ロタウイルスは、乳幼児に重症の感染性胃腸炎をもたらし、また心筋炎・脳炎・腎不全などの重症な合併症を引き起こす可能性がある非常にやっかいなウイルスです。わが国では死に至るということは非常に稀ですが、発展途上国ではいまだに多くの幼い子供たちがこのウイルスによって命を奪われています。

その感染症予防に大切なのがワクチンです。ただし任意接種ですので、中には受けるかどうか迷っている保護者の方もいらっしゃるかもしれませんね。
ここでは、ロタウイルスワクチンの種類や接種方法、副反応などについて説明しますので、参考にしてみてください。

目次

ロタウイルスとは?感染するとどうなる?

ロタウイルスは冬の後半から春にかけて、乳幼児の胃腸炎の原因としてよく見られるウイルスです。
感染すると嘔吐、下痢などが見られ、症状が長引くことが特徴です。脱水を引き起こし、重症化すると命に関わる恐れがあります(最初にも述べたように、我が国での死亡例は非常に稀ではあります)。

症状が比較的激しいうえに、感染力が非常に強い点も大きな特徴です。
通常の温度・湿度の環境ではなかなか死滅せず、わずか10~100個のウイルスが体内に入るだけで胃腸炎を引き起こします。
ほとんどの人が5歳までに1度は感染するといわれており、今のところ罹ったあとに有効な薬も開発されていません。治療は水分補給などで、症状がおさまるのを待つことになります。

また、頻度はまれですが、急性腎不全・心筋炎・脳炎などの重篤な合併症、後遺症を起こす可能性があります。

消毒用アルコールにも強く、手洗いや除菌といった一般的な対策ではウイルスを排除することができないため、予防にはワクチンの接種が非常に重要となります。

ロタウイルスワクチンの種類

ロタウイルスへの感染を予防するワクチンには様々な種類があります。海外では他の種類のワクチンが利用されていることもありますが、わが国で使用が認められているものには、一価経口弱毒生ワクチン(ロタリックス)五価経口弱毒生ワクチン(ロタテック)の二種類があります。両者には様々な違いがあります。

一価経口弱毒生ワクチン(ロタリックス)

一価経口弱毒生ワクチン(以下 ロタリックス)は、ロタウイルス胃腸炎を発症した患者さんから採取されたヒト由来のロタウイルスを原料にして作られたワクチンです。もちろんロタウイルスをそのまま接種すれば胃腸炎になってしまうので、ウイルスとして悪さを起こさないように特殊な処理(弱毒化)がなされています。

なお、「一価」というのはウイルスのタイプ(血清型)を示すものであり、ロタリックスは最も一般的な型(G1P)のウイルスを含んでいます。

五価経口弱毒生ワクチン(ロタテック)

五価経口弱毒生ワクチン(以下 ロタテック)は、人間に感染するヒトロタウイルスと牛に感染するウシロタウイルスの遺伝子を組み換えることによって新たに生み出した、ウシ由来のロタウイルスを原料にしたワクチンです。ウシロタウイルスとの間で遺伝子を組み換えることによってロタリックスと同様に弱毒化がなされています。

こちらはロタリックスとは異なり、五種類のタイプ(G1P、G2P、G3P、G4P、G9P)のウイルスを含んでいます。

ロタウイルスワクチンの接種方法

ロタリックスとロタテックともに注射ではなく内服(口から飲み込む)ことで接種します。両者の間には、ワクチンの接種時期や接種回数に違いがあります。

ロタリックス

生後6週から24週の間に2回接種します。一回目と二回目の間隔は最低でも4週間空けなければなりません。

ロタテック

生後6週から32週の間に3回接種します。それぞれの接種の間は、ロタリックスと同様に最低4週は空けるようにします。

 

両者の間には、ワクチンとしての優劣はありません。また、早く接種すればするほど良いというものではありません。ワクチンの種類や接種のスケジュールについては医師ときちんと相談するようにしましょう。

ワクチンの副反応

おむつ

このように、ロタリックスやロタテックは口から服用するだけでロタウイルスの感染を予防できる非常に魅力的なワクチンです。

ですが、ウイルス自体を体に取り入れるということには変わりがないため、場合によっては接種後に一過性の下痢などの副反応が生じることもあります。また、ワクチンを接種したあと一週間程度は便にワクチン由来のロタウイルスが排泄されている可能性があるので、おむつの交換などの際はより注意深く手洗いをするとよいでしょう。

まとめ

WHO(世界保健機関)は、BCG、ポリオ、麻疹(はしか)などと並んで、ロタウイルスのワクチンを「すべての子供たちに接種を推奨するワクチン」として挙げています。大切なお子さんを辛い嘔吐や下痢から守るためにも一度ワクチン接種を検討してみてはいかがでしょうか?