現在の大人が幼稚園や小学校に通っていたころ、年に一度は必ず蟯虫検査をしたものでした。検査当日の朝、お尻にセロファンを当てて、それを学校で提出したことを覚えている人も多いはずです。ですが、近年蟯虫感染者は減少の一途をたどっており、ついに2015年度には蟯虫検査が学校の健康診断から廃止されました。この様な状況であるため、蟯虫という寄生虫自体を知らない人も増え続けています。ここでは、蟯虫についてもう一度勉強しなおしてみましょう。

目次

蟯虫ってどんな寄生虫?

蟯虫は体長がおよそ1cmで白く、チリメンジャコのような形をした寄生虫です。一般的にはオスよりもメスの体のほうが大きいとされており、体外に出現した場合には肉眼で存在を確認することができます。寿命は、オスは2週間、メスは2か月以上とされており、温暖な環境を好みますが、日本国内であればどこでも生息することが可能です。

蟯虫にはどうやって感染するの?

蟯虫は通常、大腸の盲腸に存在します。メスはオスと交尾をすると、夜間就寝時に肛門から体外に出てきて、肛門の周囲で産卵します。この際、一度に産み付ける卵の数はおよそ2,000個と極めて数が多くなっています。
感染者がお尻に手を触れたあとで周囲のものに手を触れてしまうことで、卵を拡散させてしまいます。拡散した卵が周りの人の口に入り込むことで感染が広がっていきます。

蟯虫に感染するとどんな症状がでるの?

基本的に蟯虫に感染しても、はっきりとした症状が出ることはあまりありません。卵が産み付けられた肛門の周囲にかゆみを感じる程度です。ただし、かゆみを感じた場所をひっかいてしまうことで擦過創(ひっかき傷)が生じたり、傷口から雑菌が侵入して炎症が起こることがあるので注意する必要があります。特にお子さんの場合は、かゆみを我慢できずに繰り返し引っかいてしまう傾向があります。

蟯虫の検査ってどうやってするの?

蟯虫検査

やはり最も簡単で、確実な検査方法は昔ながらのセロファンを肛門に当てる方法です。これは肛囲検査と呼ばれ、蟯虫の感染が疑われた際まず始めに実施されます。蟯虫に感染している場合、セロファンを顕微鏡で観察すると白い楕円形の卵を確認することができます。

この際注意しなければならないことは、セロファンを当てるのは朝でなければならないということです。上で説明したように、蟯虫は夜間の就寝中に産卵します。したがって、産卵した卵を確実に採取するためには、朝一番で検査を実施する必要があるのです。

蟯虫に感染したら…

蟯虫に感染したことが判明すると、駆虫薬による内服治療が始められます。蟯虫の場合は、寄生されていても症状が現れないことも多いため、知らないうちに家族が感染していることも少なくありません。そのため、感染者本人だけでなく同居している家族にも同様の内服治療が実施されます。

また、肛門に付着した卵が再び口に入らないようにすることも重要です。爪を噛んだりおしゃぶりをするなど指が口に入る癖を止めさせる、食事の前の手洗いを徹底する、などの予防対策も効果的でしょう。

まとめ

蟯虫感染は年々減り続けています。しかし、完全に撲滅されたわけではありません。学校での検査が行われなくなった現在、知らず知らずのうちに感染して家族内で蔓延させてしまうリスクは高まっているとも言うことができるでしょう。

「蟯虫なんて過去のもの」と油断してしまわずに、特に幼稚園児や小学生などがいるご家庭ではこれを機会に頭の片隅に留めておけると良いのではないでしょうか。