年齢が上がるとともに気になってくる高血圧。様々な病気の原因ともなるので、しっかりと把握しておく必要があります。

ところで、「白衣高血圧」「仮面高血圧」といった言葉を聞いたことはありますか?血圧は、家庭で測定した場合と病院で測定した場合とで異なる値を示すことがあるのです。

本記事では、「白衣高血圧」「仮面高血圧」とは何なのか、またこれらは放置しても良いものなのかなどを解説します。

目次

血圧は、常に変動している

血圧は常に同じ値を示すものではなく、絶えず変動しています。

体調による変動はもちろんのこと、季節・気温による変動(冬場に高くなりやすい)や、1日の間でも変化がみられます。起床する少し前から上がり始め、日中が高く、夕方から就寝時間にむけて下がり、睡眠中はさらに低くなるのです。

このほか、運動やストレスなど、患者さんを取り巻く環境によっても血圧は変化します。

病院と家庭とで血圧が変わる?!

前項で、血圧は測定する環境によっても変わると説明しました。このうち、特に診察室で測る血圧(診察室血圧)ご自宅で測る血圧(家庭血圧)との間に差異が生じることは多いです。

そもそも、高血圧の基準値は診察室血圧と家庭血圧とで異なります。それぞれ、下記の値を超えると高血圧と診断されます。

  • 診察室血圧:収縮期血圧 140mmHgかつ/または拡張期血圧 90mmHg 以上
  • 家庭血圧:収縮期血圧 135mmHg 以上かつ/または拡張期血圧 85mmHg以上

病院に行くと血圧が上がる「白衣高血圧」

家庭で測ると正常の血圧値なのに、病院で医師や看護師に測ってもらうと高血圧の基準値を超えてしまうことを白衣高血圧といいます。

高血圧患者さんのうち15~30にみられ、特に高齢者に多いです(高血圧治療ガイドライン p.15より)。

これは、病院という普段と異なる環境下で医療従事者の白衣を見ただけで緊張し、そのストレスで血圧が上昇した状態です。

高血圧ガイドラインでは、診察室と家庭とで血圧値の違いがみられる場合、家庭血圧を優先して考えるとしています。ですので、白衣高血圧は一時的なものであれば治療の対象にはなりません。

一方、白衣高血圧の方の中には、そこから慢性的な高血圧に移行したり、糖尿病を発症したりする患者さんもいます。家庭で測定する高血圧が高めであったり、緊張する(血圧が上がる)シチュエーションが多かったりする方は、医師と相談しながら慎重に様子を見る必要があります。

家庭だと血圧が上がる「仮面高血圧」

白衣高血圧とは反対に、病院で測った場合の血圧は正常であるにもかかわらず、家庭や職場などで測った場合に高血圧の基準値を超えてしまう場合を仮面高血圧と呼びます。

仮面高血圧の中には、本来は血圧が低いはずの早朝に血圧が高くなる早朝高血圧や、睡眠中も血圧が下がらない夜間高血圧なども含まれます。

自宅は本来、リラックスした状態で過ごせる場所なので、そこで測る血圧は低くなるはずです。それなのに仮面高血圧がみられる場合、通常の高血圧(持続性高血圧)と同様に治療を行います。

医療機関で血圧を測ると正常値となる仮面高血圧は、見つけるのが困難です。しかし放っておくと脳疾患や心疾患につながるリスクがあります。

仮面高血圧は、下記のような方にしばしばみられます。

  • 喫煙者
  • お酒をよく飲む方
  • ストレスが多い方
  • 起立性高血圧・起立性低血圧の方
  • 肥満・メタボリックシンドローム、糖尿病の方

白衣高血圧・仮面高血圧の方が気をつけなければいけないこととは?

リビング

前にも説明した通り、血圧は変動するものです。たまに高くなる程度であればそれほど心配する必要はありませんが、高い状態が続くと、血管の壁に高い圧がかかることで動脈硬化を進行させる原因となってしまいます。

ですから白衣高血圧が続く場合や、診察室以外での血圧が高い仮面高血圧の場合、普段の自分の血圧がどの程度なのかを把握しておく必要があります。家庭用血圧計を用意し、毎日血圧を記録する習慣をつけると良いでしょう。

特に血圧の薬を服用中の方は、病院での血圧値だけを参考にするのではなく、ご家庭でこまめに血圧を測るように心がけてください。受診の際はその記録を医師に見せると、より適切な治療の助けになります。

血圧を測定する場合には、以下のことに留意しましょう。

  • 毎日、同じ時間・同じ条件のもとで血圧測定を行う(起床後1時間以内と寝る前の2、測定することが推奨されています)
  • 測定するときには、原則として1機会に2測定し、平均値を記録する
  • 排尿後、1~2分間安静にしてから測定する
  • 座った状態で、心臓と同じ高さで測定する

医療機関で測定したときと、自分で測定したときの血圧が大きく違うようであれば、片方を過信するのではなく、必ず医師に相談してください。

24時間血圧の測定が必要になることも

白衣高血圧や仮面高血圧などを含む血圧の変動を正確に把握するために、1日中連続して血圧測定を行う場合があります(24時間血圧)。

携帯型自動血圧計ABPM:Ambulatory Blood Pressure Monitoring)という機器を装着し、設定された時間ごとに自動的に血圧を測ります。

この検査は、白衣高血圧や仮面高血圧の診断に加え、薬がきちんと効いているかどうかや、血圧が1日の間にどのように変動しているかなどを細かく調べることができます。

24時間血圧の場合は、測定した血圧の平均値収縮期血圧 130mmHg 以上かつ/または拡張期血圧 80mmHg以上の場合に高血圧と診断されます。

最後に

血圧は自分の健康状態を知るバロメーターの一つですが、常に同じ値を示すものではなく、季節や時間、環境によっても変動します。

健康診断などで年に数回測る血圧値を過信せず、家庭で血圧を測定し、自分の正常値を知るようにすることで、家庭と病院とで血圧が異なったときにもその状態を知ることができます。また、日々の変化を把握することで医師にも相談しやすくなり、病気の早期発見・早期治療にも繋がります。

ぜひ、血圧を測る習慣をつけてみてはいかがでしょうか?