「最近肩に違和感がある」「腕をあげると肩が痛む」「肩が痛いので、腕を自由に動かせない」といったお悩みをお持ち方はいませんか?その症状、「五十肩」によるものかもしれません。

五十肩は日常生活に支障をきたしてしまうことが多い病気ですが、このような症状に効果的な漢方薬が「二朮湯(にじゅつとう)」です。あまりメジャーな漢方ではなく、販売されている種類は少ないものの、医療用としても市販薬としても使われています。

それでは「二朮湯(にじゅつとう)」について詳しく見ていきましょう。

目次

二朮湯(にじゅつとう)とは?

漢方とは様々な種類の生薬から構成されており、今回の二朮湯も以下の様な生薬が配合されています。

  • 蒼朮(そうじゅつ)
  • 白朮(びゃくじゅつ)
  • 茯苓(ぶくりょう)
  • 黄ごん(おうごん)
  • 半夏(はんげ)
  • 香附子(こうぶし)
  • 陳皮(ちんぴ)
  • 威霊仙(いれいせん)
  • 天南星(てんなんしょう)
  • 羌活(きょうかつ)
  • 生姜(しょうきょう)
  • 甘草(かんぞう)

蒼朮白朮の二種類が入っていることから「二朮湯」と呼ばれています。ちなみに「朮」とは、キク科の植物であるオケラのことであり、蒼朮と白朮は違う種類のオケラから調整された生薬のことです。主に「五十肩」に用いられている漢方で、体力が中程度の方に有効とされています。

そもそも五十肩とは?

二朮湯は主に五十肩に使われているのはわかりましたが、そもそも五十肩とはどんなものなのでしょうか。また四十肩なども良く聞く病気ですが、五十肩と違いはあるのでしょうか?

実は、五十肩や四十肩は医学用語では「肩関節周囲炎」と呼ばれており、発症する年齢で四十肩、五十肩と言い分けるだけで同じ病気です。

突然肩に鋭い痛みが生じ、寝返りするだけでも痛みを感じるような時期を「急性期」といい、炎症がひどい時期を表します。その数日から数週間後には「慢性期」にはいり、鋭い痛みから鈍い痛みへと変わり肩を動かせる範囲が制限されるようになります。通常は半年から1年半くらいで痛みが軽くなり、肩を楽に動かせるようになります。

加齢による血液循環悪化筋肉や腱などの変性が肩に炎症を引き起こすことにより五十肩が引き起こされるのではないかと考えられています。

二朮湯はどのように五十肩に効くのか?

水-写真

漢方医学では五十肩は、血の流れや水分代謝が悪い状態である「水滞(水が体内で滞っている、停滞している状態)」であると考えられるため、これらを改善するよう働きかける必要があります。

二朮湯の中には、鎮痛・消炎作用のある生薬や利尿作用による水滞改善効果のある生薬、また胃腸の働きをよくするものなどが入っており、これらが合わさって五十肩の症状に効くようになっています。

二朮湯に副作用はあるのか?

漢方特有の副作用として、飲み始めにむかつきなどが生じることがありますが、徐々に慣れていくことが多いため自己判断で服用中止せず様子見する必要があるでしょう。

また、ごく稀ではありますが重大な副作用として

  • 間質性肺炎(初期症状:発熱、息苦しさ、息切れなど)
  • 偽アルドステロン症(初期症状:だるい、むくみ、血圧上昇、手足のしびれなど)
  • 肝機能障害(初期症状:白目が黄色くなる、だるい、発熱、食欲不振)

などがあげられます。上記に記した症状があらわれた場合は受診してください。

また他の漢方なども一緒に服用している場合、上記のような副作用がでやすくなる恐れがあります(カンゾウなどの重複などにより)。そのため複数の漢方を併用する場合は医師・薬剤師に確認してからの服用をお勧めします。

まとめ

四十肩、五十肩になると、日常の動作に制限がかかりストレスがたまりがちです。特に急性期の場合は痛みがつらく、漢方だけではなく西洋薬の解熱鎮痛剤(ロキソニンやイブなど)の併用も行った方が良い場合もあるでしょう。急性期はあまり肩を動かさずに安静にしておくようにしましょう。

一方、痛みが和らぐ慢性期においてはなるべく動かし、日常の動作を積極的に行ってください。肩の筋肉組織の癒着を防止して、肩の稼働範囲を狭めないようにする必要があります。ぬるめのお湯にゆっかりとつかたり、肩を冷やさないようにすることもおすすめです。

以上の様な注意点とともに、今回ご紹介した漢方を服用してみて早く治癒できるよう心がけましょう。また漢方には色々な種類がありますので、もし今回ご紹介した漢方があまり合わないようなら、医師・薬剤師に相談して自分に合ったものを探してもらうとよいでしょう。