二種混合(DT)ワクチンとは、ジフテリア(Diphtheria)と破傷風(Clostridium tetani)を予防するために接種するワクチンです。現在わが国では、法律に基づいて確実に接種することが求められる定期接種の一つとして定められています。
他の定期接種ワクチンは基本的に乳児や幼児の時期に接種することが多いなかで、DT混合ワクチンは小学校入学後に接種するという点が特徴的です。ここでは、DTワクチンが何のために接種されるのか、そして接種にまつわる制度などについて解説します。

目次

DTワクチンってなに?

すでに説明したように、DTワクチンはジフテリアと破傷風を予防するためのワクチンです。ジフテリアや破傷風は感染症のなかでも、一度感染すると症状が比較的重く、回復にも時間がかかるとされています。したがって、ワクチンの接種によって事前に予防策を講じておくことが求められます。

DTワクチンの特徴

DTワクチンの特徴として、トキソイドを利用しているという点があります。トキソイドとは、細菌が生み出す毒素を化学処理によって無害化したもののことです。これを人間に接種しても病原性は失われているため症状を引き起こすことはありません。このトキソイドを人間に接種することで、毒素の特徴を人体の免疫系は学習し、次回以降の感染時に毒素に対して抵抗するための能力を獲得することができます。

DTワクチンの役割

二種混合ワクチンと似たようなワクチンとして、四種混合(DPT-IPV)ワクチンというものがあります。これはジフテリアと破傷風に加えて、百日咳(Bordetella)とポリオ(Polio)を予防するためのワクチンです。DPT-IPVワクチンは、DTワクチンと同じく定期接種の一つであり、一般的に生後3か月から1歳までに初期の3回が接種されます。

DTワクチンは、このDPT-IPVワクチンの機能を補う目的で11歳から12歳までの小学5~6年生の時期に接種されます。DPT-IPVワクチンによって獲得された免疫力は、成長とともに次第に低下していきます。そのため、ある程度成長した後も感染しやすいジフテリアと破傷風に限って、再度免疫力を高める目的でDTワクチンは接種されるのです。

なお、DTワクチンには含まれない百日咳の予防ですが、近年議論の対象になっています。かつては、百日咳は子どもの間で流行する感染症とみなされており、学童期以降に予防を図る必要はないとされてきました。しかし近年、成人の間でも百日咳の流行が確認されており、DTワクチンに百日咳ワクチンを追加すべきではないかという意見が出ております。この様な事情もあるため、今後DTワクチンに関しては制度変更の可能性があることについても知っておくと良いでしょう。

DTワクチンの接種スケジュールは?

現在、わが国でDTワクチンは「11歳以上13歳未満の時期に1回接種すること」で、定期接種(行政の補助を受けられるため金銭的な負担が軽く済む)扱いになります。
標準的には、11歳から12歳までの時期に接種します。

ほかの予防接種とは、生ワクチンとは27日以上、不活化ワクチンとは6日以上間隔を空ける必要があります。この時期はほかの定期接種などは無いためあまり気にすることはないかもしれませんが、インフルエンザワクチンなどの接種と重複する場合などは、医師と接種スケジュールを調整するようにしましょう。

副反応について

気になる副反応ですが、接種部位が赤く腫れたり、しばしば発熱頭痛を生じたりすることもあります。しかしいずれも2~3日で消失するとされています。
なお、まれにアナフィラキシーショックなどの重篤な反応が起こることもあるので、接種後に急激な体調の変化が見られた場合は急いで医師の診察を受けるようにしましょう。

まとめ

二種混合(DT)ワクチンは、他のワクチン接種と時期がずれるため、接種に対する意識が薄れがちかもしれません。ですが、四種混合(DPT-IPV)ワクチンを補うという大事な役割があるワクチンです。行政の補助に基づく定期接種に指定されているため、決められた期間内に受ければ接種に要する経済的負担も非常に少ないケースが多いです。確実な接種を心がけるようにしましょう。