肺炎は肺に炎症が起こる病気で、風邪と症状が似ています
特に高齢者や慢性の病気を持っている方などは、肺炎にかかりやすく治りにくい傾向があるので予防すること、何らかの病気にかかったときは早めに治療をすることが重要となります。

今回は肺炎の治療法と予防について解説します。

目次

これって肺炎?

肺炎は風邪やインフルエンザの合併症として発症することが多い病気なので、風邪のような症状が長く続いていたり悪化していたりする場合には、肺炎を疑ってみることが大切です。

発熱、鼻水などの風邪の症状に続いて以下の症状が見られたら早めに内科や呼吸器内科を受診するようにしましょう。

詳しい肺炎の症状については、「肺炎ってどんな病気?症状8つと原因を解説」をご覧ください。

肺炎の検査

問診や聴診などの診察のほかに、肺炎であるかを調べるために以下のような検査を行う場合があります。

画像検査

レントゲン(X線)撮影やCTなどの画像検査を行います。炎症を起こしている部分が白く写ります。

血液検査

採血をして血液中の白血球の数、酸素の濃度などを測定します。細菌に感染して炎症を起こしていると白血球の数が増えて、血液中の酸素濃度が低下します。

喀痰(かくたん)検査

肺炎を起こしている原因の病原体をから測定して取れた菌を培養し、原因を確定する検査です。

迅速検査

鼻腔や喉奥を拭ってインフルエンザウイルス、マイコプラズマなどに感染しているかを確かめます。尿によって肺炎球菌やレジオネラによる感染か調べる検査もあります。

肺炎にかかったら

重症度に応じて、抗菌薬による薬物治療を中心として治療を行います。肺炎の原因となっている病原体を死滅させるために抗菌薬が処方されます。

以前は入院して注射薬で治療をしていましたが、最近では優れた経口抗菌薬が使われるようになったので、重症でない場合は飲み薬を中心とした治療が行われるようになりました。

咳を鎮めるための鎮咳薬(ちんがいやく)や熱を下げるための解熱薬を使用するイメージがあるかもしれませんが、あくまで対症療法ですので、本当に体調が優れない時に頓用で使用する方が望ましいです。

咳は細菌やウイルスなどの異物を出すための反射、防御反射ですので、強い鎮咳薬を常用するのはおすすめできません。

解熱剤はウイルスや細菌が死滅するわけでなく熱だけを下げるので、肺炎が改善しているかどうかも判断しにくくなります。

上気道炎では解熱薬の使用で改善が遅れるというデータもあります。
毎日定期的に使用するのでなく、高熱で食欲不振などつらい時に頓用で使用する方が有効です。

痰を出しやすくする去痰薬、咳と息苦しさを和らげる気管支拡張薬などは、それぞれの症状に応じて処方されます。

薬物治療の効果、体力や抵抗力を高めるために、自宅では温かくして安静に休むように努めます。
熱があったり食欲がなかったりすると脱水症状を起こすこともあるので、水分と栄養をしっかりとるように気を付けることが大切です。

肺炎を予防するためには

歯ブラシと歯科器具-写真

一度発生した肺炎の治療は難しい場合もあるので、大切なのは肺炎にならないことです。肺炎にかからないための予防法は以下の通りです。

1.予防接種を行う

インフルエンザに続いて肺炎を起こすことが多いため、インフルエンザの予防は肺炎の予防にも有効です。インフルエンザの流行期にはマスクをしたり、手洗い・うがいを徹底したりするほか、インフルエンザの予防接種を受けると良いでしょう。

加えて、65歳以上の方・持病のある方は、ある種の肺炎自体の予防になる肺炎球菌ワクチンを接種することによって、肺炎にかかるリスクを減らし、重症化を防ぐことが期待されています。

市中肺炎の約30%に関与する細菌が肺炎球菌です。
肺炎球菌性肺炎は、重症肺炎や敗血症を引き起こすことがあるので、予防が大切です。

以前は、公費負担で定期接種のある23価肺炎球菌多糖体ワクチン(5年間有効)を繰り返し接種して予防していましたが、免疫記憶が付いたために長期間有効な13価肺炎球菌結合型ワクチンが登場してきたことで、日米のガイドラインでは両者を一定の間隔で接種することが記載されています。

2.バランスのとれた食生活を心掛ける

肺炎を防ぐためには、栄養不足を防ぐことが大切です。
栄養が不足すると体力が落ち、肺炎をはじめとする感染症にかかりやすくなります。
日頃から栄養バランスがとれた食事をすることを意識してみましょう。

献立の参考になるのが、厚生労働省と農林水産省が提案している食事バランスガイドです。

一日分の食事の量を図解で解説しているので、是非参考にしてみてください。

食事をしたくても食欲がないときは、無理に食べる必要はありません。不足している栄養を補うために市販の栄養調整食品を食事に取り入れることによって、栄養バランスを整えましょう。

3.タバコを吸わない

タバコは、肺がんなど呼吸器の様々な病気の原因となります。

気道の表面は線毛細胞に覆われていて、空気に混じって気道に入ってきたゴミや細菌・ウイルスなどを痰の中に閉じ込めて咳と一緒に気道の外に出す働きをしています。

しかし、タバコを吸うことによって線毛細胞が慢性的に痛めつけられ、機能が弱まります。すると肺炎の原因となる病原体が気道の奥にまで侵入し、肺炎を起こしやすくなってしまいます。

自分ではなく、他の人が吸っているタバコの煙を吸う受動喫煙でも上記のような影響が出るので注意が必要です。

4.口腔ケアを行う

誤嚥性肺炎は、口やのどの中にいる病原体が気管の中に入ることによって起こります。

肺炎の原因となるのは、肺炎球菌や歯周病に関連する菌など様々です。そのため、口腔ケアを毎日行うことで口の中の細菌の数を減らすことを目指します。

歯に付く汚れは、食べ物が残ったものと細菌の塊に分けられます。食べ物はうがいなどでも取り除くことができますが、細菌は粘着力がとても強いので、歯から物理的にこすり取らなくてはいけません。うがい薬などでは十分に除去することができないのです。

口の中で汚れが溜まりやすい部分は、上あごの歯の内側、下あごの歯と唇の間、口蓋部分、下あごの歯の内側です。
歯ブラシ、舌ブラシなどを使って細菌を剥がしとり、うがいによって口の外へ排出させましょう。

まとめ

肺炎は問診の他に、画像検査や血液検査などを行うことで診断されます。肺炎と診断がおりたら、肺に感染している病原体を死滅させるために抗菌薬を中心とした薬物治療が行われます。

肺炎にかからないように、普段から予防することも大切です。予防接種を行う、バランスの取れた食生活を送る、禁煙する、口腔ケアを行うことを徹底して、細菌やウイルスに負けない身体を作りましょう。