スポーツに怪我はつきもので、痛める部位も様々です。その中には耳に関するものがあります。強く打ち付けたりこすったりするなどして、鼓膜が破れたり、中の骨が折れたり、耳に血が溜まって変形をきたしたりします。また怪我の程度によっては難聴中耳炎耳鳴りめまいなどが起きる場合もあります。今回はスポーツで注意したい耳の怪我について紹介していきます。

目次

耳の構造と音を感じる流れ

耳は外耳・中耳・内耳に分けることができます。

外耳は、耳介(一般的に耳及び耳たぶと言われる部分)と外耳道(耳の穴から鼓膜まで続く道)からなっています。外から入ってきた音が外耳の先にある鼓膜に伝わります。

中耳は、鼓膜(外から入ってきた音を受けて振動する)と耳小骨つち骨、きぬた骨、あぶみ骨の3つの小さな骨)からなっています。入ってきた音が鼓膜を振動させると、鼓膜に連なる耳小骨も震え、内耳にある蝸牛に音を伝えます。

内耳は、三半規管や耳石器、蝸牛(かぎゅう)からなります。耳小骨から伝えられた音の震えが蝸牛の中のリンパ液に伝えられます。リンパ液を介して刺激された聴覚細胞が発生する電気信号は聴神経を通って脳へと伝えられます。そうして私たちは音として感じることができます。

スポーツで起こる耳の障害の特徴

剣道の防具

スポーツで起こる怪我では、中耳や内耳の障害が多くみられます。耳付近に衝撃を受けて耳鳴りや耳からの出血、耳介軟骨の骨折が起こることもあります。

外傷性鼓膜穿孔

外傷性鼓膜穿孔とは、鼓膜が破れる障害です。耳の中の空気圧が変化することによって起こります。

例えば、剣道で竹刀の衝撃が頭に加わったり、サッカーやラグビーなどの競技でボールや選手同士が耳付近に当たったり、サーフィン・水泳などで水面に耳付近が打ち付けられたりすると空気圧が変化することがあります。また、水中の水圧変化が起こるスキューバーダイビングなどでもみられます。

耳や頭に衝撃が加わって起こる間接的な鼓膜穿孔では、鼓膜の前下方が裂けるように破れることが多くみられます。ダイビングなどの水中で鼓膜穿孔が起こった場合には、鼓膜が全て破れてしまうことがあります。この場合は汚れた水が中耳内に流れ込んで細菌感染を起こし、慢性的な中耳炎難聴になることもあります。

治療

治療は、破れた鼓膜が自然に閉じることを待つことがほとんどです。感染していた場合は抗生物質の投与を行います。2カ月近くたっても閉じない場合や、破れた範囲が大きい場合は手術が検討されます。耳の後ろから組織の一部を採取し、残っている鼓膜にくっつけて、破れた鼓膜を閉じる方法があります。

外傷性耳小骨離断

外傷性耳小骨離断とは、鼓膜の先に連なっているつち骨、きぬた骨、あぶみ骨が互いに離れたり、本来の場所からずれた場所に移動したり、骨折したりすることです。

スポーツでの転倒や、選手同士のぶつかり合いによって頭部の打撲頭がい骨骨折が起きた場合に耳小骨離断がよく起こります。特にきぬた骨、あぶみ骨がずれることが多いです。耳小骨離断が原因で難聴となることもあります。

治療

難聴の症状がひどい場合は、鼓膜を切開して耳小骨の離断を確認します。自分の身体で耳小骨の代わりになる他の組織を用意するか、人工の耳小骨を利用して本来の耳小骨の位置に戻す手術を考えます。

耳介血腫

柔道やレスリングなどで耳をこすったり、打撲したりすることを繰り返すと、皮膚と軟骨との間に血の塊(血腫)ができて耳が赤く腫れ上がります。血腫は初め柔らかく、段々と硬くなります。次第にこぶのようになって耳介が変形していきます。これを耳介血腫と言い、見た目からカリフラワー耳ギョウザ耳などと呼ばれることがあります。

治療

溜まった血を注射器で抜く、もしくは切り開いて血を取り除く処置が行われます。受傷後間もない時期で腫れが軽度の場合は、冷やす処置で改善することもあります。血腫が硬くなったり、耳介軟骨骨折を伴ったりする場合には、耳の形状を整える形成手術が必要となります。

まとめ

スポーツで起こる耳の怪我は耳介血腫など外から見て分かるものがあれば、鼓膜が破れるなど外からは分からない場合もあります。スポーツ中に頭や耳を打ち付けた後に耳の中の痛みや聞こえにくさなどを感じたら、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。