「ベーチェット病」という病気を聞いたことがありますか?ベーチェット病は国の指定難病にも定められている、原因不明で治療法も確立されていない病気です。今回はそんなベーチェット病について、どのような病気なのか分かりやすく解説していきます。

目次

ベーチェット病ってどんな病気?

ベーチェット病とは、口内炎を初発症状として主に目や皮膚、陰部の粘膜に急性の炎症発作を繰り返す病気です。トルコをはじめとする中近東や日本に多くみられ、シルクロード病とも呼ばれています。発症について男女差はほとんどなく、20~40代に多いですが、男性のほうが重症化する傾向にあるようです(難病情報センターより)。

ベーチェット病の原因って?

考える医師-写真

ベーチェット病のはっきりとした要因はまだわかっていません。ですが有力な説として「何らかの遺伝的要因(体質)に病原微生物(細菌やウイルス)の感染が関与して白血球の機能が過剰となって炎症を引き起こす」という考え方があります。

遺伝的要因

疾患遺伝子としてとくに重視されているのがHLA-B51とよばれる遺伝子です。HLAとはhuman leukocyte antigenの略で、和訳でヒト白血球抗原といわれている白血球の血液型のようなものです。ベーチェット病の患者さんはこのHLA-B51の陽性率が40-80%と健常者の10-30%と比べて非常に高くなっています横浜市立大学大学院医学研究科眼科学教室より)。

実は、はじめに説明したベーチェット病の発症率が高いシルクロード沿いの国々は、HLA-B51という遺伝子を持つ人が多い高い国々としても知られています。このようにベーチェット病の好発国はHLA-B51の世界分布と一致しているため、遺伝的な要素が関係すると考えられています。

環境的要因

HLA-B51を保有していてもベーチェット病にならない人もいます。これは、ほかの遺伝子や環境的要因が存在していることを示すといえるでしょう。

環境的要因として考えられるのが病原微生物です。抜歯や扁桃炎があると、ベーチェット病が悪化することがあるため、口腔内の病原菌が関わっているのではないかとされています。とくに虫歯に関する細菌が注目されていますが、未だはっきりとした原因の特定には至っていません。

ベーチェット病の主症状4つ

ベーチェット病の症状と病型-図解

口腔粘膜のアフタ性潰瘍

ほとんどの患者さんに繰り返す口腔アフタがみられます。口腔アフタとは唇や頬の内側の粘膜、舌、歯ぐきなどに、縁がはっきりした円形の痛みを伴う潰瘍です。痛みを伴い、口腔粘膜だけでなく、舌や咽頭にも出現します。

皮膚症状

痛みを伴う赤い斑点状のしこり(結節性紅斑・けっせつせいこうはん)と、にきび様の発疹(毛嚢炎・もうのうえん)が特徴です。結節性紅斑は皮膚の下に痛みを伴うしこりとして膝~足首までの下腿に多く出現します。

眼症状

この病気でもっとも重要な症状で、ほとんどが両目を侵されます。自然に回復することもありますが、再発を繰り返すのが特徴です。症状は目の痛み、充血、視力低下、視野の狭窄など様々ですが、これらは目のぶどう膜と呼ばれる部分に炎症が起こることによります。

発作を繰り返すと、ぶどう膜とその周りの組織が傷つき、視力が徐々に低下して失明に至ることがあります。

外陰部潰瘍

発病初期に多くみられる病変で、外陰部に潰瘍を認め患者さんの多くは痛みを伴います。男性では陰嚢、陰茎、亀頭に、女性は大小陰唇や膣粘膜に発生しやすいです。患者さんにとっては相談しにくい症状ではありますが、ほかの病気ではあまりみられないため、診断の際には重要な所見だといえます。

ベーチェット病のその他の症状5つ

消化器病変

消化器に潰瘍が現れるものを腸管型ベーチェットと呼びます。

潰瘍は深く、食道から直腸に至るまでどこでも病変が生じますが、中でも小腸と大腸の間にある回盲部はできやすい場所となっています。潰瘍と正常な部分の境目がはっきりしていることが特徴です。主な症状は腹痛、下痢、下血などです。

神経病変

神経症状が強く出るものを神経型ベーチェットと呼びます。髄膜炎脳幹脳炎として突然症状が現れる急性型と、片麻痺に代表される小脳症状、認知症などの精神症状を起こした結果予後不良となる慢性進行型に大別されます。男性に多く、患者さんの1割程度がこれに当てはまるとされています。

血管病変

大きな血管に病変がみられるときは血管型ベーチェットとされます。動脈から静脈にわたる広範な血管炎を起こすこともありますが、特に静脈系に多く、下腿の血栓性静脈炎の頻度が最も高くなっています。動脈の場合、腹部や太ももの太い血管に静脈血栓や動脈血栓などができることがあります。男性にみられることが多い病変です。

関節炎

副症状の中では高い頻度で出現し、繰り返し起こるのが特徴です。膝、足首、手首、ひじ、肩などの関節に腫れや痛み、熱っぽさを感じます。

関節リウマチの症状と似ていますが、手の指などの小さい関節は侵されない点や、関節の変形やこわばりはみられないといった特徴から区別できます。

副睾丸炎

男性患者さんの約1割に発生します。痛みと腫れを伴いますが、数日程度で治癒します。出現頻度は多くない症状ですが、ベーチェット病以外ではあまり見かけないものなので診断の際の参考になることがあります。

 

以上の4つの主症状全部揃ったものを完全型といい、3つの以下の主症状といくつかのその他の症状を持つものを不完全型といいます。

まとめ

ここまで、ベーチェット病とはどのようなものかということを中心にご紹介しました。ベーチェット病はさまざまな症状がある病気なので、一つでも当てはまるかもと思ったら早めに医療機関を受診しましょう。早めの治療をすることで、重症化は十分防ぐことができるのです。