おへそから液体が出る、おへそに痛みがある、という症状に悩まされたことはあるでしょうか。最初はただの腹痛かと思ったけれど、一向に痛みがひかない、膿がたくさん出てくる、といった症状がある場合、まず疑われるのが臍炎(さいえん)というものです。今回は臍炎が一体どのような病気なのかを見ていきましょう。

目次

「臍炎」とは?症状、3つの合併症

まず、臍炎とは何でしょうか。臍(さい)とは、おへその医学的な呼び方で、炎は炎症のことです。つまり、臍炎とは簡単にいうと、おへそとその周りで起こった炎症のことを指します。

多くは、新生児のへその緒が取れたあとの傷口が感染をおこすことで発症し、おへそ周辺の痛みに加えて、おへそから膿(うみ)が出たり、血が出たりします。炎症が長く続いている場合は、その刺激によって肉芽(にくげ)と呼ばれる、赤い肉の盛り上がりがみられることもあります。

また、臍炎はひどくなると炎症がすすんでお腹の壁や肝臓の方まで広がってしまい、門脈圧亢進症(もんみゃくあつこうしんしょう)や、腹壁蜂窩織炎(ふくへきほうかしきえん)、壊死性筋膜炎(えしせいきんまくえん)と呼ばれる病気を引き起こしてしまう可能性があります。

門脈圧亢進症とは、肝臓と腸をつなぐ門脈という血管の圧力があがってしてしまう病気で、脾臓が腫れたり、お腹に水が溜まったりしてしまいます。

腹壁蜂窩織炎、壊死性筋膜炎は、炎症が広がってお腹の壁や、筋肉の周りにまで影響が出ている状態で、放置した場合全身に菌が回って死んでしまう可能性もある怖い病気です。なので、これらの病気になってしまった場合は早急な対処が必要になります。

臍炎はなぜ起こる?主な2つの原因疾患

臍炎はほとんどが新生児で起こる病気ですが、成人したあとでも起こる可能性はあります。原因としておへその掃除のしすぎや、やり方が間違っているといったものの他に、主に次の2つの病気の可能性が考えられます。

  • 尿膜管遺残症(にょうまくかんいざんしょう)
  • 卵黄のう管遺残症(らんおうのうかんいざんしょう)

遺残(いざん)とは、本来なくなるべきものが残ってしまっていることを指します。つまり、簡単にいえばこの二つは尿膜管と卵黄のう管が残ってしまう病気ということなのですが、いったい尿膜管と卵黄のう管とは何なのでしょうか。

尿膜管、卵黄のう管とは?

尿膜管と卵黄のう管というのは、まだお腹の中にいる赤ちゃんがもっている管で、尿膜管は赤ちゃんのおへそと膀胱(ぼうこう)を、卵黄のう管は赤ちゃんのおへそと腸をつないでいます。赤ちゃんは老廃物を自分で処理できないため、この2つの管とへその緒を通してお母さんに老廃物を渡しているのです。

産まれたあとは自分で老廃物を排出できるため、尿膜管と卵黄のう管は自然に閉じていきます。しかし、まれにこれらが閉じずに残ってしまうことがあり、尿膜管が残った場合は尿膜管遺残症、卵黄のう管が残った場合は卵黄のう管遺残症となるのです。

尿膜管遺残症、卵黄のう管遺残症の症状

消毒-写真

これらの病気になった場合、おへそに普通はない管が残ってしまうことになるのですが、これが菌にとっては絶好のすみかとなります。菌は大抵、暖かくて湿っているところで一番増殖するからです。あるタイミングで、菌がおへそを通って管の中に入ると、菌がそこでどんどんと増殖していき、その菌と体が戦うことで、臍炎を引き起こしてしまうのです。

臍炎を引き起こしていない場合でも、おへそが湿っている、おへそから何かの液体が出てくる、という場合は、尿膜管遺残症、卵黄のう管遺残症の可能性があるので、早い段階で皮膚科にかかるのがよいかもしれません。

特に尿膜管遺残症、卵黄のう管遺残症の多くは若い患者さんであるため、そういった世代の方はこれらの症状に注意が必要でしょう。

またこのような病気がなくとも、不衛生にしていたり、必要以上におへそをいじっていたりすると、菌が感染してしまって臍炎となる可能性があるので注意しましょう。

まとめ

臍炎とはおへそでおこる炎症のことで、主に産まれたばかりの新生児で見られます。おへその痛みや膿、出血が主な症状で、ひどくなるとより深刻な症状に繋がる可能性も有ります。

成人してから臍炎が起こった場合、尿膜管遺残症、卵黄のう管遺残症という病気の可能性もあります。まだ炎症が起こってなくても、おへそから液体が出てくる場合は尿膜管遺残症、卵黄のう管遺残症可能性があるので病院で見てもらうのがよいでしょう。