洗濯物を干す時や、つり革に捕まる時にしびれや痛みを感じると、首が悪いか肩こりかと思ってしまいがちです。しかし、首や手・肘にあきらかな原因がないときは、「胸郭出口症候群」という疾患が隠れているかもしれません。「胸郭出口症候群」と聞いても簡単には想像できませんよね。ここではその胸郭出口症候群の症状と原因について説明していきます。

目次

胸郭出口症候群の症状は?

主な症状は首肩から腕の痛みやしびれです。首や肩から痛みの症状が始まることが多く、進行するにつれて腕の内側から手指にまで広がります。時には手指の知覚障害、冷感チアノーゼ(青白く変色してしまう状態)といった血管症状や、頭痛、吐き気、めまいといった症状がみられることもあります。

女性に多く見られ、なで肩の人や、上肢をよく使う仕事のする人に多い傾向があります

どんなことが原因なの?

「胸郭出口」とは、首と胸の間にある、腕に向かう太い血管や神経が通っているトンネルのことです。この胸郭出口で血管や神経が鎖骨、肋骨や筋肉によって圧迫されることで胸郭出口症候群が起きます。圧迫をもたらす原因は大きく分けて4つあります。1つ目は筋(斜角筋)による圧迫で、若い女性に多く見られます。2つ目は頚肋(けいろく)による圧迫です。頸肋とは胎児のときにある骨で、普通は成長すると共になくなる骨が残ったままになったものです。首の骨の7番目(時には6番目)から伸びており、形は肋骨のように細く緩くカーブを描くような形をしています。3つ目は肋骨と鎖骨による圧迫です。「気をつけ」の姿勢でこの肋骨と鎖骨の間が狭くなり圧迫されます。4つ目は腕の挙上による圧迫です。

診断をされるまでにどんな検査をするの?

腕-写真

まずは医師の適切な診断が大切です。なで肩の女性や重いものを運ぶ仕事をしている方で、腕を中心とした痛みやしびれがある場合には、胸郭出口症候群である可能性を考えます。また首の付け根と鎖骨の間にあるくぼみを押して骨のようなものが触れれば頚肋かもしれません。

まず、エックス線撮影で頚肋の有無や第1肋骨の変形が見られるかを調べます。手のしびれや痛みなど同様の症状を示す、頸椎間板ヘルニアや肘部管症候群などの疾患を除外できれば、胸郭出口症候群であることが診断できます

神経、血管を圧迫させる検査としては、Adson(アドソン)テスト、Wright(ライト)テスト、Eden(エデン)テスト、Roos(ルース)テストなどの検査があります。

  • Adson(アドソン)テスト:しびれや痛みがある方に顔を向け、首を反らせ深呼吸をすると鎖骨の下の動脈が圧迫され、手首の動脈が弱くなったり触れなくなったりします。
    この場合は斜角筋による圧迫が疑われます。
  • Wright(ライト)テスト:座った姿勢で、肘を90度曲げ、両肩がまっすぐになるように腕を挙げます。その時に手首の動脈が弱くなったり触れなくなったりします。この場合は肋骨と鎖骨による圧迫が疑われます。
  • Eden(エデン)テスト:座った姿勢で胸をそらせ、両肩を後ろに引いてもらいます。その姿勢で手首の動脈が弱くなったり触れなくなったりします。この場合も肋骨と鎖骨による圧迫が疑われます。
  • Roos(ルース)テスト:Wright(ライト)と同じ姿勢で両手の指を3分間開いたり閉じたりすると、手指のしびれや腕のだるさのために持続ができません。

最後に

手のしびれや痛みが症状として現れる疾患はいくつかあります。また胸郭出口症候群も含め、根本的な治療をしなければ、その時は症状がよくなったと感じても結局は治っていないことも多くあることを知っておいてください。医療機関を受診する際には、エックス線のある整形外科をおすすめします。