「網膜剥離」はボクシング選手などによくみられる目の病気ですが、網膜剥離の自覚症状の飛蚊症や光視症などは加齢による生理的な症状としてもよくみられます。そのため、加齢が原因と思っていたこれらの症状が、実は網膜剥離の症状だったということもありえます。網膜剥離は失明の危険もあるため、早期発見・早期治療がとても大切なのです。この網膜剥離の治療法などについて見ていきましょう。

目次

誰にでもおこる可能性がある網膜剥離

ものが見えるしくみともうも悪剥離のしくみ-図解
ボクシング選手が網膜剥離になるのは、顔を殴られることによる外からの強い力による外傷が原因です。つまり、ボールが目に当たるなど強い衝撃を受けたら誰でも網膜剥離になる可能性があります。また、蚊のようなものが見える飛蚊症や光が走ったように見える光視症は、後部硝子体剥離という加齢現象でも起こることがあります。同時に、後部硝子体剥離が原因で網膜に孔が開き、網膜剥離になる可能性もあるのです。網膜剥離はあまり身近に感じないかも知れませんが、誰にでも起こりうる可能性のある病気なのです。

網膜剥離のメカニズムについては、「こんな見え方は要注意!「網膜剥離」自覚できる4つの初期症状」の記事をご覧ください。

もしかして網膜剥離!?眼科で行う検査とは

飛蚊症や光視症の症状が急にひどくなったという場合は、網膜剥離の可能性も考える必要があります。眼科でも、網膜に孔があいていないか、網膜が剥がれていないかなどを詳しく調べます。網膜の状態を調べるためには必ず眼底検査を行います。点眼薬を使い、瞳孔を開いた状態で網膜などの眼底を隅から隅まで観察することで、網膜の状態を調べます。

硝子体の出血などで眼底が見えにくい場合は、超音波(エコー)検査を行います。瞳孔を開いて眼底検査を行うとまぶしさを感じたりボヤッと見にくくなったりします。その効果は数時間続くので、検査の後は車の運転等は控えるようにし、サングラスなどを持参するとよいでしょう。

網膜剥離の治療法

網膜剥離の治療法-図解
網膜剥離の前段階ともいえる、網膜に孔があいている「網膜裂孔」の状態なのか、またはすでに網膜が剥がれてしまっている「網膜剥離」の状態なのかによって治療法が異なります。

網膜剥離には裂孔原性網膜剥離と非裂孔原性網膜剥離の2種類がありますが、ほとんどの網膜剥離は孔が原因の裂孔原性網膜剥離です。ここでは網膜剥離=裂孔原生網膜剥離としてその治療法を見ていきます。

網膜裂孔の場合

網膜裂孔は、網膜に孔は開いているものの、まだ網膜が剥がれるに至っていない状態です。網膜裂孔の場合は、裂孔の周りにレーザー当てる「光凝固」という治療が行われます。レーザーを当てて周りを固め網膜が剥がれないようにするという目的で行われます。裂孔を放置しておくと網膜剥離になる可能性があるため、裂孔が見つかった場合は早めに治療を行いましょう。

網膜剥離の場合

すでに網膜が剥がれて網膜剥離になってしまっている場合はレーザー治療では間に合わないので、手術的な方法で剥がれた網膜を元の位置に戻す治療が行われます。手術方法としては「強膜バックリング術」と「硝子体手術」の2つがあります。

強膜バックリング術(強膜内陥術)

網膜の裂孔部分をレーザーで固まらせ、眼球の外側にシリコンスポンジ等を縫い付け眼球を内側に凹ませることで眼球壁と裂孔をふさぎます。強膜を内側に凹ませることから「強膜内陥術」とも呼ばれています。

硝子体手術

網膜を引っ張っている硝子体を切除する方法です。強膜に3か所ほど小さな孔を開けて、そこに器具を差し込みます。硝子体を切除する硝子体カッターや、眼内を満たす灌流液(かんりゅうえき)チューブ、眼内は暗いので光源となるライトなどといった器具を用います。

硝子体を切除しガスを注入することで内側から網膜を元の位置に戻し、レーザーで裂孔も固めます。術後しばらくは、うつぶせなど体位の制限があります。

まとめ

早い時期に治療を受けることで視力や視野など目への影響も少なく済みます。早期治療を受けるためには当たり前ですが早期発見が必要不可欠です。網膜剥離がおこっても痛みがないために気付きにくいと思うかもしれませんが、飛蚊症や光視症・視力低下・視野異常などの自覚症状を感じるため、早期に発見することも可能な病気です。網膜剥離を早期発見するためには、自覚症状をしっかりと理解し、症状が変化したときには早いうちに眼科を受診することをおすすめします。