免疫機能が弱い子供を肺炎球菌感染症から守るために、日本では平成25年4月から肺炎球菌感染症のワクチンが乳幼児の定期予防接種となりました。また、平成26年10月からは、高齢者も定期接種の対象となりました。肺炎球菌感染症は、急激な経過で肺炎・髄膜炎・敗血症を引き起こし、死亡・重篤な後遺症を残す可能性があります。それに加え、最近では、肺炎球菌においても抗菌薬の効果がない薬剤耐性菌が増えていることが問題となっています。抗菌薬による治療が難しくなってきたことに加えて、病気の進行が早いため、ワクチンによる予防が重要とされているのです。今回は、肺炎球菌感染症の予防方法について、ご説明します。肺炎球菌についての詳細は、「肺炎球菌ってどんな菌?子供は特に要注意です!」をご覧ください。
肺炎球菌のワクチンって?

小児用肺炎球菌ワクチン
免疫の未熟な乳幼児に抗体がつくように、免疫力を高めたワクチンです。平成24年4月から定期接種に導入されました。特に重篤な肺炎球菌感染症を引き起こすことの多い13種類の肺炎球菌の成分が含まれています。
高齢者用肺炎球菌ワクチン
平成25年10月から定期接種となりました。肺炎球菌には、93種類の血清型があるのですが、定期接種によってそのうちの23種類の血清型に効果があるとされています。
過去に肺炎や肺炎球菌感染症にかかっていても、定期接種を受けることができ、重篤な疾患の予防となります。
いつ接種できる?
小児用肺炎球菌ワクチン
初回接種 | 生後2か月~7か月の間に接種を始めて、27日以上の間隔をおいて3回接種する |
追加接種 | 初回接種+3回接種が行ってから、60日以上の間隔をおいて1回接種する(おおむね1歳を超えてから) |
高齢者用肺炎球菌ワクチン
平成27年度から平成30年度までの間に一人一回、定期接種を受ける機会があります。 | 平成27年4月1日から平成28年3月31日までは、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳の誕生日を迎える方が対象 | |
60歳から65歳未満の方で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に自分の日常生活の活動が極度に制限される程度の障害がある、ヒト免疫不全ウィルスによる免疫の機能に日常生活がほとんど不可能になる程度の障害がある方も対象となる | ||
すでに「ニューモバックスNP(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)」を接種したことがある方は定期接種の対象にはなりません。
ワクチンを接種できないときは?
- 37.5℃以上の発熱があるとき
- 重症な急性疾患にかかっているとき
- 肺炎球菌莢膜多糖体PRP、ジフテリアトキソイドにアナフィラキシーを起こしたことがある方
ワクチン接種の際に注意が必要な方
- 基礎疾患(心血管系、腎臓、肝臓、血液疾患、発育異常など)のある方
- 予防接種後、2日以内に発熱やアレルギーを疑う症状を起こしたことがある方
- 免疫不全と診断されたり、近親者に免疫不全者がいたりする方
- 肺炎球菌ワクチンにアレルギーを起こす恐れがある方
副反応はある?

局所反応として、
- 5%以上に痛み、熱感、腫れや赤み
- 1~5%に倦怠感、違和感、悪寒、発熱、筋肉痛、頭
- 1%以下にほてり、かゆみが現れ、咽頭炎、鼻炎の症状
その他、稀に無力症、関節痛、感覚異常、嘔吐、リンパ節症、白血球数増加、じんましんなどが見られます。
また、高齢者の場合にみられる重い副反応として、アナフィラキシー、血小板減少、ギランバレー症候群(手足の脱力としびれが起こる末梢神経が障害される病気です)、蜂巣炎(ほうそうえん)反応(赤み、腫れ、熱、痛みなどを伴う細菌感染症)が見られたと報告されています。小児では、重篤な副反応は今のところ報告されていませんが、気になることや心配になることがある場合、かかりつけ医に相談してください。
もし重い副反応が出た場合は、救済給付を行うための制度があるので、お住まいの市町村に相談するようにしましょう。
まとめ
肺炎球菌感染症から守るために、日本では乳幼児と高齢者を対象として定期予防接種が行われています。ワクチンを受ける対象年齢に該当するか確かめましょう。予防接種を受けられないとき、受けるのに注意が必要な人もいるので、ワクチンを受ける前には説明をよく読み理解することが大切です。少しでも不安なことがあれば、医師に相談しましょう。