赤ちゃんが成長していく上で、注意しておきたい病気の一つに胆道閉鎖症があります。出産経験がある人は、母子手帳に挟んである便の色見本カードとともに見聞きしたことがあるかもしれません。便や尿の色に特徴がある病気で、放っておくと死亡する恐れがあるため、早急に治療する必要があります。今回は胆道閉鎖症について紹介していきます。

目次

胆道閉鎖症とは?

肝臓で作られている胆汁には、脂肪分など栄養の吸収を助ける働きがあります。この胆汁が流れて通って行く道を胆道といいます。胆道は大きく分けると次の3つの器官からできています。

  • 肝管…肝臓で作られた胆汁が最初に通る道
  • 胆のう…肝管を通ってきた胆汁を一時的に溜めておく袋状の器官
  • 胆管…胆のうで溜められた胆汁が十二指腸へと流れる時に通る道

胆汁は上記3つの器官を通って、十二指腸へ送られることで食物の吸収を助けています。胆道閉鎖症とはこの胆道が何らかの原因で詰まってしまい、胆汁が十二指腸へと流れることができず、肝臓や脳など身体に様々な悪影響を及ぼしてしまう病気です。

胆道閉鎖症の原因

胆道閉鎖症は生まれつき、または生後間もなくして胆道が詰まってしまったことが原因といわれていますが、未だに原因については解明されていない部分も多い病気です。先天性の奇形などではなく、母親の胎内にいる時に一度は作られた胆道が、何らかの炎症によって詰まってしまうのではないかといわれています。

胆道閉鎖症の発症は1万人に1人という非常に少ない割合ですが、その中でも男の子よりも女の子のほうが2倍多いといわれています(日本小児外科学会より)。

胆道閉鎖症の症状

一部に黄色のペンキが塗られた壁

胆道閉鎖症には次のような症状がみられる場合があります。

黄疸

皮膚や結膜(白目)が黄色く見える黄疸は、そもそも生後2~4日後の間もない赤ちゃんによく起こり、珍しいものではありません。「生理的黄疸」といってからだの未熟さが原因で、生後1週間ほどで自然と消えていく場合が大半です。

しかし、胆道閉鎖症は胆汁が流れていかないために、胆汁の色素であるビリルビンが肝臓内の組織に溜まって皮膚などに黄疸を起こします。いつまで経っても黄疸が消えず、逆に黄疸が強くなっていくのも特徴です。

便の色が薄くなる

尿や便の色はビリルビンと深く関わっています。胆汁が腸へと流れていかない胆道閉鎖症では、便の色も必然的に薄くなります。

胆道閉鎖症で有名なのは灰白色便ですが、必ずしも灰白色便というわけではなく、クリーム色や薄い黄色などの場合もあります。便の色が普段と違っていたり、薄くなっていたりするなどした場合は、早期発見のために母子手帳に添付されている便のカラーカードと実際の便の色を見比べて確認するようにしましょう。

確認する際は、自然光の元で行います。室内の明るさや照明の色によって見た目の便の色に影響が出ることがあるためです。

尿の色が濃い

胆汁が流れていかないと、肝臓から腎臓へと流れたビリルビンが尿中へと排出されるため、尿の色は茶色のように濃くなります。健康な赤ちゃんの尿の色は通常は薄いですが、胆道閉鎖症を発症していると尿の色は見た目でわかるぐらいの濃い黄色・茶色となるのが特徴です。

その他

肝臓に組織が破壊され肝臓が硬くなり腫れるため(線維化)、お腹が膨らんだように見えることもあります。肝硬変まで進行してしまうと完全に治すことは難しくなってしまうため、早い段階での発見・治療が大切です。

胆道閉鎖症の治療

胆道閉鎖症の一般的な治療法は手術です。胆汁が流れるように手術する方法と、肝臓自体を違うものに変えてしまう方法(肝移植手術)があります。

肝移植はリスクの大きな方法となるため、まずは詰まっている胆汁を流れさせるために以下のような手術法が選択されます。

肝管腸吻合(ふんごう)術

肝臓で作られた胆汁が最初に通る道の胆管が詰まっていない場合、この部分と腸管とをつなぎ合わせ胆汁が流れるようにする手術です。術後に十二指腸の一部機能がなくなり、将来的に胆管炎や肝膿瘍などを合併する恐れがあります。

肝門部腸吻合術(葛西法)

胆管が既に詰まっている場合、胆管を全て取って直接肝臓と腸管をつなぎ合わせる手術です。考えた医師の名前から別名「葛西法」や「葛西手術」とも呼ばれています。胆道閉鎖症と診断された人の大半は胆管が既に詰まっている場合も多いため、肝門部腸吻合術のほうが多く行われています。こちらも胆管炎を発症する恐れがあります。

手術をしても黄疸や肝臓の状態などが良くならない、また逆に悪くなって肝硬変が進行しているような場合は、肝移植を行うことになります。

まとめ

胆道閉鎖症は手術して終わりというわけではなく、手術後長い年月が経ってから合併症を引き起こしてしまうこともあります。

長期にわたって経過を見ていく必要のある病気ですが、病気の発見や治療が遅れれば遅れるほど、状態が悪化して治療も難しくなります。正しい知識をもって早期発見・早期治療が必要になる病気といえます。