医薬品としてはもちろん、近頃は手作り化粧品などでも注目されているグリセリン。薬品としての歴史が長く安全性が高いといわれていますが、グリセリンとはそもそもどんな成分でどんな効果があるのでしょうか。

災害時の意外な使い方、スポーツをされる方に気になる情報などもお伝えしていきます。

目次

名前の由来は甘いから?!

グリセリンは1779年にスウェーデン人のシェーレがオリーブ油の中から発見、1823年にシュヴルールが油脂であることを知り、味の甘さからglykys(ギリシャ語で甘いの意味)にちなんでグリセリンと名付けられました。その後、心臓の薬として広く知られているニトログリセリンや、爆弾であるダイナマイトの原料などが開発され幅広い用途となっています。

本来は植物由来ですが、現在は人工的に合成されているものも広く使用されています。

そもそもグリセリンの効果とは?

薬品の容器-写真

グリセリンの医薬品としての主な作用は、直腸の粘膜を刺激して排便を促す目的で使用する浣腸剤です。排便できない場合の多くは、硬くなった便が肛門を塞いでしまっています。腸管からの水分をグリセリンが吸収すると、腸の蠕動運動が促進されます。さらに、グリセリンが便に浸透することで便がやわらかくなり、排便がスムーズにできるようになります。

また。皮膚科では肌に薄い膜を張るように肌を保護し、肌からの水分の蒸発を防ぐ作用により、肌の保湿の用途で使用されています。無色透明で粘性があり、先述の通り味は甘いようです。

水とよく混ざるため、近頃は水分で薄めて自家製の保湿剤や化粧水を作られている方も多いようです。市販のシャンプーや他の薬剤にも含まれており幅広い用途で使用されています。

浣腸として使用するときに気を付けたいこと

昔から浣腸剤として歴史のあるグリセリンですが、使用するときの注意事項がいくつかあります。病院から処方されるグリセリン浣腸は通常、薬液が入った部分と長さのあるチューブからできており、チューブ部分を腸の深くまで差し込んで使用します。

立った状態で使用するとチューブが深く入りすぎて腸を傷つける恐れがあるため、立ったままの使用に注意が呼びかけられています。

また、立ったまま使用することにはもう一つ危険な点があります。それは浣腸使用に伴う迷走神経反射による低血圧です。これは一時的にショック状態になり気を失って倒れてしまう症状で大変危険です。使用の際は必ず横になること、できれば家族の方に手伝ってもらうことが望ましいとされています。

しかし、一般的にグリセリンの成分そのものに重大な副作用はないとされており安全だといわれています。

グリセリン化粧品を手作りするときに気を付けたいこと

比較的安全性の高い成分だといわれているグリセリンですが、手作り化粧品を作る場合、原液をそのまま使用すると逆に皮膚表面の水分を吸収してしまい、結果的に皮膚表面が乾燥してしまうので注意しましょう。

水で5~10%ほどに薄めて使用することが一般的のようですが、肌の状態には個人差がありますので、お近くの薬剤師など専門家に相談して、適正な配分を見極めながら自分にあった濃さに薄めて使用するようにしましょう。

化粧品も作らないし、お通じもいいから自分には関係ないかなと思われる方へ

グリセリンは他にどう使うことができるの?その意外な使い道とは?

最近、地震や台風などの災害でいつ自分たちも不便な生活を強いられるとも限りません。準備しておくものの一つとしてもグリセリンはいかがでしょうか。

というのも、長引く避難生活のなかで季節や地域による乾燥やストレスによる肌のトラブルが生じることも多いでしょう。そんなとき市販のグリセリングリセリンを主成分とする浣腸薬があると肌トラブルに活用できます。デリケートな赤ちゃんの肌にも安心ですし、女性の方にとっても避難生活で後回しにされがちな化粧品もない中、少しでもお肌のケアをしたいことと思います。

本来の便秘を解消する目的以外にも一時的な防災グッズのひとつとしての使用も今後期待されます。緊急の保湿剤として使用する際も必ず成分の配合比を確認し専門家に確認して使用しましょう。

この他にも、尿が出にくい場合に尿道にカテーテルを挿入する際のバルーンの固定剤として使用することがあります(腎盂用グリセリン)。

スポーツマンの方へ

歴史が深く、安全性が高いこのグリセリン、一見スポーツマンとは何の関係もなさそうに思えますが意外な落とし穴があります。

実はグリセリンはアンチドーピングの対象、常時禁止薬とされています。使用経路にかかわらず、尿中に相当量のグリセリンが存在すると違反が疑われてしまうおそれがあります。公的な大会に出場するようなスポーツをされる方は、使用前にその大会における使用の是非を事前に確認するようにしましょう。

幅広い用途があるがゆえに注意を払いたいところです。使用したからといって必ずしも尿から検出されるとは言い切れませんが、同様の効果を持つ別のお薬に変えてもらう方が無難でしょう。

まとめ

安全性が高く、用途も幅広いグリセリンですが、意外な使い道や気を付けるべきことを知っていただけましたでしょうか。正しい知識を持って安全に使用するために、医師や薬剤師など専門家に相談しながら有効に活用してみてはいかがでしょうか。