生まれつき片側、または両側の耳が小さかったり欠損していたりする状態を小耳症と言います。小耳症では、外耳道(耳の穴から鼓膜までの通り道で、音を響かせて鼓膜に伝える)も影響を受けていることが多く、聞こえの問題(難聴)やマスク、眼鏡を使うときの問題、整容的な問題が生じます。今回は小耳症について詳しく見ていきましょう。

目次

小耳症とは。原因は?

小耳症は生まれたときから耳介(一般的に耳と呼ばれる部分)の変形が見られ、通常の耳と比べて小さくなっている状態を表しています。

耳の変形の程度は様々です。耳の形がもう片方の耳と近い形で残っている軽度のものから、耳の上部が欠けているもの、ピーナッツのような形をしているもの、耳たぶらしきものだけ残っているものなどがあります。

小耳症は欧米では12,500人に1人から7,000~8,000人に1人の割合で発症するとの報告があります(愛知医科大学形成外科より)。日本での発症は、欧米に比べてやや多いとされています。

発症する原因は、胎児の段階で耳から下顎にあたる箇所が形成されるときに何らかのトラブルが生じたと考えられますが、はっきりとは分かっていません。このほか小耳症は家族間で見られることもあるため、遺伝との関連も指摘されています。

ちなみに、耳から下顎にかけて先天的に変形している状態を第1第2鰓弓(さいきゅう)症候群と言います。

小耳症の症状

典型的なのは耳介の変形です。また外耳道が細くなっていたり、塞がっていたりすることがあります。

症状では大きな音でないと聞こえにくい(難聴)という症状がみられます。耳の機能は外耳、中耳、内耳に分けられます。小耳症では耳介と外耳道のある外耳と、耳小骨のある中耳の障害がよくみられます。一方で蝸牛のある内耳の機能は保たれていることが多いので、全く音が聞こえないわけではありません。

小耳症の症状は片側だけに見られる場合と、両側に見られる場合があります。片側だけに耳の変形があると、もう片側の耳の聞こえが正常であっても、変形した側から話しかけらたり、車が通ったりすると気づきにくいことがあります。両側だとより日常生活に支障をきたすため、早期に治療が必要となります。

また耳介の変形だけでなく、第1第2鰓弓(さいきゅう)症候群を合併しているケースもあります。具体的には下顎の骨が小さかったり、頬の形が変わっていたり、顔面神経麻痺(眼を閉じることができない、口を開けるとひきつる、眉毛を動かすことが難しいなど)、巨口症(口が横に裂けた形になっていること)、頸椎変形などが挙げられます。

小耳症の治療

手術する医師たち

小耳症の治療は手術だけです。形態や聞こえの改善を目的として行われます。手術は複数回にかけて行われます。

形態を改善する手術では、耳の形を軟骨でかたどって、片方の正常な耳に近い形にします。この形成手術では患者さんの肋軟骨を使うのが一般的です。耳を形成するための皮膚は、患者さんの身体から採取する方法と、特殊な器具で皮膚を数カ月にわたって膨らまして伸ばす方法があります。

手術で耳を作った場合、その耳は成長が見込めません。そのため最初から大人のサイズに作る必要があります。また使用する肋軟骨はある程度の大きさと軟らかさが必要なために、手術する年齢は10歳ごろが多いです。ただ個人差があるので、医師とよく相談しましょう。

両耳の小耳症では、耳の後ろの骨に金属の装置を用いて補聴器を埋め込む手術が行われることもあります。

まとめ

小耳症は先天的な異常で、耳の変形が見られる疾患です。耳の穴が塞がっていることも多く、見た目の問題だけではなく聞こえの問題も生じてきます。見た目の問題は手術でしか改善できません。どのタイミングでどのような手術を行うのか、医師とよく相談しながら進めていきましょう。聞こえの問題がある場合は環境への配慮も必要です。