お母さんと男の子

「子どもの包茎」医師が教えるおちんちんの基礎知識

インターネットでさまざまな情報が入手できる時代ですが、「正しい情報」を見分けることは難しいものです。

あなたは、「子どもの包茎」について、どこまで知っていますか?知っている情報は、本当に正確なものですか?この記事では、泌尿器科専門医として診察を行ってきた医師が、子どもの「包茎」や「おちんちん」に関する基礎知識について解説しています。(いしゃまち編集部)

なぜ「子どもの包茎」なのか?

この記事にアクセスした方が知りたいことはいろいろだと思います。

  • 子どものおちんちんはどう扱えばいいの?
  • お医者さんに手術を勧められたんだけど本当に手術が必要なの?
  • あるお友だちは息子さんのおちんちんをむいているようだけど、別の友達は何もしていないけど、どっちが正解?
  • ネットを見ても「むく派」、「むかない派」があって、どっちを信じたらいいのかわからない?
  • 息子がおちんちんをいつもいじっているけど、どう辞めさせたらいいのかがわからない?
  • おちんちんが腫れたのは親がきれいにしていないからだと怒られたけど、誰もむくことを教えてくれなかった。
  • ミクロペニスと言われたけど、治療はどうするの?

他にもいろんな思いがあると思いますが、子どものおちんちんや包茎について誰もが納得できる共通理解、これが正解というものは残念ながら存在しません。

えっ!?じゃあ、この記事は何のためにあるの??と思っていただくことが、まずは理解への第一歩です。

この記事は包茎やおちんちんに関する、正確、かつ科学的な情報をお伝えし、読んでくださった方が、これらの情報を元に、子どもの包茎とは何かを、子どもの包茎をどう扱うべきかを考えたり、周りの人と「こう書いてあるけどどう思う?」と一緒にお話ができたりするための情報が盛り込んであるところです。

「でも、むくべきか、むかざるべきかを知りたいのです」という気が短い方は、筆者のホームページをご覧ください。ただ、そこでは十分紹介しきれないでいたことをここでは丁寧に説明していきます。読み進んでいただけると、この記事の目的、ねらい、どうして考えてから対処すべきかが、そして何よりいろんな人と一緒になって考えることが大事だということがご理解いただけると思います。

「手術」から「むきむき体操」へ

包茎に対して手術を勧める医者もいれば、手術は不要と言い続けている医者もいます。ではどちらが「正しい」のでしょうか。どうやって見極めればいいのでしょうか。

実は私(岩室紳也)は1981年に医者になったときから日本泌尿器科学会に所属し、泌尿器科の専門医として、包茎だけではなく様々な手術が大好き、かつ得意な医者でした。その私が、「患者さんの希望に沿って包茎の手術をする」という姿勢から、「包茎は手術をしなくてもいい」という考え方に変わったのが、日本泌尿器科学会総会で次のやり取りを聞いたことがきっかけでした。

海外の泌尿器科医がビデオで包茎の手術方法の発表していたときに、小児泌尿器科医で著名な先生が「その症例は手術の必要はないのではないか」と質問されていました。

海外の包茎事情(コラム)はさておき、「手術が必要な包茎」と「手術が不要な包茎」があることに気づかされました。それ以来、手術が必要な包茎とはどのような状態をいうのか。手術がいらない包茎をどうして手術をする医者がいるのか。そんなことを考え続けてきました。

コラム海外の包茎事情

ミケランジェロが制作したダビデ像がなぜ包茎なのか、ということが常に議論の的になります。ユダヤ人やイスラム教徒の人たちは子どもの包皮を切除する「割礼」をすることが常識化しています。アメリカでも近年までは子どもの割礼はごく当たり前のことでしたが、アメリカの小児科学会などが反対声明を出すなど、必ずしも割礼をすべきか否かの共通理解があるわけではありません。
ちなみに子供の場合、おちんちんが勃起していない状態だと、割礼をしなければおちんちんのむけ具合(図【おちんちんの構造(外観)】)はほとんどが「0度」ですが、割礼をすると多くの場合「Ⅵ度」になります。

おちんちんの構造

一般的に「おちんちん」と呼ばれている、男の子たちの陰茎の構造をまずは正確に理解しましょう。

1.外観

おちんちんの構造(外観)

おちんちんは普段、何もしない状態で観察すると、多くの場合(岩室が診察した新生児4,531人の98.7%)は図【おちんちんの構造(外観)】の0度の状態です。もちろん、何もしない状態で亀頭部の一部から全部が見えている状態(Ⅰ~Ⅵ度)のおちんちんもありますが、それらも全て正常です。

ちなみに大人になっても日本人の場合はおちんちんが勃起していない状態だと70%の男性が0度の状態です。

2.包皮口

おちんちんの構造(0度タテ断面)

0度のおちんちんの縦断面図です(図【おちんちんの構造(0度タテ断面)】)。亀頭部を覆う包皮が亀頭部を隠していると、亀頭部が見えない0度の状態になっています。

包皮の先端が開いているのが包皮口です。尿道口を出た尿はこの包皮口から放出されます。包皮口の広さは様々で、針の穴ほどしか広がっていない包皮口もあれば、亀頭部の横断面積よりも広い包皮口もあります。

包皮口は、亀頭部を覆っているときは皺になっているため、広い包皮口であっても一見すると狭く見えます。包皮口が針の穴程度の広さだと、包皮をずらして亀頭部を露出しようとしても亀頭部が全く見えない0度の状態です。次に述べる「包皮と亀頭部の癒着がない場合」でも、包皮口が狭ければ亀頭部を露出できる度合いは包皮口の広さで決まります。

3.包皮と亀頭部

包皮の内側(包皮内板)と亀頭部の表面は癒着している場合と、離れている場合とがあります。癒着している場合でも、亀頭部のほぼ全面が癒着しているのもあれば、一部分だけ癒着しているのもあります。

包皮口亀頭部の横断面より広い場合でも、包皮内板と亀頭部が癒着している度合いが、包皮をむいたときのⅠ度からⅥ度の差になります。

4.恥垢

おちんちんの恥垢とは?

 

亀頭部も包皮内板もいずれも皮膚ですので、体の他の所の皮膚と同じで垢が出ます。包皮と亀頭部の間に貯まっている垢(あか)を「恥垢(ちこう)」(図【おちんちんの恥垢とは?】)と呼びます。

5.勃起

勃起は陰茎海綿体に血液が充満することで陰茎が膨張延伸することをいいます。子どもは生まれたときから勃起する、すなわちおちんちんが固くなることがあります。勃起したときのおちんちんの見た目の状態は、子どもによってそれぞれ異なります。勃起したときに0度の子どもからⅥ度の子どもまで様々です。この違いは包皮の長さ、包皮口の広さ、包皮内板と亀頭部の癒着の度合い、陰茎海綿体の膨張率など、様々な要因で変わってきます。

6.大きさ

よく「おちんちんが小さい」と気にする親や、「ミクロペニスの疑い」と言って泌尿器科に紹介してくる小児科の先生がいます。詳しくは後述しますが、大人になったときにおちんちんのサイズ、正確にいえば陰茎海綿体が勃起したときに5センチあれば機能的には問題はありません。そのためにもおちんちんの構造、解剖を理解し、適切に対応することが重要です。

包茎とは

「包茎(ほうけい)って何ですか?」をぜひ多くの泌尿器科医に投げかけてください。もちろん仲間同士で議論をするのもいいと思います。おそらく返ってくる答えは十人十色だと思います。「えっ!?専門の泌尿器科医の先生の答えがどうして統一されていないのですか?」という質問が返ってきそうですね。なぜそうなるのでしょうか。

医学部で使う教科書にも、泌尿器科医が参考にしている用語集にも明確な定義がないばかりか、「包茎」を扱う一番専門的な学会であるはずの日本泌尿器科学会でさえも、「包茎の定義」についてきちんと議論をしたことがないのです。

日本小児泌尿器科学会のHPの記載です。筆者も所属している学会ですが、ここに記載されていることが全ての学会員が共通理解していること、納得していることであるとは必ずしもいえません。それだけ、十分な議論がされていないということです。

さらに混乱に拍車をかけるのが、「真性包茎」、「仮性包茎」、「嵌頓包茎」といった言葉です。実際にこれらの言葉で自己診断をして筆者の外来を受診する人が後を絶ちません。

「真性包茎」と「仮性包茎」

おちんちんの構造(包茎Ⅰ)

これらの言葉も医者に限らず、泌尿器科医でも解釈が異なります。これはそれぞれの言葉が医学用語ではなく、今の段階ではレセプト病名(医療機関が健康保険組合に対して、患者支払い分以外の保険診療分を受け取る際の請求書に記載する病名)になります。

泌尿器科医の誰に聞いても共通理解できる状態は以下のものです。

真性包茎

…包皮を陰茎部の根元に向かってどんなに引っ張っても亀頭部が全く見えない状態

仮性包茎

…包皮を陰茎部の根元に向かって引っ張ると、容易に亀頭部が完全に冠状溝まで露出できる状態

では、包皮を陰茎部の根元に向かって引っ張ったときに、亀頭部が一部しか露出できない状態は何というかについては、共通の理解がない、医学的な名前がないということになります。日本人の成人の70%が上記の仮性包茎の状態です。すなわち、仮性包茎は「まったく正常な状態」ということになります。

これらのことを踏まえて、インターネットを検索してみてください。そうすると、この定義とは異なるとんでもない表現がいろいろ出てきます。これらは、いろんな人が自分勝手な解釈したものなのか、それとも読み手をだますことが目的なのかわかりません。一つひとつを解説しませんが、要は医学的なコンセンサスができていないことをいいことに、適当な、いいかげんなことを書いている実態が見えると思います。

一方でこのサイトを最後まで読んでいただければ、子どもの場合、「真性包茎」であっても、必ず正常な、かつ清潔が保てる「仮性包茎」にできるということをご理解いただけるはずです。

嵌頓包茎(かんとんほうけい)

おちんちんの構造(包茎Ⅱ)

もう一つ、インターネットによく出てくる「包茎」の一つが「嵌頓包茎(かんとんほうけい)」です。これは真性包茎や仮性包茎とは異なり、立派な医学的病名です。嵌頓包茎とは包皮をずらして亀頭部を露出させたときに包皮口が狭いため、包皮を戻さない、あるいは戻すことができず、包皮がむくんでしまった状態をいいます(図【おちんちんの構造(包茎Ⅱ】)。この状態を放置しておくと、様々なトラブルになりますので、直ちに包皮を戻してください。自分で戻せない時はすぐに泌尿器科を受診してください。

なお、ネットには包皮口が狭いだけで「嵌頓包茎」と言っている記述があふれていますが、それは誤った記述、誤解・恐怖心を与える記述です。正確には、包皮口が狭い包茎はあくまでも「包皮口が狭いだけ」です。「嵌頓包茎」は包皮口が狭い包茎をむいたままにしたためにむくんでしまった状態であり、後の記事に紹介する方法で包皮口が広がれば「嵌頓包茎」になる恐れはなくなります。

次回記事に向けて…

ついつい「うちの子どもは治療が必要なのかな?」「手術はすべきなのか?」と気持ちが急いてしまい、ここまで「おちんちんの構造」や「包茎とはなにか」を考えさせられる機会はなかったのではないでしょうか。

答えを求めるその前に、基礎知識を整理しておくことはとても重要です。いろんな情報が錯綜する中、ある情報が正しいされる理由はなにか、なぜある方法を選択すべきなのかを、理解をするときの助けとなってくれます。

この記事が、「子どもの包茎」について考え、さらには周囲の人と話し合うきっかけとなれば幸いです。(いしゃまち編集部)