生まれたばかりの赤ちゃんにはお母さんから受け継いだ免疫機能がありますが、これは次第になくなります。したがって、赤ちゃんは細菌やウイルスなどの感染症に対して非常に無防備な状態です。様々な感染症を発症して最悪の場合命を奪われてしまいます。それを防ぐために実施されるのが予防接種です。予防接種によって免疫をつけ、感染症によって命を落としたり、後遺症を残したりするリスクを大きく減らすことができます。

現在の日本の予防接種制度は、予防接種法に基づいて実施されています。予防接種法では、乳幼児に対す予防接種を定期接種任意接種の二種類に分類しています。ここでは両者の違いについて説明します。

目次

予防接種の意味

予防接種には、2つの重要な役割があります。

  • 接種を受けた者自身が感染症にかかって体調を崩したり、命を落としたりすることを防ぐ
  • 感染症の蔓延を防ぎ、社会全体の健康(公衆衛生)を守る

実際に予防接種法では、予防接種の目的を「伝染のおそれがある疾病の発生及び蔓延を予防するために公衆衛生の見地から予防接種の実施その他必要な措置を講ずることにより、国民の健康の保持に寄与する」ためと定義しています。したがって、予防接種は単にわが子を守るためだけではなく、社会全体を感染症の蔓延から守るための義務であるとも言えるわけです。

定期接種と任意接種の違い

予防接種法では、予防接種は定期接種と任意接種の二種類に分類されています。両者の間には制度上、様々な違いがあります。

定期接種

予防接種法では、予防接種は定期接種と任意接種の二種類に分類されています。両者の間には制度上、様々な違いがあります。

2017年8月現在、A類疾病に分類されているワクチンには、

の10種類があります(なお、HPVワクチンは、様々な副反応が社会的問題となったため、現在積極的な接種は差し控えられています)。

定期接種で接種できるワクチンは、接種にかかる費用の90%が地方交付税によって賄われています。そして残りの費用に関しても、様々な補助を受けることができるため、多くの自治体では実質無料で接種が受けられるようになっています。

ただし行政による補助を受けるためには、定められた時期に決められた回数を接種することが求められます。例えば東京都では、MRワクチンは1回目を生後12か月から2歳未満の間に、2回目を小学校入学前の1年間に接種するように定めています。

正当な理由(病気など)なしにこれ以外の期間に接種を受けた場合には自費となります。それぞれの自治体の制度をよく把握するようにしましょう。

任意接種

任意接種は定期接種とは異なり、接種者自身の希望に基づいて実施される予防接種のことです。こちらに該当する予防接種としては、

などがあります。これらは、上記の感染症を予防するのに役に立つこともありますが、費用を自分で負担しなければいけません。したがって、接種者自身でワクチンの必要性を判断し、医師の相談のもとで接種を検討するとよいでしょう。また、上記の感染症のリスクが高まったとき(海外留学・赴任時など)に接種する方も多いです。

まとめ

予防接種は法律に基づいて実施されており、様々な制度が混在していて専門家以外にはなかなか理解することが難しくなっています。また、制度は日々変化しており最新の状況を把握することが重要です。そのため、不明な点がある場合には、専門の医師(小児科医など)に相談するとよいでしょう。