頭痛は日常生活でもよくみられる不調の一つです。ですがその症状や原因はさまざまで、中でもとくに「吐き気」を伴う場合には注意が必要です。そこで今回は吐き気を伴う頭痛から考えられる病気について紹介していきます。
頭部に原因がある病気
脳腫瘍(のうしゅよう)
脳腫瘍は頭蓋内に発生する腫瘍を指します。頭蓋に囲まれているため診断が難しく、手術も難しいものが多くなっています。悪化すると命にかかわるリスクが高くなるため早めの治療が大切です。
症状
頭部外傷
擦り傷・切り傷など粘膜が傷ついた傷、打撲、骨折、脱臼、圧迫などで神経系、筋肉が損傷された場合です。末梢神経(脳と脊髄以外の神経)や筋肉は直接障害されることが多いのですが、中枢神経(脳と脊髄の神経)は頭蓋骨や背骨の損傷で間接的に強く障害されることが特徴です。代表的な頭部外傷として脳挫傷があります。
症状
- 頭痛
- 吐き気・嘔吐
- 手足の痺れ
- 運動麻痺
- 意識障害
- 言語障害
くも膜下出血
脳を覆う3層の膜のうち、軟膜とくも膜の間(くも膜下腔)には太い動脈が張り巡らされているため、ここで出血が起こると一気に広がります。主な原因は動脈にできたこぶが破裂することです。
くも膜下出血では、今までに経験したことのないような「ハンマーで殴られたような」「頭の中で爆発したような」激しい頭痛をきたします。
症状
- 激しい頭痛
- 吐き気
- 意識障害
脳出血
脳の血管が破れて脳そのものに出血し、神経細胞を圧迫することによって脳の機能が低下してしまいます。脳出血は入浴、飲酒など血圧が上がっているときに起こりやすいのが特徴です。男性では50~60代、女性では閉経前後の発症が多くなります。脳出血には予兆のようなものはなく、突然発症します。
症状
- 頭痛
- 吐き気・嘔吐
- 意識障害
- 片麻痺
高血圧性脳症
急に血圧が急上昇し、意識の状態に障害が起きている状態をいいます。網膜の血管が破れて出血したり、視神経の周りが不鮮明に見え、頭蓋内圧が上昇したりしている状態です。
症状
脳炎
脳そのものに炎症が起きたものが脳炎です。原因はウイルスによるものが多く、日本脳炎や単純ヘルペス脳炎が代表的ですが、ワクチンの普及で現在では日本脳炎はほとんど見られません。早めの治療が非常にその後に影響する病気です。
症状
- 頭痛
- 吐き気
- 発熱
- 意識障害
- けいれん
- 項部硬直(首を前に曲げようとすると抵抗がある、首がかたい状態)
髄膜炎
髄膜とは、脳と脊髄を包んでいる膜のことで、この髄膜に炎症が起きたものが髄膜炎です。原因は様々ですが最も多いのはウイルス性の髄膜炎です。数日で頭痛がピークに達します。経過は比較的よいことが多く、一カ月程度で回復します。
症状
- 発熱
- 項部硬直
- 腹痛・下痢
- 意識障害
- けいれん
脳膿瘍(のうのうよう)
血流に乗って脳の中に細菌が入り炎症を起こして膿がたまった状態です。体の抵抗力(免疫力)が弱くなっているときに起こりやすいとされています。
症状
- 頭痛
- 吐き気
- 麻痺
- 運動障害(運動のバランスがとれず、歩行などがよろめく)
片頭痛
片側(時に両側)性でズキズキといった拍動性の頭痛です。睡眠不足・ストレス・生理・騒音などが誘発因子とされていて若い女性に多くみられます。「吐き気があるので脳腫瘍かも…?」と心配になることがあるかもしれませんが、片頭痛は一定の時間が過ぎると症状はおさまります。
症状
- 頭痛(ズキンズキンという脈打つような痛み)
- 吐き気
- 身体を動かすとガンガンする
- 頭痛の前に、目の前がチカチカする、目の動きが悪くなる、手足が一時的に麻痺する
緊張型頭痛
緊張型頭痛は、精神的なストレスや長時間のデスクワークなど同じ姿勢を続けたことによって血行が悪くなり、顔面や首、頭部の筋肉が緊張することによって起こる頭痛です。
症状
- 頭痛(両側のこめかみから頭のまわりが締め付けられるような)
- 吐き気
- 肩や首の凝り
- 軽いめまい
群発頭痛
群発頭痛の多くは睡眠中に、片側に激痛が起こります。20~40歳の男性に多くみられます。頭痛の中の王様とされるほど痛みが激しく、じっと寝ているのも困難とされています。
症状
他の部位に原因がある病気
尿毒症
尿毒症とは尿として排泄されるべき物質が体内に蓄積し、毒性を示すものです。腎機能が極度に低下している状態で、全身に様々な症状が現れます。
症状
急性扁桃炎
俗にいう「扁桃腺が腫れた」という状態です。子どもに多く風邪や過労のときに喉の痛みと発熱で発症します。子どもの場合、中耳炎も併発しやすい病態です。
症状
- 頭痛
- 吐き気
- 発熱
- のどの痛み
- 倦怠感
中耳炎
中耳炎は風邪をひいたときなど、鼻や喉の炎症に続いて起こることが多く、ウイルスや細菌の感染により、中耳が炎症を起こした状態です。
症状
- 頭痛
- 吐き気・嘔吐
- 耳の痛み・耳だれ
- 発熱
- 鼻づまり・鼻水
- 喉の痛み
閉塞隅角緑内障(へいそくぐうかくりょくないしょう)
普通、眼の角膜と水晶体の間には房水と呼ばれる液体があり、この循環によって眼圧は正常に保たれています。しかし閉塞隅角緑内障では房水の流出に障害が起こり、眼圧が上昇してしまうのです。
症状
- 頭痛
- 吐き気・嘔吐
- 視力低下
- 眼痛
- 結膜充血
その他考えられる病気
インフルエンザ
発症の原因はインフルエンザウイルスで接触感染・飛沫感染によって感染します。インフルエンザは突然発症し、肺炎などに発展する可能性もあるので流行期には十分な注意が必要な呼吸器系の感染症です。
症状
熱中症
高温環境により、体内の水分を喪失して電解質(ナトリウムなど)のバランスが崩れ、体温調節がうまくできなくなった結果熱中症になるとされています。
高温、多湿、風邪が弱いなどの環境因子に加え、激しい労働や運動をした時、高齢者や心臓の病気・糖尿病などの持病をもつ場合に発生しやすくなります。
症状
- 頭痛
- 吐き気
- めまい
- 高い体温
- 赤い・熱い・乾いた皮膚
- 意識障害
吐き気を伴う頭痛から考えられる病気
頭痛と吐き気以外の 主要な症状 |
緊急度 (☆~☆☆☆) |
|
<頭部に原因があるもの> | ||
脳腫瘍 | 視覚・聴覚障害 麻痺 運動障害 |
☆☆☆ |
頭部外傷 | 麻痺 運動・意識・言語障害 |
☆~☆☆☆ (軽度から 重度のものまで) |
くも膜下出血 | 意識障害 | ☆☆☆ |
脳出血 | 麻痺 意識障害 |
☆☆☆ |
高血圧性脳症 | 高血圧 耳鳴り めまい |
☆☆☆ |
脳炎 | 発熱 意識障害 けいれん 項部硬直 |
☆☆☆ |
髄膜炎 | 発熱 腹痛 意識障害 けいれん 項部硬直 |
☆☆☆ |
脳膿瘍 | 麻痺 運動障害 |
☆☆☆ |
片頭痛 | 頭痛前症状 | ☆ |
緊張型頭痛 | 肩・首の凝り めまい |
☆ |
群発頭痛 | 流涙 結膜充血 |
☆ |
<他の部位に原因があるもの> | ||
尿毒症 | 倦怠感 食欲不振 下痢 けいれん 昏睡 |
☆☆☆ |
急性扁桃炎 | 発熱 のどの痛み 倦怠感 |
☆☆ |
中耳炎 | 発熱 耳・喉の痛み 鼻づまり |
☆☆ |
閉塞隅角緑内障 | 視覚障害 眼痛 結膜充血 |
☆☆☆ |
<その他考えられる病気> | ||
インフルエンザ | 発熱 鼻水 喉・腰・関節・筋肉の痛み |
☆☆ |
熱中症 | めまい 高い体温 意識障害 熱い皮膚 |
☆☆ |
いしゃまち編集部作成
まとめ
吐き気を伴う頭痛といってもその原因は様々で、中には危険な病気が原因のこともあります。「なかなか治らない」「そういえば他にも症状がある」という場合にはそのまま放置せず、まずは病院を受診してみましょう。