子供が咳をしているので風邪かと思っていたら、ゼーゼーしてきた。胸が苦しそうに動いて喘ぐように呼吸をする。
こんな症状が繰り返していると、小児喘息が考えられます。
小児喘息とはどんな病気なのか、予防して管理するにはどうすればよいか、正しい知識を持って負担なく治療を行うために、今回は小児喘息の症状や治療について説明します。
小児喘息ってどんな病気?
小児喘息の定義は、「発作的に喘鳴(ぜんめい)を伴い、呼吸困難を繰り返す疾患」です。これには個体因子(両親からの遺伝や体質)と環境因子(アレルゲンや受動喫煙など)が絡み合って発症します。
気管支に慢性的な炎症があり、気道過敏性により気管支の粘膜がむくんで気管が狭くなります。
痰が増え呼吸が苦しくなり、ヒューヒュー、ゼイゼイという喘鳴(ぜんめい)音が聞こえるようになります。
喘息と咳喘息の違い
喘息は、ヒューヒュー、ゼイゼイという音がすることで判断します。
咳喘息は、この音がはっきり聞こえず咳だけが起こるときに診断されることがあります。成人に多く発症します。
咳喘息の原因については、「咳喘息~メカニズムと早期発見のポイントとは?~」もご覧ください。
小児喘息の原因って?
アレルギー体質と遺伝子

家族や兄弟に喘息を持っている人がいると、発症する確率が高くなります。両親に喘息などがあるお子さんはリスクが3~5倍になります。
また、アトピー性皮膚炎を合併する子供も喘息の発生頻度が高くなることが分かっています。
環境中のアレルゲン
原因となる物質(アレルゲン)に触れて喘息が発症します。
普通の人にとっては何ともないものが不快な反応の原因となります。
アレルゲンは人によって異なります。
室内アレルゲン
- ダニ
- ほこり
- カビ
- 動物(ネコ・イヌ・ハムスター)
屋外アレルゲン
- 花粉(スギ・ヒノキ:春、カモガヤ・ブタクサ:夏から秋)
- 昆虫
などがあります。
アレルギー以外に喘息の発症を悪化させる要因
- ウィルス感染
- 大気汚染
- 周りに喫煙者がいる
- 運動
- ストレス
- 気候
- 薬物
など
ダニなどのアレルゲンが身体に入ると、炎症細胞が活性化されて気管支で慢性的な炎症が起き、気道の過敏性が強くなります。
そして、上記の悪化要因が重なり気管支の炎症が強くなり、繰り返す喘息症状を引き起こすのです。
発作を起こすメカニズムはまだ解明されていないのですが、アレルギー以外にもこれらと関連して発症することも分かってきました。
アレルギーの症状や原因は、生活環境と年齢によって変わっていきます。たとえば、赤ちゃんの時に卵アレルギーでアトピー性皮膚炎を患い、年齢が上がるにつれてダニアレルギーを発症し、気管支喘息を起こすこともあります。これを「アレルギーマーチ」と呼びます。
どんな症状なの?
呼吸をするときに、ヒューヒュー、ゼイゼイという音が聞こえ、咳が出やすくなったり、呼吸困難を繰り返します。
小児喘息発作の強さは、症状によって重症度を分けます。
小発作
呼吸困難はそれほど起こらず、食べたり眠ったりできる。
中発作
ヒューヒュー、ゼイゼイという音がはっきり聞こえる。眠っていても夜に目を覚ますことがある。食欲も落ちてくる。
大発作
呼吸困難が激しくて日常生活が送れない。前かがみになって息をする。苦しくて眠れなくなり食事も取れなくなる。
呼吸 | 会話 | 睡眠 | 食事 | |
小発作 | ヒューヒュー、ゼイゼイはするが、呼吸困難ではない | 普通に話すことができる | 普通に眠れる | 普通に食べられる |
中発作 | ヒューヒュー、ゼイゼイとはっきり聞こえる | 話しかければ返事ができる | ときどき目を覚ます | 少ししか食べられない |
大発作 | 呼吸困難に強く陥り日常生活を送るのが難しい。全身で呼吸をする | 話しかけても返事ができない | 苦しくて眠れない | 食べられない |
出典:「小児ぜんそくを治す本」p.32を参考にいしゃまち編集部作成
発作の程度によって、小発作から大発作まで3つに分けられます。
小発作も立派な発作なので注意が必要です。
喘息の悪循環って?
始めは、咳が夜に多いなど「喘息気味」という診断を受けただけであっても、小さな発作が起こるようになり、深刻になっていきます。
気管支が炎症を起こして敏感になり、アレルゲンやウイルスなどのいろいろな要因で咳やぜんめいが出ます。繰り返すことでまた気管支に炎症が起こり、徐々に悪循環に陥ります。
早期発見のためには?
喘息がどのような症状から始まるか知っておきましょう。
どうやって治療するの?
治療の目的は、発作時には症状を和らげる治療を行い、無症状の時にも、良い状態を続ける治療を行います。後者の方が重要です。喘息の原因となるものをなくす「環境整備」と「薬(抗炎症作用のある内服・吸入)」による治療と予防を行います。
環境整備
気管支の刺激になるものを避けましょう。小児でアレルゲンとなるダニ、ホコリ対策が重要です。
少量のホコリを吸い続けることで気管支の粘膜は傷つき気道が過敏になって行きます。そこに大量のダニやホコリなどが入ってくると発作を起こしてしまいます。
普段からダニやホコリが少ない環境を整えて、気管支の刺激になるようなものを避けましょう。寝具やぬいぐるみはこまめに選択・日光干しを。床は絨毯を使用せずフローリングをおすすめします。カーテンはブラインドにするなどの方法があります。
気管支の刺激になるものは?
- タバコ、花火、蚊取り線香、ストーブなどの煙
- 化粧品、殺虫剤、ヘアスプレーなどの化学物質
- 排気ガス
- 細かい粉末
その他の環境要因として
- 気象:台風や雨天などの気圧低下、気温差(10℃以上)
- 心因:情動変化により過換気
- 過労、睡眠不足
鍛錬療法
気管支は自律神経に影響を受けるので、皮膚を鍛えることで自律神経のバランスや機能を高めて喘息の症状緩和を目指します。
また、バランスのとれた食事を心掛け、規則正しい生活を送ることで新陳代謝を盛んにしましょう。
自律神経を高めるには、スポーツが良い
水泳が推奨されています。気管支が水分を保ち、運動強度として中くらいで体への負担がないです。
呼吸筋を強くして肺活量が増えます。
薬剤による長期管理
喘息の薬による治療は、一時的に発作を止める気管支拡張薬を続け、症状が治まらなければ根本的な解決策となる気管支の炎症を抑える薬を使って長期間発作がない状態を維持していきます。
症状がないからと言って、自己判断による治療の中断はとても危険です。
小児喘息は、気管支の抗炎症作用を有する抗炎症薬が重要です。そのため、長い期間の治療が必要になるので、医師と相談して適切なタイミングで治療を継続的に行います。
幼児が使いやすいように飲み薬(粉)、吸入薬が主に使われます。
1.抗アレルギー剤
アレルギー症状を抑え、発作を予防します。この中で、ロイコトリエン受容体拮抗薬(オノン・キプレス・シングレア)は内服であり使用頻度は高いです。
2.吸入ステロイド薬
6歳未満では、ネブライザーを購入したうえで、1日1-2回使用します(パルミコート)。また、6歳以上では、吸入手技が可能となりますので、円盤様の吸入薬(フルタイド、キュバールなど)の使用が可能となります。医師に指示された使用量(現在のガイドラインの使用量)であれば、副作用である身長の伸びの不良はないと考えられております。
3.気管支拡張薬
発作で細くなった気管支を拡張させ、また炎症を抑えて症状を和らげます。主には内服ですが(メプチン・テオドールなど)、外用のテープもあります(ホクナリンテープなど)。
運動誘発性喘息って?

運動をすることで起きる喘息の発作です。運動の後、5~10分程度でぜんめいや呼吸困難が起こることがあります。ほとんどの場合、特に治療をしなくても20~30分後には回復します。
運動誘発性喘息を防ぐには?
1.ウォーミングアップ
運動をする前にウォーミングアップをしましょう。軽い運動で運動誘発性喘息が起きると、その後は発症しにくくなります。
2.薬の内服
予め医師に運動誘発性喘息を予防する薬を処方してもらい、内服や吸入をしておくことで発作を抑えることができます。
3.マスクをする
気管の温度を保ち、湿気を保つことで水分が失われるのを防いで発作を予防します。
まとめ
喘息は治療が遅れれば、悪循環に陥り症状も重くなってしまう病気です。喘息の兆候が現れたらためらわず医療機関を受診するようにしましょう。
治療方針を医師としっかり話し、喘息の発作を起こさない環境を作ることが大切です。
また、症状が治まっても定期的に継続して受診していくことがとても重要です。発作が起きないようにする気管支喘息のコントロール、すなわち日々の「予防」が、ゴールである咳で苦しまない日常生活を送る上で重要であります。
自己判断で治療を止めないようにしてください。