副腎は、左右の腎臓の上にあるごく小さな臓器で、血圧、血糖、水分・塩分量などの体内環境をコントロールに関連するホルモンを作っている内分泌器です。
副腎の機能も、人間ドックで調べることができます。
ただし通常の検査には入っていないことが多く、普段はなかなか疑われにくい病気を見つける検査です。
それぞれの検査項目にはどのような意味があるのでしょうか。
異常値が出た場合に可能性のある病気や副腎の病気、数値をコントロールするために生活の中でできることを中心に紹介します。
副腎から分泌されるホルモン
副腎には、中心の髄質(ずいしつ)と呼ばれる部位と、これを覆う皮質と呼ばれる部位があります。
それぞれの部位からは、異なるホルモンが分泌されています。
分泌されるホルモン | ||
皮質 | ステロイドホルモン | コルチゾール |
アルドステロン | ||
DHEA | ||
髄質 | カテコールアミン | アドレナリン |
ノルアドレナリン |
それぞれの機能は下記の通りです。
- コルチゾール:ストレスから体を守る、糖利用の調節、血圧を正常に保つ
- アルドステロン:塩分、カリウム、水分のバランスを保つ
- DHEA:男性ホルモン
- アドレナリン、ノルアドレナリン:血糖上昇、心拍数の増大、血管拡張
出典:筑波大学乳腺・甲状腺・内分泌外科を参考にいしゃまち編集部作成
どんな検査で副腎機能をチェックする?
では、副腎機能はどのような検査で評価するのでしょうか?副腎機能をチェックできる検査には下記のようなものがあります。
血液尿検査
各ホルモン値を血液や尿検査で調べることで、副腎のどの部位に問題が生じているのか、どのホルモンの分泌が異常なのかを判断する材料になります。
腹部エコー検査CT検査
副腎機能に異常をきたす原因として副腎腫瘍があり、腹部エコー検査やCT検査で副腎の大きさに異常がないか、腫瘍がないかを確認します。
血圧測定
副腎から分泌されるホルモンは血圧の調節に関わっているため、高血圧もしくは低血圧の指摘をきっかけに副腎機能の異常が見つかるケースもあります。
検査値の異常、どんな病気が疑われる?
人間ドックで副腎機能検査の異常を指摘された場合、どのような病気の疑いがあるのでしょうか。
下記の表に基準値と基準値をはずれた場合に疑われる病気についてまとめてみました。
基準値は、検査を行う組合・団体・病院によって異なる場合があります。
検査項目 | 基準値 | 基準値からはずれた場合に疑われる病気 | |
皮質 | コルチゾール | 7-15μg/dl | 【高値】
【低値】 アジソン病 |
アルドステロン | 36-240 pg/ml | 【高値】 原発性アルドステロン症 高血圧 低カリウム血症 脱力感 四肢麻痺 多飲多尿 代謝性アルカローシス【低値】 低血圧 高カリウム血症 代謝性アシドーシス |
|
髄質 | アドレナリン | 血漿:0.12ng/ml以下 尿:15μg/dl以下 |
【高値】 褐色細胞腫 交感神経芽細胞腫 うっ血性心不全 狭心症 心筋梗塞 慢性腎不全 本態性高血圧 甲状腺機能低下症 糖尿病 肝炎 肝硬変 |
ノルアドレナリン | 血漿:0.06±0.5ng/ml 尿:120μg/dl以下 |
出典:神奈川県予防医学協会副腎皮質・副腎髄質を参考にいしゃまち編集部作成
副腎機能で異常値が出た場合でも、すぐに何かしらの病気とは限りません。
しかし、高血圧や糖尿病、肝炎、肝硬変など比較的頻度の高い生活習慣病とも関連のある数値でもあるので、数値を改善する必要がある場合にはきちんと医師の指導に従うようにしましょう。
病気が疑われるとき、他にどんな検査が必要?
ここでは、副腎自体の異常についてふれたいと思います。
人間ドックで副腎機能の異常を指摘された場合、医療機関ではCT検査や腹部エコー検査、MRI、シンチグラフィ―などの画像検査で副腎の大きさ、形、内部の構造などを調べます。
また血液検査でホルモンの分泌状況を細かく調べます。
副腎皮質ホルモンの分泌は、脳の下垂体と呼ばれる部位から分泌する副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)によって促されるため、副腎皮質ホルモンの分泌に問題をきたしている場合、副腎の病気ではなく下垂体の病気が原因となっている可能性があります。
そこで、下垂体に異常があるのかを判断するためACTHを測定するケースもあります。
人間ドックで発見されることのある副腎の病気には下記のようなものがあります。
1.副腎腫瘍
副腎腫瘍は、非機能性腫瘍と機能性腫瘍の2種類に分けられます。
非機能性腫瘍は症状がほとんどありません。
ホルモン分泌に大きな異常がなく、腫瘍の大きさが3cm未満であればそのまま経過観察となります。
一方、機能性腫瘍は過剰なホルモン分泌により色々な症状の原因となります。手術で腫瘍を摘出することが原則です。
機能性腫瘍はどのホルモンが過剰であるかによって下記の3種類に分類されます。
クッシング症候群
副腎腫瘍からコルチゾールが過剰に分泌されているのがクッシング症候群です。
女性に多く、高血圧や糖尿病、肥満、顔のむくみ、毛深さといった症状が出現します。
原発性アルドステロン症
アルドステロンが過剰に分泌されているのが原発性アルドステロン症です。
若年から高齢者まであらゆる年代に発症し、女性にやや多い病気です。
高血圧、筋力の低下といった症状が出現し、気付かないで放置していると心肥大、脳卒中を発症するリスクがあります。
褐色細胞腫
アドレナリンが過剰に分泌されているのが褐色細胞腫です。
症状は高血圧、動悸、頭痛、発汗などで、普段の血圧は高くないのに運動やストレスなどで血圧値が発作的に高くなることもあります。
放置すると脳血管疾患による突然死、心不全などのリスクがあります。
血圧値を安定させるための薬物療法を行ったうえで手術を行います。
2.副腎皮質機能低下症
副腎皮質機能低下症は、副腎機能が低下し、副腎皮質が分泌するステロイドホルモンの低下した状態です。
副腎皮質機能低下症には副腎原発性(アジソン病)と下垂体異常によるものがあります。
体重減少、食欲不振、集中力の低下、脱力感、低血圧、低血糖などの症状が見られます。
治療は不足するステロイドホルモンの補充を行います。
副腎機能の異常が疑われた場合には内分泌・代謝内科を受診してください。
治療するほどではないと言われたけれど…、日常生活での注意点

精密検査の結果、副腎に病気はなかったとしても、やや副腎が疲れ気味なのかもしれません。
副腎が疲れ気味だと、ストレスに脆く、疲れやすさやアレルギー症状が出現するなど、どことなく元気がなく、不調をきたします。
副腎を労わるには、下記のようなことを心掛けると良いでしょう。
- 睡眠時間をしっかり確保する
- くつろぎの時間を持つ
- 仕事を詰め込みすぎず、休暇をしっかりとる
- ストレス発散を心掛ける
- 栄養バランスの良い食生活
- アルコール、コーヒー、たばこ、塩分を控えめにする
- 血圧が高めであれば、そのまま放置せず医療機関を受診する
- 副腎に腫瘍を認めるものの、症状やホルモン分泌異常がなく、経過観察しているケースでは医師の指示に従い定期受診を続ける
まとめ
副腎はからだの機能を調節するために不可欠な臓器です。
ですが、副腎機能に問題ないか詳しく検査する機会は少ないため、人間ドックを活用してチェックしてみると良いでしょう。
副腎機能の項目はオプションとなっている場合が多いので、確認してみてください。
人間ドックに興味がある方は、こちらのリンクから予約することも可能です(人間ドックのここカラダのページが開きます)。
副腎はストレスの関与を受けやすい臓器ですから、日ごろからストレスを溜め込まず自分をいたわることも大切です。また、もしも病気を疑うような症状があった場合には内分泌・代謝内科を受診するようにしてください。