新生児マス・スクリーニング検査をご存知でしょうか?生まれてきた赤ちゃんを対象に行われ、生まれつき代謝異常の病気早期発見することで、早期治療・障害発生や重症化の予防目的とした検査です。

これから初めて赤ちゃんを迎えるご家族にとって、病院でのいろいろな検査は少なからず不安を感じるものです。記事では、新生児マス・スクリーニング検査の目的と方法を中心にみていきたいと思います。

目次

新生児マス・スクリーニング検査とはどんな検査?

新生児マス・スクリーニング検査とは、赤ちゃんの生まれつきの疾患のうち先天性代謝異常を対象にした検査です。

代謝とは、体内で生きるために必要な物質を分解・合成する作用のことです。代謝異常がある場合に知らずに放置してしまうと、見かけは元気な赤ちゃんであっても成長過程で発育障害や知能障害などが出現することがあります。そして、先天性代謝異常の中には、生まれてすぐに検査し早期に発見・治療することで、障害の発生を予防し重症化を避けることができるものがあるのです。

新生児マス・スクリーニング検査は、こうした先天性代謝異常を早期発見するために、「子供の成育段階で起こり得る障害発生の予防事業」として世界各国で行われている検査です。日本でも厚生労働省の母子保健事業として1977年からスタートしました。

検査は強制ではなく任意ですが、お産をした病院で受けることができます。現在は日本で生まれるほぼ100の赤ちゃんがこの検査を受けています。

どんな病気が検査できるの?

これまで日本の新生児マス・スクリーニング検査は、2つのホルモンの疾患(先天性甲状腺機能低下症、先天性副腎過形成症)、4つの先天代謝異常(フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、ガラクトース血症)の計6疾患が対象でした。

2014年4月よりタンデムマス法という検査方法が全国に導入され、より多くの疾患が発見できるようになりました。現在では19疾患が対象(埼玉県福祉部少子政策課より)で、検査をうける自治体によって差はあるものの、その他にも見つけられる疾患が数種類あります。

新生児マス・スクリーニング検査対象疾患(19疾患)

内分泌異常

2疾患

先天性甲状腺機能低下症
先天性副腎過形成症

糖質代謝異常

1疾患

ガラクトース血症

アミノ酸代謝異常

5疾患

フェニルケトン尿症
メープルシロップ尿症
ホモシスチン尿症
シトルリン血症1型
アルギニノコハク酸尿症

有機酸代謝異常

7疾患

メチルマロン酸血症
プロピオン酸血症
イソ吉草酸血症
メチルクロトニルグリシン尿症
ヒドロキシメチルグルタル酸血症
複合カルボキシラーゼ欠損症
グルタル酸血症1型

脂肪酸代謝異常

4疾患

中鎖アシル脱水素CoA酵素欠損症
極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症
三頭酵素/長鎖3-ヒドロキシアシルCoa脱水素酵素欠損症
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-1欠損症

埼玉県福祉部少子政策課を参考にいしゃまち編集部作成

検査ができる場所、時期と検査手順など…

場所と検査を受ける方法

検査はお産をした病院で行われます。この検査は強制ではなく任意であるため申し込みが必要です。お産が近づくと医師や助産師から新生児マス・スクリーニング検査について説明があり、申込書を渡されます。この時に不明なことは確認しておくと良いでしょう。

検査が受けられる時期

検査の時期は、生後4~6日目に行われます。なお、出生時の体重が2,000g未満の赤ちゃんでは、生後4~6日目の検査結果が正常でも体重増加に従って検査結果に違いが出るケースがあります。そこで、体重が2,500gに達した時点、もしくは生後1カ月の時点で再度検査を行います。

検査の手順

検査には数滴の血液が必要で、赤ちゃんのかかとに針をさし、にじみ出てくる血液を採取するのが一般的です。検査用のろ紙に採取した血液をしみこませ、そのろ紙を病院から専門の検査機関に郵送します。検査機関では精密機器を用いて、ろ紙の中に含まれる微量の成分を分析し、疾患の可能性がないかを調べます。

費用負担

検査自体は公費負担ですが、採血にかかる費用は自己負担となります。ただし、採血にかかる費用は出産費用に組みこまれているケースがほとんどです。

検査後の流れ

再検査が必要なケースや精密検査を要するケースでは、ただちに採血を行った病院に連絡され、家族には病院から検査結果の説明があります。正常な場合は、赤ちゃんの1ヶ月健診の際に病院で結果が伝えられます。

検査で異常がみつかったら…

ベビーグッズ-写真
新生児マス・スクリーニングでは、検査結果を 正常 ② 再検査が必要 ③ 要精密検査(すぐに病院で精密検査を行うのが望ましい) の3つのレベルで判定しています。

再検査とは、最初の検査で確実に正常と判断できないときに、念のためもう一度検査することです。再検査が必要なのは100人に1人程度の割合といわれています(北海道薬剤師会 公衆衛生検査センターより)。

初回あるいは再検査の結果、疾患の疑いがあれば精密検査が必要です。その際、検査結果は家族だけではなく、精密検査医療機関(内分泌の小児科医のいる医療機関:通常は大学病院やこども医療センターの医療機関)、コンサルタント医師(対象疾患の検査や治療を熟知している専門医師)、ならびに保健所へ通知される仕組みになっています。そして、速やかに受診、診断、治療にすすめるよう家族、赤ちゃんをサポートしてくれます。

診断が確定した場合には、通院可能な医療機関で継続的な治療が受けられるよう、主治医とコンサルト医師が連携するシステムが整備されています。

実際に新生児マス・スクリーニング検査で疾患がみつかる頻度は、対象となる全ての疾患をあわせて、検査を受けた赤ちゃんのうち9,000人に1人の割合だといわれています(タンデムマス・スクリーニング普及協会より)。

まとめ

新生児マス・スクリーニング検査は、先天性代謝異常などを早期に発見し、速やかに治療を開始することに役立つ検査です。生まれて最初に行われる健康診断ともいえますね。早期に治療を開始することで、子供の成長をさまたげずに生活できる疾患もあります。