間質性肺炎は肺胞の壁に炎症が起こる病気で、一般的な肺炎とは異なる経過をたどります。病気の進行は原因によって比較的緩やかなものから急速なものまで様々ですが、初期には自覚症状に乏しく、気づいたときには病気がかなり進行してしまっているケースもあります。今回は、間質性肺炎の重症化を防ぐための治療と日常生活における注意点について、詳しく解説します。

目次

間質性肺炎とは

人間の肺には数億個の肺胞と呼ばれる小さな袋状の構造があり、ここでガス交換(酸素と二酸化炭素の交換)を行っています。間質性肺炎はこの肺胞の壁(間質)に何らかの原因で炎症を起こし、肺胞の壁が硬くなって肺の膨らみが悪くなる病気です。乾いた息切れが特徴的な症状で、徐々に進行しますが、風邪などの感染症をきっかけに急激に症状が悪化する急性増悪を起こすことがあります。

間質性肺炎の原因は、次のように分類できます。

  • 塵肺:空気中に浮遊する粉塵(細かなチリや微粒子)を吸入することによって起こる肺の病気。以前に報道で社会問題となったアスベストでも間質性肺炎を生じます。
  • 過敏性肺炎カビや鳥の抗原(鳩やインコ飼育、鳩小屋、野鳥、羽毛布団、鶏糞肥料など)との接触で、羽や糞などを慢性的に吸入することによって起こるアレルギー性の肺炎です。特に日本では、家の中に存在するカビの一種であるトリコスポロンが原因となることが多く、高温多湿の夏場に多くみられることから夏型過敏性肺炎とも呼ばれています。また加湿器や空調機のカビ、農業用の飼料、きのこの胞子が原因になることもあります。
  • 薬剤性肺炎:薬や漢方薬、サプリメント、健康食品などによって起こる肺炎
  • 膠原病肺:膠原病に伴う肺の炎症。関節リウマチや皮膚筋炎、強皮症、シェーグレン症候群などが含まれます。

また、原因不明のものとして突発性間質肺炎があります。

特発性間質性肺炎の病態の中でもっとも多いものは、特発性肺線維症です。突発性肺線維症は50歳以上の男性に多く、加齢喫煙感染症生活環境などの要因が関与していると考えられていますが、はっきりとした原因は不明です。急性増悪肺がんなどを合併しやすく、治療が難しく、予後も極めて不良です。

間質性肺炎の症状、原因について詳しくは、記事「乾いた咳が出る…間質性肺炎ってどんな病気?」をご参照ください。

間質性肺炎の診断

次のような検査を行い、総合的に判断して診断します。特発性間質性肺炎の診断には、原因となるもの(塵肺、過敏性肺炎、薬剤性肺炎、膠原病肺)を調べ、それらとの鑑別が必要になります。

画像診断

胸部レントゲンやCTなどを用います。

血液検査

炎症を調べる一般的な検査(CRP)のほか、肺の線維化(肺胞の壁の炎症や線維化の状態)を示す特殊検査(SP-A、SP-D、KL-6)、血液の酸素濃度を調べる動脈血ガス分析などが行われます。

呼吸機能(肺機能)検査

肺の膨らみや酸素を取り込む能力を調べるための肺活量検査です。

気管支鏡検査

内視鏡を口から気管支の中まで入れて、直接、肺の細胞を採取する検査です。

また、気管支肺胞洗浄(BALといって、生理食塩水で末梢気道から肺胞を洗って、炎症の細胞を解析する検査も行います。

胸腔鏡下肺生検

胸部に3カ所小さな穴を空けて行う胸腔鏡検査です。1cm程度の病変部を外科的に切除・採取し、検査をします。

間質性肺炎の治療

薬やサプリメント

原因が明らかな場合

職業環境(鉱山や工事現場、建設現場、養鶏業など)やカビ鳥類などの動物の毛などの生活環境にその要因がある場合は、それらによる曝露を避ける(原因を除去する、遠ざける)ことが先決です。また、薬剤やサプリメント、健康食品など、原因と思われるものがあれば服用を中止(中止が困難な薬剤の場合は、他剤へ変更)します。

原因が取り除けない場合や、取り除いても進行する場合

膠原病による間質性肺炎の場合は原因を取り除くことはできず、膠原病の治療(症状の安定化)が基本となります。また、既に肺の線維化が進んでいる場合には、治療でこれをもとの状態に戻すことはできません。進行を少しでも遅らせるために、炎症を抑えるためのステロイド剤免疫抑制剤による治療と、低下した呼吸機能を補うための酸素療法(※)が必要になります。

酸素療法とは

呼吸機能の低下による低酸素状態を改善するために、大気よりも高濃度の酸素を、医療機器を用いて供給することです。医療機関のほか、自宅でも酸素供給装置や酸素ボンベを設置することにより在宅酸素療法(HOT:HomeOxygenTherapy)を受けることができます。

原因不明(特発性間質性肺炎)の場合

特発性間質性肺炎の中でも最も多くみられる特発性肺線維症の場合、息切れなどの自覚症状がほとんどない軽症であれば、病気の進行の程度を数ヶ月ほど観察します。

日本で開発された肺の線維化を抑える治療薬(ピルフェニドン)が2008年に認可され、病気の進行の抑える効果が報告されています。しかしこの薬も病気を完治させるものではなく、すでに重症化している場合には、酸素療法が基本となります。

また、2015年8月、抗線維化薬ニンテダニブエタンスルホン酸塩(オフェブカプセル)が発売されました。適応は「特発性肺線維症」で、使用できる施設と医師はまだ限られています。

全ての治療を行っても、更に進行例では、肺移植も考慮されます。これまでの特発性肺線維症に対する移植後の平均生存期間は4年と報告されています。

 

特発性間質性肺炎は国の難病(特定疾患)に指定されています。一定の条件により医療費の補助が受けることができます(厚生労働省より)。

悪化予防のための注意点

絶対禁煙

風邪などの感染症予防

間質性肺炎は、風邪などの呼吸器感染症をきっかけに、急激に症状が悪化する急性増悪を起こすことがあります。日頃から体調を整え、マスクの着用や手洗いなどの基本的な感染予防の心掛けが必要です。また、インフルエンザや肺炎球菌ワクチンの予防接種を受けておきましょう。肺炎球菌ワクチンについて、詳しくはこちらの記事「大人も子供も必見!肺炎球菌感染症を予防する方法って?」をご参照ください。

禁煙

間質性肺炎は、喫煙との因果関係があります。喫煙は肺がんなど重篤な合併症のリスクも高めるため、病気の悪化予防のためにも必ず禁煙してください。

まとめ

間質性肺炎は様々な原因によって起こり、原因や重症度によって治療法が異なります。いずれも治療の基本は重症化を防ぐことにあり、そのためには定期的な通院と正しい服薬を行い、体調の変化にも充分に注意しておきましょう。