だいたい1か月に1回は生理が来るし、たまにずれたり来なかったりするけど、きっと大丈夫!と思われている方、もしかしたらその出血は生理ではなく、無排卵周期症かもしれません。

無排卵周期症は、そのままにしておくと不妊の原因になるほか、生理が来なくなる続発性無月経の状態になる場合もあり、早めに治療することが重要になってきます。ここでは、無排卵周期症とはどんな状態か、症状や治療方法などについてお話ししたいと思います。

目次

無排卵周期症とは?

無排卵周期症は、ほぼ規則的に生理のような出血が起こりますが、排卵はともなっていない状態を言います。

排卵のない状態で出血してしまう原因は、脳の視床下部や下垂体からのホルモン分泌が障害されているなどの理由で卵巣の機能がうまく働いていないがエストロゲン(卵胞ホルモン)を分泌する機能はわずかに保たれていることによります。
この場合、卵子の元である卵胞の発育が未熟だったり、排卵できない状態だったりするため、排卵後のホルモンの波が作られず、プロゲステロン(黄体ホルモン)が低いままになります。
エストロゲンがわずかにでも出ていると子宮内膜は徐々に厚みが出てくるので、一定期間たつと子宮内膜が維持できない、子宮内膜を栄養する血管が間に合わない等の問題が発生し、無排卵のまま出血するのです。

無排卵周期症の可能性がある人

不妊につながると聞くと不安になってしまうかもしれませんが、生理が始まったばかりの思春期や閉経が近い更年期の方には多くみられ、この場合には様子を見て自然に排卵周期になったりそのまま閉経を待つこともあります。
その他、脳の病気や多嚢胞性卵巣症候群(卵子の発育が抑制され排卵が難しい状態)、甲状腺疾患などの病気によって起こることもあります。

生理周期は25~38日(平均28日)が正常な状態ですが、19日以内と頻回に生理がくる場合には、その60%は排卵がなく、無排卵周期症の可能性が高いです。
また、51日以上間延びして生理がくる場合にも、その30%が無排卵周期症と言われています(産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2017より)。

正常な生理周期の範囲でも、無排卵周期症の場合があるので、基礎体温を測ることをおすすめします。基礎体温を測っていると、排卵がない状態では体温が2相性にならず、低温のままのため、無排卵であることがわかりやすいです。

注意すべき生理周期

無排卵周期症では、生理周期や生理期間、生理の量が一定ではなくなることがよくあります。
下記の症状のいずれかに当てはまる場合には無排卵周期症の可能性があります。

  • 稀発月経 生理周期が39日以上の状態
  • 頻発月経 生理周期が24日以下の状態
  • 過短月経 生理期間が2日以下の状態
  • 過長月経 生理期間が8日以上の状態
  • 過少月経 経血の量が極端に少ない状態(20ml以下)

治療法は?

治療

先ほども書きましたが、思春期や更年期の方の場合は、出血が多くて貧血を起こすようなケースではないなら、経過観察していくことが多いです。
原因疾患がある場合には、まずはその原因疾患に合わせた治療が必要になります。無排卵周期症の治療法は、現在妊娠希望があるかないかで、内容が変わってきます。

妊娠希望が現在のところない場合

排卵を起こす必要はないため、ホルモン療法を3~6周期行い、周期的に出血を起こして経過を観察します。
自然に排卵して生理が来るようになることが期待されますが、排卵しない場合には経口避妊薬(低用量ピル)やホルモン剤を服用して、排卵はなくても定期的な出血を起こしてホルモンバランスの乱れを防ぎます。

妊娠希望が出た際に、これらの治療をしておかないと、妊娠できない状態になっている場合があります。子宮を畑と例えるならば、この治療は畑を耕す工程と同じと言えます。畑が荒れ放題では、育つものも育たないため、定期的な管理が必要なことはわかりやすいかと思います。

妊娠希望がある場合

排卵が起きないことには妊娠できないため、排卵誘発が行われます
クロミフェンやゴナドトロピン製剤などの排卵誘発剤を使って排卵を促します。

排卵誘発剤を使うことによって、双子以上の多胎妊娠の可能性が出るほか、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を起こす場合があります
卵巣過剰刺激症候群は、排卵誘発剤の作用が効きすぎ、卵巣が腫れて捻じれたり(卵巣の茎捻転)、胸水・腹水が溜まるなどの症状を引き起こし、重症な場合には急性腹症、脳梗塞や肝不全、腎不全などの重篤な状態となる危険があります。

まとめ

毎月出血があれば、それは生理がちゃんと来ているというわけではありません。
毎月出血があっても、無排卵周期症による出血で、生理ではない可能性が誰にでもあります。

毎月くる出血が生理であると判断するには、基礎体温が必要になります。
基礎体温は、婦人体温計と体温表があれば明日の朝からすぐに測定することができます。最初は面倒くさいですが、慣れてくると自分の体調を管理するのに必要な習慣であることに気付くことができると思います。
ぜひ、基礎体温を測って記録するようにしてみましょう。そして、明らかに上記の症状が当てはまる場合には早めに婦人科を受診するようにしましょう。