肺炎は身近な病気ではありますが、実は死因の第3位であり、十分な注意が必要な病気の1つです。今回は、肺炎の原因菌として最も多い肺炎球菌について、成人用の肺炎球菌ワクチンの効果・副反応、受けるべき年齢や回数、時期について、詳しく解説していきます。

目次

肺炎球菌とは

肺炎球菌は、肺炎を引き起こす細菌の1です。

肺炎には、入院中の患者さんに発症する院内肺炎、介護施設などで発症する医療・介護関連肺炎、病院や介護施設外で日常生活を送っている方に発症する市中肺炎の3つに分類されます。肺炎球菌は、市中肺炎の中で最も多い原因菌であり、つまり日常生活を送れるくらいの健康な方であっても感染するリスクのある病原菌です。

肺炎は死因第3位

日本では毎年120万人以上の方が亡くなっています。死因として肺炎は、1位のがん、2位の心疾患に次いで、第3位となっており、肺炎で亡くなる方は年間約12万人に及びます。肺炎で亡くなる方のうち96.8%は65歳以上の高齢者ですファイザーより)。

この原因として、加齢によって免疫機能が低下するため、感染症にかかりやすくなることが挙げられます。これを受けて、平成26年10月より高齢者を対象とした肺炎球菌ワクチンの定期接種が施行されました。

成人用肺炎球菌ワクチンを受けるべき年齢

65歳以上の方

対象となるのは、平成30年(2018年)までの間は、年度内に65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳の誕生日を迎える方です。65歳から5歳刻みに設定されています。

平成31年(2019年)からはやや変更がなされ、接種日当日に65歳の方のみが対象となります。また、公費で受けられる定期接種の対象となるのは、過去に肺炎球菌ワクチンを接種した経験のない方です。

年度内に接種しなかった場合、定期接種の対象とはなりません。この場合は、任意接種となり、費用は自己負担となります。自治体によっては、任意接種の費用を負担してくれるところもあるので、お住まいの地域にお問い合わせください。

60歳以上65歳未満の方

原則としては、ワクチン接種の対象者は上記の通り65歳以上の方ですが、65歳未満であっても対象となることがあります。

60歳以上65歳未満の方で、心臓や腎臓、呼吸器などに障害がある、あるいは免疫機能が低下する疾患にかかっている方などが対象となります。

脳梗塞、COPDなどの慢性肺疾患、糖尿病、気管支喘息、慢性心疾患、透析中などの持病のある方、この他、何らかの病気の治療のため免疫を抑える薬剤を使用している方、脾臓を摘出した方なども該当します。

詳しくは専門的な判断が必要になるため、かかりつけの医療機関に確認してください。

成人用肺炎球菌ワクチンを受けるべき回数

定期接種の対象となるのは、1回のみです。
この1回で効果は5年以上続くといわれています。

その後の再接種に関しては、何回受けなければいけないという決まりはありません。不安のある方やリスクの高い方は再接種を行うことも可能ですが、その場合は任意接種として、経済的負担が少しかかります。

また、5年以内に再接種を行うと、接種部位の痛みなどが強く現れる危険があるため、再接種を希望する場合は5年以上期間をあけるようにしてください。

成人用肺炎球菌ワクチンを受けるべき時期

肺炎球菌による肺炎は、1年を通してかかる可能性があります。時期に関わらず、元気のあるうちに接種しておくことが推奨されています。

効果が得られるまでには3週間かかるため、特に季節の変わり目などの体調を崩しやすい時期までには接種しておくとよいでしょう。

成人用肺炎球菌ワクチンの効果

肺炎球菌ワクチンは、病原体を無毒化させたものを使用して作られています。
これを接種することで、実際に病原体に感染しなくても、その病原体に対する免疫を作ることができます。

一度免疫ができれば、その後同じ病原体が体内に侵入してもすぐに免疫が機能するため、発症を防ぐだけでなく、発症してしまった場合にも重症化しないなどの効果が期待できます。この効果は5年以上持続するといわれています。

成人用肺炎球菌ワクチンの副反応

接種した部位が赤く腫れたり、熱感を持ったり、痛みを伴ったりすることがあります。

ただしこれらの副反応は、通常2,3日ほどで治まります。症状が長引く場合や、発熱、倦怠感など全身の症状を認める場合には、再度医療機関に受診してください。

まとめ

肺炎は珍しい病気ではありません。特に高齢者などの免疫力が低下している方では、一度感染してしまうと大幅に体力が奪われ、繰り返すうちに全身が弱ってしまい、最悪の場合、命に関わることもあります。

普段健康にみえる方でも、風邪などをきっかけに急激に体調を崩してしまうこともあります。肺炎によって命を落とさないためにも、ぜひ肺炎球菌ワクチンの接種を検討してください。