お子さんの身長が他の子に比べて低いと、保護者の方は少し心配になるかもしれませんね。

子供の成長には個人差がありますので、心配のないことがほとんどです。

しかし、時には病気のせいで背が伸び悩むことがあります。治療で治せるものについては早期発見が重要となってきますので、知識を持っておくと良いでしょう。

また、心配のない範囲のお子さんについても、これからの成長を妨げないためにはどのようなことに気を付けると良いのでしょうか?

この記事では、子供の背が伸びない原因と、身長を伸ばすためのポイントについてご紹介いたします。

目次

子供の成長パターン

子供の成長には一定のパターンが存在します。

まず、赤ちゃんは生まれたあと2~3歳くらいまで、急激に成長していきます。このころを乳幼児期と言います。

その後しばらく成長率は落ち着いていきます(小児期)が、小学校の高学年~中学生あたりで思春期を迎えると、今度は大人の体になるために、身長もまた伸びる傾向があります。

もちろん個人差がありますが、乳幼児期に急激に伸び、小学校低学年~中学年で比較的落ち着き、思春期を迎えることでまた身長がぐんと伸びる、このパターンから外れている場合には、何か原因があるかもしれません。

また、問題のない範囲であっても、子供たちを取り巻く環境によっては背が思うほど伸びないことがあります。

わが子は心配すべき?まずは成長曲線と比べてみよう

母子手帳の中に、成長曲線というものがあります(こちらのサイトからダウンロードもできます)。これは男女別で子供の身長・体重の平均値を年齢ごとに示したもので、病院へ行くかどうかの目安には、この成長曲線を利用すると良いでしょう。

たくさん線が書いてありますが、たいてい身長と体重が同じシートに書かれているため、身長の場合には上の方にまとまっている線と比べることになります。
もとから書いてある線の、真ん中の線が平均値です。

 

活用方法は以下の通りです。

  1. 年齢ごとのお子さんの身長を書き込み、折れ線でつなぐ。
  2. もとから書いてある線と比べる。

標準的な範囲の中(一番下の線より上、あるいは一番上の線より下)にあれば、おおよそ問題はありません。

SDという単位が書いてある表の場合には、-2.0SDから +2.0SDの範囲を外れていなければ、ひとまず様子を見て良いと考えられています。

ただし、標準の枠の中にあってもカーブが標準線に沿っていない時(ある一定の年齢から身長の伸びが悪くなる、体重のみ増える等)には、成長を止めてしまう病気の可能性もありますので、病院に行くことをおすすめします。

お子さんの成長線はどうでしたか?
あくまで目安ですが、標準から大きく逸れている場合には、一度かかりつけの小児科に相談してみましょう。

低身長の原因

身長測定

この項目では、低身長を招く原因についてまとめていきます。
治療は必要のないものから、専門にしている医師に診てもらったほうが良いものまで様々です。

治療の必要ないもの

1.遺伝や体質

家族性低身長といって、ご家族に背の低い方がいる場合、遺伝でお子さんも背が低くなる傾向があります。

また、特に身体に異常はなく、体質的に低身長な場合が考えられます。

これらは特に病気ではありません。低身長で病院を受診される方の多くも、体質的な問題であることが多いようです。

体質的に小柄な子が身長を伸ばしたい場合には、後述の健康的な食生活と運動、睡眠などが大切になってきます。

場合によって治療が必要なもの

2.思春期が早い・遅い

成長率には、「思春期」が深く関わっています。

思春期とは心身ともに変化があり、それぞれ女らしい体つき・男らしい体つきになっていく時期のことです。思春期とともに大きく背が伸びるため、身長の個人差が開く時期でもあります。

女の子なら10歳、男の子は12歳あたりで二次性徴がはっきり分かることが多いですが、気を付けなくてはいけないのは、時期が標準から大きくずれている時と考えましょう。

二次性徴が来ているかどうかの判断は(男の子ですと特に)分かりにくい場合があるため、最終的には医師に任せた方が安心です。

思春期が遅い場合(思春期遅発症)

思春期を迎える年齢が遅いことを(おおむね15歳)思春期遅発症と言います。

身長が伸びる時期にも変化があり、最終身長にも影響があります。

ここで注意すべきこととして、女の子で15歳になっても初経が来ない場合には「遅発月経」と言って治療が必要なことがありますので産婦人科を受診してください。

思春期が早い場合(思春期早発症)

思春期が早すぎることで、最終的な身長が低いまま止まってしまうことがあります。

症状としては、男女ともに平均より2~3年早く二次性徴が見られる、年相応でない身長の急激な伸びなどが見られます。

思春期早発症は、思春期が進まないようにする治療をすることで将来の最終身長を伸ばすことができるとされています。この疾患と診断された場合の多くで、ホルモンのバランスを整える注射を4週間に1回行います。

もしもお子さんが思春期早発症だとわかったら、内分泌の専門医がいる病院の受診をおすすめします。

3.ホルモンの異常

思春期より以前から低身長が目立つようになった場合、成長ホルモン、甲状腺ホルモンの分泌が足りていない可能性があります。

これらのホルモンは子供の成長を調節しており、充分に分泌されていないと低身長を引き起こします。

治療では、注射で不足しているホルモンを補っていく方法があります。注射は家庭でもできるように改良されてきており、治療を受けたほとんどのお子さんが身長を伸ばすことができています。

4.染色体の病気

染色体に異常があることで低身長を起こすことも稀にあります。女の子のX染色体が1つしかないターナー症候群、15番染色体に変異のみられるプラダー・ウィリー症候群などが原因で低身長になることがあります。こちらは合併症にも気を付ける必要があります。

5.骨の病気

軟骨異栄養症と言う骨の異常で、低身長の他にも胴に比べて手足が短い、O脚、頭が大きい、おでこが突き出しているなどの、身体のアンバランスが見受けられます。

6.もともと小さく生まれたこと

お母さんのお腹の中にいた時間に対して、標準より小さく生まれることをSGA(Small-for-Gestational Age)と言います。

SGAの赤ちゃんの多くは2歳頃までに標準の身長に追いつきますが、時に背が低いままの子がいます。この場合にも、成長ホルモンによる治療を検討することがあります。

7.臓器の異常

臓器に病気があることで、充分に栄養を摂ることができず結果として背が低くなってしまうことがあります。

それぞれ、臓器に対して適切な治療を行うことで身長も改善していくとされています。

子供の背を伸ばすためのポイント4つ

家庭で改善ができるものとして、お子さんの成長には以下の4ポイントが影響するとされています。

特に心配のない範囲のお子さんも、身長を伸ばしたい場合には気を使って良いかもしれませんね。

1.良質な睡眠

睡眠中に成長ホルモンがたくさん分泌されるため、良い睡眠をとることが大切です。

夜更かしは避け、充分に睡眠時間を取らせるようにしましょう。

小さいお子さんはご家族の生活リズムの影響も受けやすいため、家族一緒に生活リズムを見直すことが大切です。

2.バランスの良い食事

成長のためにはバランスよく栄養を摂りましょう

子供は多くの食べものを一度に摂ることが難しいため、三食きっちり食べるようにします。

また、ご飯の時間が楽しいものになるように家族で同じ食卓を囲む、調理方法を工夫することも有効です。

3.適度な運動

身体を発達させるためは、適度な運動も必要とされています。

室内での遊びだけではなく、外で遊ばせるようにしましょう。

4.愛情をもって接する

精神的ストレスや育児状況が子供の成長に影響することが知られています。

極端な例を挙げると、虐待を受けていた子供は成長が遅れてしまうことがあり、愛情遮断症候群と呼ばれています。

他の子より身長が低いこと、あるいは病気などで保護者の方も不安になることがあるかと思いますが、その不安はお子さんにも伝わってしまうかもしれません。

お子さんが安心して過ごせるよう、ご家族も心に余裕を持って見守ってあげましょう。

まとめ

低身長を招く原因は様々で、原因をきちんと知るには医師に診断してもらう必要があります。まずは成長線をつけてみて、お子さんの成長が基準と比べてどうなっているかを見てみてください。

そして標準の枠よりも低い・成長のカーブが標準に沿っていない場合には、お近くの小児科に相談してみましょう。

病気の治療の他、睡眠や食事に気を遣うことで将来のお子さんの身長を伸ばすことができるかもしれません。