「便秘薬は”クセ”になる」ということを聞いたことがありませんか?実は便秘薬でクセ(習慣性・依存性)になることがあるというのは本当なのです。便秘薬は間違った使用法を続けると、クセになるだけでなく便秘を悪化させることもあります。便秘薬の正しい使用法について解説します。

目次

クセになる便秘薬:刺激性下剤

クセになる便秘薬は刺激性下剤と呼ばれるものです。刺激性下剤といってもピンとこない方が多いかもしれません。しかし、ドラッグストアなどに置いてある便秘薬、大半が刺激性下剤です。センノシド、センノサイド、センナ、ビサコジル、大黄などが主成分の場合は刺激性下剤と思ってよいでしょう。

この便秘薬は大腸を刺激するので、短期間で効果が出ます。腸を刺激するので痛みを伴うことがあるものの、効果がすぐに出るので人気があります。ただし、刺激性下剤は連用すると習慣性となり、腸の粘膜が黒色に変色する結腸メラノーシスが生じ排便機能が低下することがあります。

便秘がひどいからと自己判断で刺激性下剤を増量し続けると、効果が出にくくなってさらに便秘薬を増量してしまうという悪循環が重なります。これではさらに便秘を悪化させてしまうことになります。また、成分が植物由来だから安心と使用されている方もいますが、植物由来だから副作用が少ないというわけではありません。刺激性下剤の連用は避け、便秘がひどいときだけ使用するようにしましょう。

クセにならない便秘薬:機械的下剤

機械的下剤なんて聞いたことがない人が多いのではないでしょうか?これは便に含まれる水分を増やすことで便を軟らかくする薬です。機械的下剤は連用しても習慣性になることは少ないので安心です。機械的下剤には以下のような種類があります。

塩類下剤

マグネシウムなどの塩類を取り入れた薬で、浸透圧の原理で腸管内に水分を引き込んで便を軟らかくします。医療機関では酸化マグネシウムを略して“カマグ”と呼ばれ、よく処方されています。成分には、マグネシウムが含まれています。腎機能障害がある人は、電解質異常が起こることがあるので注意が必要です。

膨張性下剤

便に水分を吸収させることで軟らかくすると同時に、体積を増やすことで腸を刺激して排便を促す効果があります。成分には、寒天や小麦ふすま、プランタゴ・オバタなどが含まれています。ゆるやかに効いてくるので副作用は少ないのですが、効果が出るまで数日かかることもあります。お腹の手術などの影響で腸が狭くなっている人には適していません。

選択的クロライドチャネル賦活薬

30年ぶりに出た新しいタイプの便秘薬です。薬をもらうには医師の診察が必要で、処方箋がないと買うことができません。アミテイーザという名前の薬です。作用としては塩類下剤と似ている点もあるのですが、この薬は大腸ではなく小腸を刺激するので腹痛などの副作用が少ないとされています。

便秘のタイプに合わせた便秘薬

薬剤師さんと相談する男性-写真

一口に便秘と言っても、便秘にもいくつかタイプがあります。便秘のタイプに合わせて便秘薬を使用しないと、逆に便秘を悪化させてしまうこともあるので注意が必要です。便秘のタイプは大きく分けて、「弛緩性便秘」「けいれん性便秘」「直腸性便秘」に分けられます。便秘のタイプに合わせて便秘薬を使用しましょう。

「弛緩性便秘」タイプの便秘薬

弛緩性便秘とは腸がゆるむことで腸の蠕動運動が低下するタイプの便秘です。機械的下剤だけでは効果がない場合には、刺激性下剤を併用します。

「けいれん性便秘」タイプの便秘薬

ストレスなどが関連した便秘型の過敏性腸症候群がこれに当てはまります。知覚過敏も伴うため、腹痛や腹部不快感を伴います。注意しないといけない点は、このタイプの便秘に刺激性下剤を使用すると病状を悪化させる可能性が高いことです。機械的下剤と医療機関で処方される腸管運動を緩和させる薬を併用します。抗不安薬を用いることもあります。

「直腸性便秘」タイプの便秘薬

排便を我慢することを繰り返すと、肛門近くで腸が刺激を受けても便意を感じにくくなり便秘になります。弛緩性便秘に合併することが多い便秘です。肛門近くに便が溜まっているので、ガスにより肛門を刺激する座薬や浣腸を使用します。

最後に

いかがですか?ガンコな便秘を悪化させているのが、習慣的に刺激性下剤を連用していることが原因であることも少なくありません。便秘薬は正しく理解し、適正に使用するようにすることが大切です。適度な運動や腹筋強化、食事習慣、排便習慣を組み合わせて、薬に依存しすぎずに排便できるようにしましょう。特に朝は空腹時に食事が入ることで胃が刺激され、その刺激で大腸が動きやすくなるため、一日のうちで便意が最も起こりやすい時間帯です。朝はきちんと食べ、排便がなくてもトイレに行く習慣をつけることで排便リズムを戻すように心がけましょう。