胎動は、赤ちゃんがお腹の中で元気に育ってくれていることを教えてくれる、赤ちゃんの健康のバロメーターです。健診で行う超音波検査やNSTなどのような器材が必要な検査と違い、いつでもどこでも妊婦さん自身が赤ちゃんの元気さを確認できます。
毎日、元気な胎動を感じていたのが、急に胎動が少なくなったり、動きを感じなくなったりすると非常に不安になるかと思います。ここでは受診の目安や、胎動で赤ちゃんの状態を把握する胎動カウント法などについてお話ししたいと思います。

目次

胎動が少ないのは危険?

胎動が少なくなったり、感じなくなったりすることは、赤ちゃんが何らかの原因で生命の危険があることを教えてくれている場合があります。
胎動は、赤ちゃんからお母さんへのメッセージですので、もし胎動がいつもより少ない、感じにくい、まったくないなど、異常な状態を察知したら、すぐにかかりつけの産婦人科に連絡するようにしましょう。

胎動が少なくなったりすることで考えられる異常は無数にあるため、胎動が少ないことだけではどんな異常が起こっているかはわかりません。
ただ、赤ちゃんが危機的状況に陥っている可能性があることだけは確かです。お腹の中で赤ちゃんが亡くなってしまった症例で、胎動の減少・消失が先行症状として報告されているものは多数あります。あれ?と思ったらすぐ連絡・受診するのが最善の方法です。

胎動カウント法

胎動を評価する方法として、胎動カウント法というものがあります。胎動カウントを毎日することで、胎動の減少に早く気付くことができ、早めの受診に繋げることができます。胎動をしっかり自覚できるようになったら始めてみましょう。方法は下記のとおりになります(胎動カウント法(modified 10 count method)より)。

  1. まず、月日を記入してください
  2. 毎日時間を決めずに、胎児が「とてもよく動いている」と感じた時から、カウントを始めてください
  3. 胎児が10回動くまでの時間を計測してください
  4. 一連の動作は1回として数えてください。少しでも間を置いたら別々にカウントしてかまいません。 (例)「ゴロゴロゴロ」は、3回ではなく1回です。
    「ゴロ…、ゴロ…、ゴロ…」は、3回です。
  5. 妊娠中、胎動が少なくなることはあっても、1時間以上全くなくなることはありません。1時間様子を見ても胎動が全く感じられなくなったときは、すぐに連絡して受診してください。
  6. 基礎体温表のように、線で結んでください。
  7. その他、出血・下腹痛などがあった時は、備考欄に記入してください。

妊娠36週までは約25分、妊娠37週以降は約35分以内に約90%の人が胎動を10回カウントできるという結果が出ていますので目安として覚えておきましょう。
もし、急に胎動が少なくなった場合や、胎動カウントに時間がかかりすぎると感じた場合には、かかりつけの産婦人科に連絡しましょう。

出産前に胎動が少なくなるって本当?

胎動

「出産が近づけば胎動は少なくなる」、「出産前は頭が骨盤内に入っていって固定されるから胎動がなくなる」と言う話を耳にされた方もいるかもしれません。
上記の胎動カウント法では、妊娠22週~32週で10分程度、妊娠33週以降から徐々に時間が延び(胎動が少なくなる)、40週では15分程度が中央値(全体の中央になる値)とされています。

なので出産が近づいた際にも、胎動カウント法で5分ほど時間がかかるようになるぐらいで、胎動がなくなったり、激減したりすることはまずあり得ません。
赤ちゃんは30~40分のサイクルで寝たり起きたりを繰り返しているので、ちょうど赤ちゃんが寝ている時に胎動を感じようとするとしばらく胎動がないように感じることがありえます。その場合も、1時間以内に再度胎動を感じ始めますから1時間以上全く胎動が感じられない場合は異常のサインと考えてよいでしょう。

ある症例では、胎動カウントを毎日していた妊婦さんが、妊娠38週に胎動が無くなったと自覚していたにも関わらず、「お産が近いから胎動がなくなった」と自己判断し、4日後の妊婦健診まで受診せず、受診した際には赤ちゃんはお腹の中で亡くなっていたということが実際に起こっています。
出産前には胎動は若干少なくなりますが、回数が激減、もしくはなくなった場合は、大変危険な状態である場合がありますので、かかりつけの産婦人科に連絡・受診するようにしましょう。

まとめ

胎動の減少や消失は、赤ちゃんになにかしらの異常が起こっていることを教えてくれる大事なサインです。次回の健診まで様子を見ようと自己判断することは危険ですので、かかりつけの産婦人科に連絡・受診するようにしましょう。

受診すれば、超音波やNSTなどの検査で赤ちゃんの状態がすぐわかり、適切な治療を受けることができます。
実際に、胎動減少を気にして受診し、赤ちゃんのへその緒がねじれ過ぎて危険な状態になっていることがわかり、緊急帝王切開分娩になった事例や、へその緒が赤ちゃんの首に巻き付いて首が締まった状態になっていることがわかり、緊急帝王切開分娩になった事例など、一足遅ければ赤ちゃんが亡くなっていたというケースは多く報告されています。
日ごろから胎動カウント法を行い、赤ちゃんの状態を気に掛けるようにしましょう。