風邪やインフルエンザなど日ごろ耳にすることが多い病気は感染症の一部です。感染症と一口に言っても種類が多くいくつかに分類することができます。今回は感染症の種類や予防法について説明します。
感染症とは?
細菌やウイルスなどの病原体が身体の中に侵入し増殖すると、発熱、咳や下痢などの症状が起こります。
人同士でうつるものや、傷口や動物、昆虫から感染するもの、汚染された食品を口にして発症するものなど様々な種類があります。
感染後も、症状がほとんど出ないケースから、治りの悪いもの、死に至るケースなど、千差万別です。
感染源や感染経路は、病気によって様々
病原体によって感染した人や、動物、昆虫や病原体に汚染された物や食品が感染源となります。
- 人から人へと感染する(感染した人との接触・咳、くしゃみなど)
- 昆虫や動物から人へ感染する
- 土の中などにいて傷口などから人へと感染する
- 食べ物から感染する
など、日常生活では、接触(経口)感染、飛沫感染、空気感染に気を付けます。
特に近年、しばしば話題になっていたのが蚊によってうつる感染症です。
デング熱やジカ熱の他、マラリア、日本脳炎などが挙げられます。流行地域に渡航する予定がある方は、虫よけ対策をしっかり講じるようにしてください。
感染症を起こす病原体は?

感染によって症状を引き起こす原因となるものを病原体と呼び、基本的には、以下の4つに分類されています。
- 細菌・真菌
- ウイルス
- 寄生虫・原虫
- その他(クラミジア、リケッチアなど)
感染症の分類とは?
感染症は、感染力や症状などによって分類されています。具体的にどのような病気がどの類型に含まれるか、予防方法とあわせて見ていきましょう。
なお、病名の後ろのかっこ内の国名や地域名は、その病気に感染する危険性のある地域を示します。
一類感染症
感染力や症状の重さなどを総合的に判断したときに危険性が極めて高い感染症と定義されています。これらの病気に感染した場合は、原則として入院治療が必要となります。
代表的な病気(一例)
- エボラ出血熱(アフリカ中央部):流行地域への渡航は可能な限り避けましょう。感染の可能性のある方と接触した場合は、すぐに石鹸で身体を洗ってください。
- クリミア・コンゴ出血熱(北緯50度以南のアフリカ・バルカン半島・中東・アジア): ダニが媒介する病気なので、ダニの活動が活発化する春から秋は要注意です。流行地域では、動物の血液には触れないでください。
- ペスト(アジア・アフリカ・アメリカ):感染の起こる地域では、ネズミの生息地に入らないようにしましょう。
二類感染症
感染力や症状の重さなどを総合的に判断したときに危険性が高い病気と定義されます。二類感染症も、基本的には入院治療が必要です。
代表的な病気(一例)
- ポリオ(アフガニスタン・ナイジェリア・パキスタン):日本では、予防接種を受けることが重要です。流行国に渡航する場合、追加の予防接種を検討しましょう。
- 結核(アジア・アフリカ):定期予防接種(BCG)を受けましょう。また、患者さんと接触する際はマスクを着用してください。
- ジフテリア(アフリカ・中南米・アジア・中東・東ヨーロッパ):ワクチンの投与が予防に効果的です。
- 重症急性呼吸器症候群/SARS:2002年に流行した病気です。2003年に制圧宣言が出されて以降、発生は確認されていません。
三類感染症
感染力や症状の重さなどを総合的に判断したときに危険性は高くないが、特定の職業への就業によって集団発生を起こす可能性のある感染症と定義されています。
代表的な病気
- コレラ(アフリカ・アジア・中南米):流行地域では、生水や生物の摂取を控えてください。
- 細菌性赤痢(世界中の各国):旅先では、生水や氷、生物は避けましょう。不衛生な飲食店や屋台には要注意です。
- 腸管出血性大腸菌感染症(世界中の各国):加熱されていない食品を避けてください。また、トイレの後と食事の前、動物との接触後などは手洗いを徹底しましょう。
- 腸チフス、パラチフス(世界中、特に南アジア):生水や氷、生物は避けてください。特に途上国では、瓶入りのミネラルウォーターや、一度沸騰させた水を飲みましょう。
四類感染症
動物やその死体、飲食物、衣類、寝具、その他の動物を介して人に感染し、国民の健康に影響を与えるおそれのある感染症と定義されます。
代表的な病気(一例)
- E型肝炎(世界中の各国):生水や氷、生物は避けてください。食事の前の手洗いも重要です。
- ウエストナイル熱(アフリカ・ヨーロッパ・中東・中央アジア・西アジア):蚊に刺されないよう、十分に注意してください。
- A型肝炎(世界中の各国):ワクチンの接種が有効です。また、衛生状態の悪い地域では、生水や氷、生物は避けた方が良いでしょう。
- エキノコックス症(世界中の各国):流行地域では、イヌやイヌ科の動物には不用意に近づかないでください。また、水や食品は一度加熱することが大事です。
- 黄熱(アフリカ・ラテンアメリカの熱帯地域):予防接種が有効です。地域によっては、予防接種証明書がないと入国できない場合もあります。
五類感染症
国が感染症発生動向調査を行い、その結果等に基づいて必要な情報を国民や医療関係者等に提供・公開していくことによって発生・拡大を防止すべき感染症と定義されています。
これらの病気はすべて、日本でも多くみられる病気です。
五類感染症は、全数把握感染症と定点把握感染症とにわけられます。
全数把握感染症(一例)
これらの患者さんを診断した医師は、保健所に届け出る必要があります。
定点把握感染症(一例)
指定届出医療機関(定点)では、これらの患者さんを診断した場合は届け出る必要があります。
- RSウィルス感染症
- 咽頭結膜熱
- 感染性胃腸炎
- 水痘
- 手足口病
- 百日咳
- ヘルパンギーナ
- 流行性耳下腺炎
- インフルエンザ(鳥インフルエンザと新型インフルエンザなどの感染症を除く)
- 急性出血性結膜炎
- 流行性角結膜炎
- 性器クラミジア感染症
- 性器ヘルペスウイルス感染症
- マイコプラズマ肺炎
新型インフルエンザ等感染症
2008年の改正により追加された分類です。新型インフルエンザと再興型インフルエンザ(「以前に世界規模で流行し、その後は流行せずに長期間が経過したもの」として厚生労働大臣が定めたもの)とを指します。
指定感染症
すでに知られている感染症のうち、一類から三類に分類されていないにも関わらず、一類から三類に準じた対応が必要となったものに対して政令によって指定します。1年を限度として定めます。
新感染症
人から人に伝染する感染症のうち、今までに知られている感染症とは明らかに症状などが異なり、伝染力や症状の重さなどから危険性が極めて高いと判断されたものを指します。
まとめ
感染症は種類が多く8つに分類されていますが、原因となる病原体によって感染経路や症状は異なります。
多くの感染症に共通する予防方法として、手洗い・うがいの徹底、ワクチン接種、衛生状態の悪い国や地域では生物や生水を口にしない、調理の際の衛生管理に気を配るといった事柄が挙げられます。
特に、海外では日本ではみられない感染症が流行している場合も少なくないので、どのような病気が流行しているのか、またどうすれば予防できるのか、事前にしっかりと調べておくことをおすすめします。