聴力が低下したときに力強い味方となるのが補聴器です。眼鏡が視力を補うように補聴器は聴力を補うものです。会話の聞き取りを助ける補聴器について今回は説明します。

目次

補聴器とは?

難聴で届きにくくなった音の情報を伝えて日常生活やコミュニケーションを助ける役割を持つのが補聴器です。「マイク」、「増幅器」、「イヤホン」の3つの部分からできていて、音をマイクでひろい、増幅器で大きくしてイヤホンから出しています。

補聴器と集音器の違いとは?

補聴器は会話を聞くための機器です。薬事法で定められ、医療機器として難聴の方の安全を守り効果を上げるための様々な規制があります。それに対して集音器は医療機器としての規制や管理を受けていないので、会話を聞くために使うと様々な問題が起こると考えられています。

補聴器の種類

補聴器はメーカーから沢山の種類が発売されています。耳の形や「きこえ」は一人一人異なります。「きこえ」や使い方に合わせて自分に合った補聴器を選ぶようにしましょう。

耳あな型

耳のあなに収まるタイプ。耳のあなの形状ときこえの程度にあわせて耳あなへフィットするようにオーダーメイドで作るのが一般的です。

耳かけ型

耳にかけて使います。操作が簡単で扱いやすい反面、汗が入りやすいという難点もあります。汗に強い機種も出てきています。

ポケット型

本体をポケットに入れてイヤホンとコードを繋いで使用します。操作は比較的簡単にできますが、コードが邪魔になったり衣ずれ音が入ることもあります。

メガネ型

眼鏡のツルの部分に補聴器が内蔵されています。眼鏡と補聴器を併用できますが、眼鏡レンズと補聴器の両方を調整する必要があります。

特殊補聴器

離れた場所に設置したFM送信機から手元の補聴器に音を送る、騒音に強い、高音域の子音を聞き取りやすいように周波数を圧縮する、など特殊な用途で使います。

補聴器の購入~使用方法まで

補聴器-写真

補聴器には種類によって対応できる難聴の程度が決まっています。自分の難聴の程度に合わせた補聴器を選ぶことが大切です。

1.「聞こえ」のチェックをする

補聴器の購入を検討しているときは、耳鼻咽喉科の医師に「聞こえ」の状態チェックをしてもらい難聴の程度や原因を知っておきます。聴力を測定したうえで、アフターケアの行き届いた販売店を紹介してもらうと安心できます。

特に、補聴器を専門にする補聴器相談医を受診することをおすすめします。補聴器相談医とは、耳鼻咽喉科専門医(日本耳鼻咽喉科学会が認定している資格。詳細はこちら)の中で、聞こえや補聴器に関する講習カリキュラムの全てを履修し認定された医師のことを指し、耳鼻咽喉科の医師の中でも聞こえ・補聴器のプロフェッショナルです。

また、急な難聴、耳だれや耳の中の痛み、めまい・頭痛・湿疹などの症状があるときも、補聴器を使う前に必ず耳鼻科医の診察を受けるようにします。

なお、お近くの補聴器相談医は、「補聴器相談医名簿」から調べることができます

2.補聴器専門店で購入する

カウンセリングをする

専門員が一人一人の状況や要望を聞いて補聴器の必要性を判断したり、医師への相談をすすめます。

聴力の測定

「聞こえ」の状態を把握するために、最新の機器を使って聴力を測定します。

機種の選択と調整

聴力や要望にあわせて沢山の機種の中から適した補聴器を選び調整します。

視聴

適正な音量で明瞭に聞こえるか、雑音などによる不快感がないか、など丁寧に確認します。

持ち帰る

オーダーメイド補聴器はすぐには持ち帰れませんが、その他の補聴器は視聴後に持ち帰ることができます。

補聴器を買うときは、信頼できるお店を選びましょう。専門の知識や技能を持った技能者や有資格者(認定補聴器技能者など)がいて設備など一定の条件を満たしているのが「認定補聴器専門店」です。日ごろから耳鼻科医と連携してサービスの向上にも努めています。

お近くの認定補聴器専門店は、認定補聴器専門店認定システム(公益財団法人テクノエイド協会)のページから探すことが可能です。

通信販売用の補聴器は安価である反面、機能が単純なものが売られています。補聴器は使う人の「聞こえ」にあわせて機器を選び調整するものですが、通販で買う場合は何の調整も行いません。さらに店舗がないので薬事法で定めている安全管理者に補聴器の問題を連絡する方法がなくアフターケアもないので、低価格で販売されているのです。

3.両耳に補聴器をつける

右耳と左耳は連携させて音がする方向や距離などを判断しているので、補聴器も両耳につけることが自然です。両耳に装着することによって、騒音に強い、音の方向が分かりやすい、自然に聞こえる、疲れにくい、などの効果も期待できます。

4.補聴器のお手入れ

補聴器は精密機器のため販売店でのメンテナンスがすすめられていますが、自宅でもできるお手入れがあります。お手入れは機種別に異なるので取扱説明書を読みながら行いましょう。汚れがひどい場合は販売店に相談します。また補聴器を使わないときは、電気を取り外して乾燥ケースにしまいます。空気電池を乾燥ケースに入れたまま保管すると、電池が消耗してしまうからです。

耳あな型

音の出るあなの部分に溜まった耳あかなどの汚れを専用のブラシなどで落とします。空気電池のシールを剥がしたときののりが残っていないか確認します。

耳かけ型

イヤモールドや耳栓に汚れや耳あかが詰まっていないか確認します。補聴器本体の耳にかける部分の汚れをアルコールに浸した綿などで拭い取ります。本体から出ている管に詰まった水滴や汗はこまめにふき取ります。

ポケット型

イヤモールドや耳栓に汚れや耳あかが詰まっていないか確認します。本体のマイク部分のほこりや汚れもブラシで取り除きます。

イヤモールドや耳栓

イヤモールドや耳栓を本体から取り外して、中性洗剤を入れたぬるま湯に浸し、つまようじなどの細い棒で掃除をします。

補聴器をしている人と話すときのポイント

ゆっくりはっきり区切って話す

大きく口を動かして言葉を文節ごとに区切りながらゆっくりはっきり話します。

顔を見ながら話す

口の形や表情からも音を判断できるように顔や口元が見えるように正面を向いて話しましょう。

言い方をかえてみる

聞き取りにくいようだったら何度も繰り返して同じ言葉をいうのではなく、言い方を変えてみます。例えば「7人」を「しちにん」と言って聞き取りにくいときは、「ななにん」と言い換えます。

静かなところで話す

うるさい場所で話すと声がよく聞き取れません。家の中で話すときはテレビを消すなどして静かな環境を作りましょう。

普通の大きさで話す

よく聞こえるようにと大きな声で話すのは逆効果です。補聴器をしている人は大声で話されると耳や頭が痛くなることもあります。声は補聴器が大きくしてくれるので、普通の大きさで話すようにしましょう。

一人ずつ話す

同時に複数の人が話すと上手に聞き取れないこともあるので、一人ずつ相手の顔を見ながら話すようにしましょう。

まとめ

難聴など耳が聞こえにくいときに音の情報を伝える機器が補聴器です。耳鼻咽喉科で聴力の検査をして信頼できる店舗で補聴器を買うようにしましょう。補聴器には種類があるので、個人の状態に合わせたタイプを選びます。補聴器で上手に聞き取れるように周りの人の気遣いも大切です。