一般的に知られている性感染症というと、性器に発疹ができたり、かゆくなったりするイメージだと思いますが、中には咽頭(のど)に感染する場合があります。咽頭感染は症状が出にくいので、知らないうちに病気が進行してしまいがちです。のどへの感染が起こる原因や、それぞれの病気の症状について解説します。

目次

性感染症なのに、どうしてのどに感染するの?

性感染症や性病は、正式には性行為感染症(STD: Sexually Transmitted Diseasesといいます。性交渉によってうつる病気で、性交渉開始年齢が早くなっていることや、セックスパートナーの切り替えの早さ・複数存在などから増加傾向にあります。

それに加え、オーラルセックスなど性交渉の形態が多様化しつつあるため、性感染症に感染すると、性器だけでなくのどにも症状がでることがあるのです。オーラルセックスとは口や舌を使って相手の性器を刺激する性交渉のことで、性器に病原体がいる場合、口腔内に感染するリスクがあります。

口腔内の性感染症は耳鼻咽喉科で診察してもらえますが、あらかじめ電話して受診可能か聞いておく方が良いでしょう。また性感染症内科、性器にも症状があるときは泌尿器科も受診できます。

性感染症でのどに起こる症状が増加

オーラルセックスの増加に伴い、淋病やクラミジアがのどに感染する患者さんが増えています。性器から口腔に感染した場合、無症状の人が多く、感染に気付きにくいことがあり、無自覚の保菌者が別のパートナーにうつしてしまうことがあります。

風俗店を利用したとき、また新しいパートナーと性交渉した時は体調に気を配りましょう。また自分に症状がなくても、パートナーに症状がある場合は、自分も受診することをおすすめします。

病気の種類で見る、のどに感染した時の症状

キス

梅毒

一般的には菌の侵入箇所に潰瘍が形成されます。潰瘍は消失しますが、しだいに全身の発疹があらわれます。感染から期間が経過すると、倦怠感や発熱、脱毛、大動脈拡張、進行性の麻痺など、菌が全身に広がるので症状も多様化していきます。

口腔感染では、感染から約3週間後に菌の侵入した箇所、唇や舌などに小豆~指先の大きさで暗赤色の固いしこりができ、数日後にしこりの中心が崩れて凹みます。痛みがないことが特徴で、2~3週間で自然に消えます。

約3ヶ月後、口の中に平らで少し膨らんでいる赤い発疹が出現し、その発疹は次第に白くなります。また口の端(口角)が白くただれます(梅毒性口角炎)。

さらに治療しないでいると、口の上あご部分(口蓋)や舌にゴムのように弾力のある白い腫瘍ができます。

症状が出ない人、口の中に症状がでて性器や皮膚には症状がない人など、人によって症状の程度が違います。しかし放置すると死に至る病気であるばかりか、女性の場合は梅毒に感染したまま妊娠すると胎児が感染してしまうことがあります(先天性梅毒)。早めに受診し治療しましょう。

淋病・クラミジア

感染者と1回の性交渉で淋病は約30%、クラミジアは約50%の確率で感染します(杏林大学医学部付属病院より)。性感染症のなかでも、特に感染している方の数が多い病気です。

淋病の口腔症状は咽頭炎扁桃腺炎がありますが、淋病以外でも見られる症状であるため判断が難しいです。また、無症状の人も多くいます。

クラミジアの口腔症状はとしては上咽頭(のどの上の方)の炎症や発疹、咽頭や扁桃腺部分の腫れ・痛みがあらわれます。また耳が塞がっている感じがしたり、難聴、滲出性中耳炎(体液がにじみ出て溜まるタイプの中耳炎)の症状もみられたりします。

単純ヘルペスウイルス

性交渉やキス(皮膚の接触)でも感染する感染力の強いウイルスです。

潜伏期間は2~10日といわれます。発熱を起こすほか、感染部位に強い痛みを伴うことが特徴です。食べ物を飲み込むことが辛いほど痛む時は(嚥下困難)、食事が取れなくなることもあります。

唇や歯茎の歯肉部分に小さなできもの(良性腫瘍)がみられます。口唇炎、歯肉炎も同時に起こる場合があります。多くは治療をしなくても2~3週間で自然に治りますが、ウイルスは体の中に潜んでいるので、体が弱っているときに再発を繰り返すことがあります。

まとめ

性感染症は、セックスパートナーが増えると感染する危険性の高まる病気です。しかし特定の相手でも、愛し合っているからこそ避妊せずに感染してしまうパターンがあります。コンドームの利用は避妊だけでなく性感染症の感染予防にも効果がありますので、積極的に利用しましょう。

のどへの感染は他の感染部位よりも症状が出にくく、無症状の人が多く存在します。性産業の仕事、もしくは風俗店の利用にはリスクがあることを念頭におきましょう。気になる方は、病気の進行や感染の拡大を防ぐためにも早めに病院で検査を受けましょう。