季節の変わり目や気温が下がったとき、寒い季節は、神経痛や関節痛がひどくなる…といった方は多いのではないでしょうか?
痛み止めを飲んだりシップを貼ったりするけれど、かぶれや副作用が心配で毎日は服用・使用できないといった方にはぜひ漢方である「桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)」がお勧めです。
そこで今回はこの桂枝加苓朮附湯について詳しくみていきたいと思います。

目次

桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)とは?

桂枝加苓朮附湯は、中国からの原典ではなく江戸時代の漢方医 吉益東洞によって考案された「桂枝加朮附湯」という日本独自の漢方薬と非常に似ています。以下に生薬の組み合わせを記しておきます。

  • 桂皮(ケイヒ)
  • 芍薬(シャクヤク)
  • 茯苓(ブクリョウ)
  • 蒼朮(ソウジュツ)
  • 附子(ブシ)
  • 生姜(ショウキョウ)
  • 大棗(タイソウ)
  • 甘草(カンゾウ)

これらの生薬の一つ一つの役割が合わさって、神経痛や関節痛に効くようになっています。

桂枝加苓朮附湯はどんな人に向いているのか?

神経痛、関節痛といっても色々なタイプの方がいると思いますが、今回ご紹介する桂枝加苓朮附湯は

  • 寒くなると余計に痛みがひどくなる方
  • お風呂に入ると痛みが和らぐ方
  • 手足が冷えやすい方

に効果的です。また、体力が少なくて冷え性の方(虚証)に良く効く漢方薬ですので、逆に体力があって暑がりでのぼせやすい人には不向きとなります。

桂枝加苓朮附湯の効果は?

桂枝加苓朮附湯の効能効果は「神経痛・関節痛」とされており、慢性関節リウマチ、手足の冷える方、腰背部痛症や四肢関節痛、むち打ち様疼痛などにも用いられており、「冷えると(雨の日に)昔の傷がうずく症状によく使われています。

5つの胃腸生薬があるため「胃腸に優しい鎮痛剤」といわれていることからも、慢性的な痛みを伴う症状については西洋の鎮痛剤の使用頻度を減らすことができます。

なぜ神経痛・関節痛によく効くのでしょうか?
それでは、生薬の特性をみていきましょう。
まず桂枝と芍薬。シナモンである桂枝は、冷えのぼせに効く生薬であり胃薬の効能もあります。芍薬は、通経(身体の通りをもどす)作用、骨格筋や平滑筋に作用する筋弛緩効果、四肢や腹部への止痛緩和薬として働きます。
茯苓は、腸管からの水分吸収を促し、むくみや眩悸(めまいと動悸)を良くします。疲れている場合には身体を補います(補脾作用)。朮という生薬は、補脾に働く“白朮”と止痛に働く“蒼朮”の2つがあり、蒼朮は発汗させて四肢痛を治します(止痛緩和)。
附子は、利尿作用と手足の冷えを良くする温熱効果があります。
生姜、大棗、甘草は胃薬と言って良いでしょう。

からだが疲れたり冷えたりすると血の巡りなどが悪くなり、やがてむくんで痛みが生じると考えられています。そこで桂枝加苓朮附湯は熱を作って体を温めること(桂枝・芍薬・附子)血の巡りを良くして(芍薬)むくみを取り去り(茯苓・蒼朮・附子)痛みを緩和(芍薬・蒼朮・甘草)させてくれます。

以上から「冷えて痛む」に効果的な漢方として知られているのです。

桂枝加苓朮附湯の副作用

甘草(カンゾウ)は甘味生薬であり急迫症状(急性痛、痙攣痛など)を治す生薬ですが、その副作用として血中カリウムが低下して発症する「偽アルドステロン症」には注意が必要です。桂枝加苓朮附湯のみの単剤での服用だけであれば、心配する必要はないと思います。しかし複数の漢方を服用している場合などは注意してください。もし、どうしてもカリウムの低下が気になる方は、バナナなどを摂取すると良いでしょう。

偽アルドステロン症では、まずむくみ血圧上昇だるい手足のしびれ力が入らないなどの症状がみられ、進行すると筋肉が壊れたり歩くことができなくなったり意識を失うこともあります。そのため、このような初めの症状が現れた場合は早めに医療機関へ相談してください。

また附子(ブシ)が含まれるため、他製剤との附子との重複にも注意が必要です。附子とはトリカブトの毒性成分を無毒化したものです。それでも身体に合わない場合は、舌や唇のしびれなどの副作用が現れることがあります。妊娠中の方も、冷えの強い方は大丈夫ですが副作用が現れやすい場合もあるため医師と相談しながら使う方が良いでしょう。

まとめ

寒い日や雨が降る日は古傷が痛む…といたフレーズはきいたことがあると思いますが、今回ご紹介した漢方はまさにそのような場合に効果的な漢方です。西洋の消炎解熱鎮痛薬(NSAIDs)のもつ副作用である胃痛(胃炎や胃潰瘍になりやすい)が心配な方は、このような漢方と上手に付き合うことで西洋薬を減らせられたり、痛みを緩和したりすることができます。

しかし漢方を選ぶ際には、似たような名前の漢方があるので注意したいところです。今回の桂枝加苓朮附湯についても似たような漢方に「桂枝加芍薬湯」や「桂枝茯苓丸」などがありパッと見ただけでは区別のつかないものもたくさんあります。ちなみに医療用「桂枝加朮附湯」は株式会社ツムラから、今回の『桂枝加苓朮附湯』はオースギ製薬(あるいはクラシエ薬品)が製造販売しています。ご使用の際には漢方薬剤師や医師(漢方医)に確認してください。