みなさん、ハンコ注射を覚えているでしょうか。
ハンコ注射はBCGワクチンという乳児期に受ける予防接種の1つで、結核を予防する効果があります。

結核は、昔は「死の病」として恐れられ、多くの患者さんが亡くなりました。今では、抗結核薬が開発されており死亡率は低下しましたが、発見が遅れたり、重症化した場合には呼吸不全や髄膜炎・敗血症により死に至ったりするケースもあります。

また、薬に耐性を持った結核菌が存在していることもあり、予防するに越したことはありません。ここでは、BCGワクチンの推奨接種期間や効果、副反応についてお話ししたいと思います。

目次

BCGワクチンはいつ打つもの?

BCGワクチンの接種回数は1回で、生後12か月未満に接種します。産まれた直後から接種は可能ですが、標準的には生後5か月から8か月未満に接種します。

結核の発生頻度が高い地域では早めの接種が必要になりますので、かかりつけの小児科で相談してみましょう。定期接種なので、生後12か月未満に接種されば、料金の負担も少なく受けることができます。他の予防接種の時期も考えてスケジュールを組んでおきましょう。

ちなみに、平成17年までは4歳未満の児童を対象に行われていたのですが、現在は、原則1歳未満と接種年齢が変更されているので注意してくださいね。

BCGワクチンの効果は?

結核は、乳幼児がかかると重症化しやすく、肺結核だけでなく、結核性髄膜炎や粟粒結核(結核菌が血液に入り、全身にばらまかれる状態)などの重篤な状態に陥り、生命に危険が及ぶ場合もあります。

この結核菌は、予防接種を受けることで予防することができます。予防効果は十~十数年と言われています。

以前は小学1年生と中学1年生でツベルクリン反応検査(陰性であればBCG接種)が行われていましたが、現在は感染症予防法の改正によりその制度はなくなっています。

BCGワクチンの副反応

BCGワクチンは、他のワクチンと違って注射器で接種する方法ではなく、溶かしたBCGワクチンを上腕の外側に滴下して、9本の細い針が付いたスタンプのような器具で、上下2ヶ所に強く押して接種します。このため、ハンコ注射とも呼ばれます。

BCG接種後2~6週間ほどして、針で刺した部分が赤くなり、小さな膿をもつ反応がみられます。接種後4週間頃が最もひどくなりますが、通常は1~3か月ほどでかさぶたができてきれいに治ります。かさぶたが取れるまでは、もんだり、こすったり、剥がしたりしないように注意しましょう。

ただし、接種後7日以内に赤くなったり、腫れたり、黄白い膿が出て化膿した場合は、結核にすでにかかっているかどうか検査が必要なことがあるので、接種した小児科を受診するようにしましょう(これはコッホ現象と呼ばれるもので、これがみられた場合、予防接種の前に知らないうちに結核菌に感染していた可能性もあります)。

稀ですが、BCGワクチン接種後に脇やその他のリンパ節が腫れることがあります。しかし、これは長くても6か月までには自然に治ることがほとんどです。

また、非常に稀ですが、皮膚結核に似た全身の発疹や、潰瘍(穴のようなへこみ)ができたり、中耳炎や骨炎が起こったりする場合があります。これらは治療によって軽快・治癒します。

免疫力が極度に低下している場合には、全身播種性BCG炎と呼ばれる致死的な状態になることもあります。予防接種を受けた後、なにか異常を感じたら、早めに接種を受けた小児科を受診するようにしましょう。

まとめ

BCGワクチンを接種することで、死の病と恐れられ、現在では薬剤耐性菌によって治療が難しいこともある結核を予防することができます。乳幼児は大人に比べて免疫力が低いため、生後5か月になったら予防接種を受けられるようにスケジュールを調整しておきましょう。

副反応もほとんどの場合、時間が経てば元通りになるので気にしすぎることはありませんが、稀に重篤な副反応を起こす場合もあることを知っておきましょう。

もし、予防接種後になにか変だなと感じることがあれば、予防接種を受けた小児科を受診しましょう。お母さんの気づきは、子供の健康を守る一番高性能なセンサーです。