ある日突然起こる腹痛を総称して、急性腹症といいます。急性腹症には急性胃炎急性腸炎、などの病気があり、腹痛とともに嘔吐や下痢などの症状もみられます。今回はこれらの急な腹痛について原因や症状などを説明します。

目次

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急性腹症とは

急性腹症とは、その名の通りで急性の腹痛の症状がみられる病気をさします。急性腹症には腹痛を伴う多くの病気が分類されており、腹痛の症状によっては緊急手術が必要となることもあります。ただし、急性腹症で最もよくみられるのは急性胃腸炎であり、この他急な腹痛を訴える場合、点滴治療や内服薬で症状が緩和されることがほとんどです。

なお、慢性的な腹痛などについては、「お腹が痛い…腹痛の3タイプと痛みの部位ごと対処法」の記事をご参照ください。

急性腹症の症状や原因

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では、急性腹症に含まれる急性胃炎、急性腸炎、急性胃腸炎などの腹痛の原因や症状についてみていきましょう。

急性胃炎

急性胃炎では、様々な原因で胃の粘膜が炎症を起こします。日常的に起こりやすい病気で、胃のあたりの不快感や痛み・むかつきや嘔吐・食欲不振といった症状がみられます。1日安静にしていたり、市販薬を数日服用すれば治ることも多いです。

急性胃炎の原因となるのは、以下のようなものです。

  • コーヒー・緑茶、香辛料、アルコール、冷たいもの・熱いものなど刺激物の摂りすぎ
  • 風邪薬や鎮痛剤の副作用
  • ストレス
  • たばこ
  • 不規則な生活
  • 風邪インフルエンザなどの感染症
  • 食物アレルギー

急性腸炎

主な症状としては、急な腹痛や下痢(便に血液や未消化物が混じる)がみられます。そのほか、悪心・嘔吐・お腹のはり・発熱などが起こり、重症の場合は脱力感や脱水症状が起こることもあります。多くは数日から1~2週間で自然に治りますが、重症の場合は原因として

  • 細菌・ウイルス・寄生虫に汚染された食品の摂取
  • 薬物の服用に伴う腸内細菌の変化
  • 腸の血行障害
  • 食物アレルギー

などが考えられます。

これらの病気による腹痛は、胃腸が急激に収縮したり、過度に弛緩することが原因で起こります。痛みは長時間続くものではなく、痛くなくなったり、ぶり返したりをくり返します。痛む場所も一定しないことが多いです。

また、腹痛の症状ではなく、急激な下痢の症状がみられた場合は、伝染病や食中毒、感染症などが原因となっていることがあります。症状が悪化しないよう、注意が必要です。食中毒による腹痛については、「食中毒になったら…?消化器内科医の教える受診すべき症状と治療の流れ」の記事もご覧ください。

 

一方、慢性的に下痢の症状がみられる場合は、過敏性腸症候群を発症しているおそれがあります。この過敏性腸症候群は抱え込んだストレスなどが腸を刺激し、便通に異常をきたす病気です。下痢については、「便秘と下痢はどちらが体に悪い?」の記事もあわせてご参照ください。

急性腹症を発症する主な病気

ここでは急性腹症の主な原因となる急性胃炎と急性腸炎について解説しましたが、急な腹痛はほかにも様々な病気を示している可能性があります。

胃腸炎と同じ症状だとしても、腸が閉塞する腸閉塞(ちょうへいそく)や虫垂炎(いわゆる盲腸炎)の初期症状と見分けがつかない場合もあります。ですから、症状だけで自己判断せず、我慢できない腹痛の場合はまず、かかりつけ医に相談してください。

腹痛の原因となる病態 病名
緊急処置や
手術が必要
血管や臓器の破裂 腹部大動脈瘤破裂
子宮外妊娠
肝臓がん破裂
血管の閉塞 腸間膜動静脈閉塞症
絞扼性腸閉塞
卵巣嚢腫茎捻転
虚血性腸炎
胃腸の閉塞 腸閉塞
ヘルニア嵌頓
S状結腸軸捻転
腸重積
胃腸の破裂 胃潰瘍穿孔
十二指腸潰瘍穿孔
急性虫垂炎穿孔
憩室炎穿孔
大腸癌穿孔
食道破裂
重症の腹膜炎 急性虫垂炎
急性胆道炎
急性膵炎
急性骨盤腹膜炎
その他 胆石症
総胆管結石症
尿路結石
緊急処置や
手術は必要ない
軽症の腹膜炎 急性虫垂炎
急性膵炎
憩室炎
付属器炎
急性骨盤腹膜炎
胃腸粘膜の炎症 急性胃炎
急性腸炎
急性胃腸炎
過敏性腸炎
その他 尿路結石
腹部以外の原因 胸部の病気 狭心症
心筋梗塞
肺炎
食道炎
その他 糖尿病
膠原病
尿毒症
急性副腎不全
副甲状腺機能亢進症 など

出典:KOMPAS(慶應義塾大学病院)|急性腹症を参考にいしゃまち編集部作成

おわりに

急激に起こる腹痛は急性腹症と呼ばれます。その症状によっては点滴治療などでは回復せず、手術が必要となる場合もあります。急性腹症に含まれる病気が原因となる腹痛は、長時間続くわけではありませんが、痛みが一度収まったとしてもその後突然腹痛を生じることもあります。そのため、急な腹痛が起こったら、症状が悪化する前に医療機関で診てもらうようにしましょう。