性行為による感染症(性感染症)やストレス、加齢などさまざま原因から性器が痛むことがあります。特に女性の場合、男性と比べて下着によって蒸れやすい、肛門が近いため細菌感染が起こりやすいなどの特徴があります。今回は、女性が性器に痛みを感じた場合に考えられる病気について、原因や症状を詳しく紹介していきます。

目次

痛みが生じる病気

バルトリン腺炎・バルトリン腺嚢胞

バルトリン腺は膣の入り口付近にある腺です。性交時に粘液を分泌して、挿入を滑らかにする作用があります。細菌感染によって急性の炎症が起こると、赤い腫れ痛みが現れます。腫れによって腺の開口部が塞がってしまうと、そこに膿が溜まります。これをバルトリン腺膿瘍と呼び、触ると痛みが生じるようになります。

一方、炎症症状はさほどないまま開口部に分泌液が溜まって嚢胞を形成するものをバルトリン腺嚢胞と呼びます。嚢胞自体に痛みはほとんどありませんが、歩くときや性交時に軽い痛みを覚えることがあります。

温座浴や抗菌薬の使用、場合によっては手術をして治します。

性器ヘルペス

原因は単純ヘルペスウイルスで、性行為などによって感染します。初めはかゆみのような違和感が生じ、その後痛みが出て性器に水ぶくれが出現します。水ぶくれが破れるとさらに強い痛みに変化し、排尿や歩行に支障が出ることがあります。

一度感染してしまうと、疲労などによって体の調子を崩したときに再発を繰り返します。抗ウイルス薬で治療します。

ベーチェット病

原因不明の全身性炎症性疾患で、難病に指定されています。ベーチェット病の4つの特徴として口腔内のアフタ性潰瘍、皮膚症状、外陰部潰瘍、眼症状が知られています。外陰部潰瘍は、女性では大陰唇や小陰唇、膣に痛みを伴う潰瘍が生じます。

皮膚症状には腕や足にしこりを伴う赤い皮疹がみられ、顔や首にニキビが生じます。眼症状では痛みや充血、羞明(通常の光でも眩しく感じる)などが生じた後、失明に至ることがあります。この他、関節炎や消化器症状(腹痛、下痢など)、神経症状(麻痺、痺れなど)を伴うこともあります。

性器の潰瘍には副腎ステロイド軟膏を塗って治療します。そのほかの症状にはそれぞれに合った治療で対処していきます。

かゆみと痛みが生じる病気

女性

細菌性膣症

膣内は通常住みつく細菌によって環境を保っています。この菌が何らかの原因で減ってしまい、それ以外の細菌が異常に増殖してしまう状態を細菌性膣症と呼びます。過労やストレスなどで体の免疫力が落ちると感染しやすくなってしまいます。症状は臭いのするおりものや熱を感じる痛み、かゆみも出てきます。粘膜の出血もみられます。

増殖した細菌に合った抗菌薬で治療します。

萎縮性膣炎(老人性膣炎)

女性ホルモンには膣への分泌液を促し、粘膜の保護や細菌などの感染症を防ぐ作用があります。閉経によって女性ホルモンの分泌量が低下すると、膣が乾燥して炎症や出血が起こりやすくなります。外陰部のひりひりする痛み、おりものの増加やかゆみ、出血、性交痛などがみられます。

症状が強い時は、抗菌薬を使ったり女性ホルモンの錠剤を膣に入れたりして補充します。

外陰炎

外陰とは、大陰唇や小陰唇、陰核など、性器の外側の部分を総称したものです。細菌やウイルス、真菌(カビ)などの感染症によって起こりますが、その他の原因として石鹸や薬剤などの化学物質による刺激、下着や生理用品などの擦れによる機械的な刺激、尿や便、帯下などの汚染による刺激、アレルギーなどが挙げられます。

症状は刺激を受けた位置に一致してかゆみ痛み腫れ赤み湿疹などがみられます。また、炎症によってはおりものの量が増加することもあります。抗菌薬や消炎薬、かゆみ止めを塗って治療していきます。

まとめ

性器に異常を感じても恥ずかしさから我慢してしまうことも少なくないかと思います。しかし放置してしまうと、その部分に細菌感染が生じて別の症状を引き起こす可能性があります。一人で悩んでしまう前に産婦人科や性感染症内科を受診してください。