春先に起こる眼のかゆみの原因といえば、花粉症によるアレルギー性結膜炎をまず思い浮かべることでしょう。ただ、症状がいつもよりひどかったり、異物感が強く気になったりする場合は、より重度の春季カタルを発症している恐れがあります。今回は春季カタルについて、症状や治療法を紹介します。
アレルギー性結膜炎と春季カタル
アレルギー性結膜炎はアレルギー反応を引き起こす「アレルゲン」が結膜(白目)に付着することで結膜が炎症を起こし、かゆみなどの症状を引き起こす疾患です。
春季カタルはアレルギー性結膜炎が重症化したものです。子供、なかでも男児に多くみられます。アレルギー性結膜炎は10代でピークを迎えた後に患者数は減少する特徴がありますが、最近では20歳を過ぎても春季カタルがみられることがあります。
名前の由来は季節の変わり目、特に春から夏にかけて発症、悪化することが多いためだとされています。ただ、基本的には1年を通してみられます。
また、春季カタルの患者さんは同じアレルギーの病気であるアトピー性皮膚炎を合併しているケースが多いです。合併がみられる割合は約70%以上とされています(日本眼科医会より)。
春季カタルの原因
アレルゲンとして知られているのは、樹木や草花の花粉、ホコリやダニ・カビなどのハウスダストや動物の毛などです。この他、コンタクトレンズの汚れもアレルゲンとなってアレルギー性結膜炎を引き起こす場合もあります。
春季カタルを引き起こすアレルゲンとしてはハウスダストが多いですが、花粉などほかのアレルゲンでも起こりえます。
春季カタルの症状
春季カタルの自覚症状としては、次のような症状があります。
- かゆみ
- 目の痛み
- 充血
- ゴロゴロとした異物感
- 目やに
アトピー性皮膚炎を合併した場合は、眼の周囲にある皮膚が赤くなったり、ただれ、かさつきがみられたりすることがあります。
また春季カタルの大きな特徴として、眼瞼結膜と輪部結膜の増殖性変化があります。
眼瞼結膜の増殖性変化とは、上まぶたの裏側に石垣のようなデコボコがたくさんできる変化で、石垣状乳頭増殖といいます。この状態で瞬きをすると角膜が傷ついてしまうことがあります。傷が悪化すると潰瘍(より深い組織まで傷つけること)になり、激しい痛みを生じ生活に支障をきたす場合があります。
輪部結膜の増殖性変化とは、角膜(黒目)と球結膜(白目)の境目が盛り上がって堤防のようになってしまう変化で、異物感などの原因となります。角膜に傷がつくと、痛みやまぶしさや視力低下などの症状が伴うこともあります。
春季カタルの治療法
まずかゆみを引き起こすヒスタミンに作用する抗ヒスタミン薬や、ヒスタミンなどを増やさないようにするメディエーター遊離抑制薬などの抗アレルギー点眼薬が使用されます。
症状がひどい場合は抗アレルギー点眼薬だけでは不十分なため、免疫抑制点眼薬(カルシニューリン阻害薬)やステロイド点眼薬を追加します。
ステロイド点眼薬は効果の発現が早いですが、副作用として眼圧の上昇があります。免疫抑制点眼薬はステロイド点眼液に比較して効果の発現はゆっくりですが眼圧上昇の副作用がありません。それぞれの特徴を上手く利用しながら点眼液を選択していきます。眼科医の説明にしたがって使用してください。
さらに症状に応じては、ステロイドの結膜下注射や、増殖した乳頭の切除などの外科的治療を行うこともあります。
まとめ
春季カタルは花粉症と同じアレルギー性結膜炎という分類にはなりますが、その症状は花粉症よりもさらに強く、重症例では生活に支障をきたすような状態となってしまいます。症状がひどい場合は放置せず、早いうちに眼科を受診するようにしましょう。