多くの日本人が悩まされている腹痛。重要な会議や朝急いでいるときに限って、お腹が痛くなってしまうという人も少なくないのではないでしょうか。今回は腹痛の3つのタイプとお腹が痛いときの部位ごとの対処法を紹介します。

目次

腹痛の3つの基本要素

腹痛には大きく分けて内臓痛、体性痛、関連痛の3つがあります。通常はまず内臓痛が起こり、徐々に体性痛や関連痛も感じるようになります。

内臓痛

内臓痛は胃、腸、尿管、胆嚢などの「管腔臓器」が無理やり伸びたり、強く縮んだりした時に起こる痛みです。きりきりとうずくような痛みが一定の時間をおいて繰り返し起こるのが特徴で、疝痛(せんつう)と呼ばれます。

内臓痛は吐き気や嘔吐、顔面蒼白、冷や汗などの症状を伴うこともあり、痛みの場所は漠然としています。

体性痛

体性痛は突き刺すように鋭く、内臓痛より強い痛みが長く(30分以上)続くのが特徴です。痛む場所ははっきりしていて、炎症を起こしている場所を押すと強く痛みます。体を動かすことで痛みが増すことが多いです。特に、歩くと「ひびく」ことがあります。

また、体性痛は自然に治まらず、手術が必要になることが多いのが特徴です。

関連痛

関連痛は炎症を起こしている部分の刺激があまりにも強いときに、隣接する神経線維を刺激することによって別の部位に起こる痛みです。腹部以外にも生じることがあり、放散痛と呼ばれています。痛みの原因となる臓器によって、関連痛の場所がある程度決まっています。

痛みを感じる部位ごとに考えられる病気

お腹の病気には緊急の治療や処置が必要な重大な病気が数多くあります。今まで経験したことのない痛みや普段の腹痛と異なる痛みの場合は、なるべく早くかかりつけ医に診断してもらいましょう。ここでは腹痛の部位とその他の症状から考えられる病気、及びそれらの病気を疑った際に取るべき行動をまとめてご紹介します。

みぞおちが痛い(急性、軽度~中等度の痛み)

症状など 考えられる病気
飲み込むと痛い
胸やけがする
胃炎
胃・食道逆流症
(逆流性食道炎を含む)

食道裂孔ヘルニア
吐き気や嘔吐
発熱はない
ストレス状態
鎮痛薬を連用
刺激の強い嗜好品を愛飲
急性胃炎
吐き気や嘔吐 急性虫唾炎(初期)
急性胆嚢炎
多量の飲酒
軽い吐き気
背中の痛み
前かがみになると楽
全身倦怠感
大酒飲み
急性膵炎
焼けるような痛みと吐き気 心筋梗塞

胃炎・胃食道逆流症・食道裂孔ヘルニア

  • 翌日医師に相談

急性胃炎

  • 翌日医師に相談
  • 消化の良い流動食にする
  • 肉類、アルコール、コーヒーを避ける

急性虫垂炎(初期)・急性胆嚢炎

  • ただちに医師に相談
  • 指示があるまでは絶食
  • 入院が必要

急性膵炎

  • 当日、医師の診断を受ける
  • 指示があるまでは絶食
  • 入院が必要

心筋梗塞

  • 救急車で病院へ

虫垂炎は特に初期には診断がつきにくい疾患です。虫垂炎は手術になることもあるため、外科医がいれば日中ならば必ず診察をしてもらいましょう。また、夜間当直体制の場合でも必ず一声かけておかねばならない疾患です。破裂して腹膜炎になり緊急手術となることもありますし、腹膜炎となると命に関わることもあるからです。

みぞおちが痛い(慢性、定期的にうずく、持続痛)

症状など 考えられる病気
早朝の空腹時や食後に痛む
軽い吐き気
慢性胃炎
機能性ディスペプシア
軽い吐き気
腰や背中の痛み
吐血がある
中高年である
胃・十二指腸潰瘍
体重の減少
鈍痛
食欲不振
胃がん
全身倦怠感
軽い吐き気
食欲不振
黄疸に伴う鈍い痛み
肝炎
肝臓がん
痛みが3か月以上継続、繰り返す
軽い吐き気
背中の痛み
前かがみになると楽
全身倦怠感
大酒飲み
慢性膵炎

慢性胃炎・機能性ディスペプシア

  • 念のため、医師に相談

胃・十二指腸潰瘍

  • 医師に相談
    特に、吐血がある場合は直ちに消化器内科医に相談のうえ入院、緊急で胃カメラによる検査を受けてください。

胃がん

  • 消化器内科医に相談の上、入院して検査

肝炎・肝がん

  • ただちに受診
  • 入院が必要

慢性膵炎

  • 念のため、医師に相談
  • 痛みが強い場合はただちに受診

わき腹が痛い

右上腹部が痛む場合
症状など 考えられる病気
軽い吐き気と嘔吐
発熱
黄疸
胆嚢炎
突然の痛み
吐き気と嘔吐
右肩へかけての痛み
油物を食べると悪化する
胆石症

胆嚢炎

  • ただちに医師に相談
  • 入院が必要

胆石症

  • 医師に相談
  • 痛みが出ている場合、入院治療を要することも
その他、脇腹が痛む場合
症状ほか 考えられる病気
慢性的に繰り返すうずく痛み
血尿がみられる
軽い吐き気・嘔吐
発熱
背中の痛み
叩くとひびく
歩くとひびく
尿路結石
突然、左側腹部に痛みを感じる
下血がみられる
吐き気や嘔吐を伴う場合も
虚血性大腸炎
※ただし、症状は左に限定されない
軽度から中等度の間欠的な痛み
排便により軽快
慢性便秘症

胆嚢炎

  • ただちに医師に相談
  • 入院が必要

胆石症

  • 医師に相談
  • 痛みが出ている場合、入院治療を要することもある

尿路結石

  • ただちに泌尿器科医に相談(血尿がある場合は特に)

虚血性大腸炎

  • ただちに受診
  • 絶食、入院が必要

慢性便秘症

  • からだを動かす
  • 規則的な食事と排便の習慣をつける
  • 食物繊維の多い食品を食べる
  • 医師に相談

下腹部・恥骨上部が痛い

左右のどちらかが痛む場合、下腹部全体が痛む場合、女性の場合、男性の場合に分けて解説します。

右下腹部が痛む
症状など 考えられる病気
突然発症
吐き気・嘔吐から発症
時間とともに痛みが強まる
虫垂炎
上行結腸憩室炎
鈍痛
便秘
軽い発熱
移動性盲腸

虫垂炎・上行結腸憩室炎

  • 医師に相談
  • 虫垂炎の場合、入院が必要になることも

移動性盲腸

  • 便が出ない時は、医師に相談する
左下腹部が痛む
症状など 考えられる病気
下痢を伴う
うずくような痛み
S状結腸憩室炎
発熱がある
突然発症
慢性的にうずく痛み
下痢
軽い吐き気・嘔吐
急性腸炎
慢性腸炎
生卵を食べた後、突然発症 特にサルモネラ食中毒
粘血便性の下痢 特に腸管出血性大腸菌
O157

食中毒
赤痢
粘血便
下痢が繰り返す
潰瘍性大腸炎
下痢と便秘を交互に繰り返す
排便により軽快
過敏性腸症候群
血便・下痢・便秘を繰り返す
重度の便秘が続く
高齢者に多い
大腸がん

S状結腸憩室炎

  • 医師に相談

急性腸炎・慢性腸炎

  • 医師に相談
  • 水分を十分に補給
  • 食事は消化の良いものをとる

サルモネラ食中毒

  • 当日、医師に相談

腸管出血性大腸菌、食中毒、赤痢

  • 当日、医師に相談

潰瘍性大腸炎

  • 早急に消化器内科医に相談
    (できれば、炎症性腸疾患を専門とする医師へ)

過敏性腸症候群

  • 医師に相談

大腸がん

  • ただちに医師に相談
下腹部全体が痛む
症状など 考えられる病気
突然の血尿、うずく痛み
冷や汗、嘔吐
尿路結石
頻尿
排尿時に痛む
血尿
膀胱炎
はじめに血尿の症状
排尿時に痛む
排尿障害
男性に多い
膀胱腫瘍

尿路結石

  • ただちに医師に相談
  • 入院が必要

膀胱炎

  • 医師に相談

膀胱腫瘍

  • 翌日、医師に相談
  • 泌尿器科医を受診
女性の場合 
症状など 考えられる病気
発熱がある
吐き気・嘔吐
おりものの増加
子宮付属器炎
悪寒、震えを伴う
発熱がある
嘔吐
激しい下腹部痛
骨盤髄膜炎
月経開始数日前~月経2日までの
持続的な月経痛
月経1日目に最も痛む
子宮内膜症
運動や性交後の突然の出血 卵巣出血

子宮付属器炎

  • 婦人科を受診

骨盤髄膜炎

  • 至急、婦人科を受診

子宮内膜症

  • 念のため、婦人科を受診

卵巣出血

  • ただちに婦人科を受診
男性の場合
症状など 考えられる病気
頻尿
排尿時に痛む
血尿
前立腺炎

前立腺炎

  • 泌尿器科を受診

まとめ

出血をともなう場合、強い痛みの場合はただちに受診しましょう。多くの場合、入院を必要とします。

腹痛といっても、お腹には多くの臓器があるため診断が難しいこともあります。しっかりと検査を受けることが必要です。

お腹の痛みには重大な病気も多くありますので、急激な痛みや普段感じない痛みを感じた場合は、かかりつけの医師に相談しましょう。