洗濯物を干したり、服を着たり、カバンを背負ったり…。人は肩の関節が十分に動くことで、日常生活の様々な行動が可能になっています。今回は肩の関節に注目して、そのメカニズムを紹介したいと思います。五十肩などの状態を理解する上でも役に立つので、参考にしてみてください。
肩関節は1つじゃない?肩関節を構成する5つの関節を紹介
肩関節と聞くと、多くの方は腕の骨(上腕骨、じょうわんこつ)と肩甲骨をつなぐ関節を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、肩の関節は1つではありません。実は、以下の5つの関節により構成されています。
- 肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ)
- 肩鎖関節(けんさかんせつ)
- 胸鎖関節(きょうさかんせつ)
- 肩甲胸郭関節(けんこうきょうかくかんせつ)
- 肩峰下関節(けんぽうかかんせつ)
このうち肩甲上腕関節、肩鎖関節、胸鎖関節は解剖学的関節、肩甲胸郭関節、肩峰下関節は機能的関節と分類されています。腕を挙げたり、肩を動かしたりする際には5つの関節と、肩を覆うようについている三角筋、上腕骨と肩甲骨をつなぐ腱板(※)がそれぞれ十分に動くことが必要になります。
※腱板…棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょくかきん)、小円筋(しょうえんきん)、肩甲下筋(けんこうかきん)4つの筋肉の腱を総称したもの。
それぞれの関節の特徴について紹介します。
肩甲上腕関節
一般的に肩の関節と呼ばれる、腕の付け根に当たる関節です。上腕骨の先端にある丸みを帯びた上腕骨頭と、肩甲骨のくぼみに当たる関節窩(かんせつか)で構成されています。
上腕骨頭と関節窩はゴルフボールとティーのような関係になっています。つまり、ボールに比べて受け皿は非常に小さく不安定な状態です。このことが肩の自由な動きを可能にしていて、人間の体の中で最も大きく動かせる関節です。
ただ不安定なままだとうまく動かなかったり、怪我をしやすかったりします。そのため関節を安定させるために肩甲上腕関節の周囲には、関節包(かんせつほう)や靱帯(じんたい)、関節唇(かんせつしん)、筋肉といった組織で守られています。
胸鎖関節
胸の真ん中にある胸骨と鎖骨の間にある関節です。
肩を上げるときには肩甲骨や鎖骨が連動して動きますが、それは胸鎖関節と次に出てくる肩鎖関節によって繋がっているためです。とりわけ胸鎖関節は鎖骨を動かす軸となる関節で、靱帯で補強されています。
肩鎖関節
鎖骨の外側と肩甲骨の肩峰と呼ばれる部分で構成される関節です。鎖骨と肩甲骨をつなげて、両者のスムーズな動きを作り出します。
肩甲胸郭関節
肋骨で作られる胸から背中にかけての部分を胸郭(きょうかく)と呼びます。肩甲骨は見かけは背中に浮いている状態ですが、胸郭と関節を作っており、二つを総称して肩甲胸郭関節と呼びます。
肩峰下関節
肩峰と上腕骨頭の間にある関節で、第二肩関節と呼ばれています。その間には肩峰下滑液包や腱板があります。スポーツなどで肩を酷使すると、肩峰下滑液包の炎症や肩腱板断裂が起こることがあります。
それぞれの関節が連動して動くことで、スムーズな動きが実現できています。
まとめ
肩関節と一口にいっても、細かく見るといくつか種類があります。意外と知らない特徴があったのではないでしょうか?肩関節を理解する際の参考にしてみてください。