

多胎妊娠の分娩方法

双胎の場合、二人とも頭位(頭が下を向いている状態)の場合には経腟分娩が選択されることもあります

先に出てくる胎児(先進児といいます)が頭位、後から出る胎児が骨盤位(逆子)の組み合わせでは経腟分娩も可能ですが、懸鉤が起こった場合など基本的には帝王切開分娩となります。

それ以外の胎位の組み合わせでは、帝王切開分娩が選択されることが多いです。

まとめ

多胎妊娠は喜びも多いですが、リスクも高めの妊娠となります。
お母さん1人で赤ちゃん1人をお腹の中で育てるのも大変なところを、その2倍も3倍も負担がかかるため、周りの助けなしでは妊娠中も産後の生活も大変です。周りに助けてもらえるだけ助けてもらってください
妊娠中と産後を乗り切りましょう。自治体によっては双胎や多胎の人向けの育児支援やサークルがあるところもありますので、ぜひ利用してみてくださいね。