梅雨時期に入ってから高温多湿の環境が続いており、アレルギー性鼻炎や皮膚炎のアレルゲンとなるダニも繁殖しやすい季節になりました。アレルギーはごく軽度から、ときには生命にかかわる呼吸症状の悪化もあり得るものまで多様でありますが、この時期には、小麦粉など粉製品に繁殖して潜んでいるダニによっても引き起こされる「パンケーキ症候群」があります。ここでは、小麦などの粉製品に潜むダニを大量摂取して起こる「パンケーキ症候群」に関して説明します。

目次

パンケーキ症候群の由来

そもそも、「パンケーキ症候群」とは何でしょうか?パンケーキを食べすぎて太ってしまうという生活習慣病や過度の摂取によるアレルギーの発症、また、パンケーキを食べるのがやめられない精神的な依存症ではありません。

この言葉は1993年に提唱された概念であり、「保存状態が不良であることが原因で、ダニが異常に繁殖した小麦後・ミックス粉を食べてしまい、その結果、アレルギー症状を引き起こした状態」とされております。ダニ経口アナフィラキシーという学術名もあります。

この概念が発表されてから2018年で25年が経過しますが、現在でもこの症候群を発症する方がまだおります。2017年も、お好み焼きやチヂミによる本症候群の発症の報告がありました。このように、大量のダニを食べることによるアレルギー症状がパンケーキ症候群の正体です。

粉製品に潜むダニ:保存方法による増殖のちがい

小麦粉・ミックス粉などの粉製品で繁殖しやすいダニは、日本で多く生息しているコナヒョウダニ・ヤケヒョウダニが主であります。大きさは0.2から0.3ミリ程度と非常に小さいです。このため、一度、袋を開封すると、輪ゴムやクリップなどで止めても入り込んでしまいます。

これらのダニが繁殖しやすい時期は、梅雨時期の高温多湿の環境です。具体的には気温が20度以上です。開封した粉製品をこの環境で保管した場合、容器の種類に関係なく6週間後にはダニは増加したという報告があります。その一方で、4度の冷蔵庫内で保管した場合には、容器の種類を問わずダニは増加しませんでした。

この事から、小麦粉・ミックス粉は冷蔵保存という対応により、パンケーキ症候群というアレルギー症状を予防することが可能であります。

また、小麦粉・ミックス粉以外にもホットケーキミックス・てんぷら粉・お好み焼き粉なども原因となります。

パンケーキ症候群の症状

パンケーキミックス

基本的には卵・小麦・果物・甲殻類などによる食物アレルギーでの症状と同様です。

粉製品を食べてから3分~1時間以内に、以下の症状がみられましたら、すみやかに医療機関を受診してください。

  1. かゆみをともなう蕁麻疹
  2. 全身の発赤
  3. 唇やまぶた、手足の腫れ
  4. 嘔吐・下痢

また、下記の場合には生命の危険がある「アナフィラキシー」のタイプであります。短時間で急激に悪化することがありますので、救急車を要請してください。

  1. 呼吸の異常(ぜーぜー、ひゅーひゅー)、息苦しさ
  2. 血圧低下を示唆する症状(意識を失うめまいなど)

もし自宅にあれば、アレルギーを抑える内服薬(アレジオン、ザイザルなどの抗ヒスタミン系の薬剤)、あるいはステロイド(プレドニン錠を1-2錠)を緊急的に内服しても差し支えありません。

実際の発症例

日本では、初夏から盛夏に発症例が多いです。海外では、パンケーキ・ピザの生地・揚げたお菓子などの報告がありますが、食生活の欧米化によりこうした食材でも起こる可能性があります。このほとんどが、食後5分から60分以内に発症しております。2)

ここで、実際の発症例を紹介します。同居する、60歳の女性と32歳の男性が、3年前に開封したお好み焼き粉を使用して、お好み焼きを食べました。60歳の女性は、摂取してすみやかに、嘔吐・くしゃみの後にアナフィラキシー(呼吸困難・意識障害)で救急搬送されました。搬送先で、同行した32歳の男性も、同様に皮膚の発赤・じんましんの後に呼吸困難となりました。幸いこの2名は迅速な治療に反応して改善しました。3)
この他にも、たこ焼きやチヂミでの同様な報告があります。迅速な対応が必要である一方で、ダニを食べてアレルギー症状を発症する本症候群(パンケーキ症候群)の存在を知っておく必要があります。

まとめ

「パンケーキ症候群」とは、高温多湿の環境で開封済の小麦粉・ミックス粉などにダニが入りこみ繁殖したダニを食べることにより、呼吸困難や全身のじんましんなどのアレルギー症状が短時間で引き起こされる症状です。この予防には小麦後・ミックス粉・パンケーキの粉を冷暗所ではなく、冷蔵庫の中に保管することが重要です。管理に不安があれば、使い切りのタイプの使用を検討してください。