高血圧の危険性が幅広く認識されるようになるにつれて、患者さんがご自身の家庭で血圧を測定される機会が増えてきました。こまめに血圧を計測することで、自分の健康状態を知り、心筋梗塞や脳出血などの重大な病気の発症リスクを知るのはとても重要なことです。ただし、毎回決まった方法で計測しなければ、信頼できる計測値を得ることはできません。ここでは、血圧の正しい測定方法、そして計測した数値の正しい評価法について説明します。

目次

血圧を家庭で測ることの意味

血圧は絶えず変化しています。一日のうちでは、起きている間は比較的高値で、睡眠中に低下するというサイクルをとっています。また、運動後やストレスに直面したとき、または暖かい場所から寒い場所に突然移動したときなど、様々な状況で急激に上昇することもあります。したがって、病院での診察中だけ血圧を計測しても、その患者さんの血圧を正しく把握出来ないことになります。実際、医師の診察のプレッシャーで生じる白衣高血圧や、診察中は日常生活での高血圧が露呈しない仮面高血圧などが報告されています。日常生活における血圧を患者さんにきちんと計測して医師に報告してもらうことで、より患者さん自身に合った血圧管理の方法を探ることができるのです。

正しい家庭での血圧の測り方

初めにも述べたように、血圧は正しい方法で計測しなければいけません。ここでは、日本高血圧学会が推奨している方法について簡単に説明することにします。

1.測定する時間

血圧は一日中絶えず変動しているため、血圧を測定する時間をきちんと定めることが重要です。日本高血圧学会では、朝の起床後1時間以内か夜の就寝前に計測することを推奨しています。

2.測定回数

基本的に一度の血圧測定では、二回血圧を計測しその平均値を測定値とすることになっています。複数回計測することによって、より測定誤差の少ない測定値を得ることができるのです。

3.測定時の環境

血圧は、気温や運動、ストレスなどの影響によって簡単に上昇してしまうため、これらの要因をできる限り排除して計測する必要があります。高血圧治療ガイドラインでは、①静かで適温の室内で、②背もたれ付きの椅子で足を組まずに座り1~2分ほど安静にしたのち、③会話をせずに、④喫煙・アルコールやカフェインの摂取をせずに測定することを推奨しています。また降圧薬を飲んでいる場合などは、服薬前に測定するようにしましょう。

4.測定機器の使い方

重要なことは、カフ(血圧計の腕に巻き付ける部分)を肘にかけてしまわないこと、そして腕を心臓と同じ高さまで持ち上げることです。

ここで一番大切なことは、『常に同じ条件で測定する』ということです。毎回、きちんと同じ条件を整えたうえで測定を開始するように心がけましょう。

血圧の正常値

日本高血圧学会では、診察時の血圧で140mmHg(収縮期)または90mmHg(拡張期)を超えたものを高血圧と定義しています。また、180mmHg(収縮期)または110mmHg(拡張期)を超えたものを重症高血圧と定義し、直ちに医師の診察を受けて薬剤療法を開始するべきであるとしています。なお、一般的に家庭で計測した血圧よりは診察室で計測した血圧よりも5mmHgほど低くなる傾向があるとされています。したがって家庭で計測した血圧を基準値と比べる時には、5mmHgほど上乗せして考慮すると良いでしょう。

まとめ

昨今は、安価な電子血圧計が普及したことにより、家庭で血圧を簡単に測れるようになりました。実際、電子血圧計を使えばボタン一つであっという間に測定値が表示されます。ですが、細かい注意事項に気をつけながら血圧計測を行うことで、より自身の健康管理に役立てられる測定結果を得られます。今後は、これらのことに気を配りながら血圧測定に取り組んでみてはいかがでしょうか?