肝硬変という病気はよく聞くと思いますが、実際には少しイメージしにくい病気かもしれません。
しかし、生活習慣の乱れによる肝硬変は現在、増加しつつあり、アルコールだけではなく、脂肪肝から肝硬変になる人も増えてきているのです。

肝硬変が起こる原因と治療法について、医師が解説します。

目次

肝硬変はなぜ起こる?

「肝硬変」という病気は文字通り、「肝」臓が、「硬」く、「変」化する病気。
焼肉店などで、焼く前の生レバーを見たことがある人も多いと思いますが、正常な肝臓は柔らかく弾力のある臓器なのです。

それが、カチカチに硬く変化してしまうのは、肝臓に繊維化が起こり硬くなってしまうから。
素振りや鉄棒を長く続けると、手にマメができて硬くなるようなことが、肝臓にも起こっているのです。

同じような刺激を長期間受けることで、肝臓全体が柔らかい組織から硬い繊維に置き換わり、肝臓自体がカチカチに硬く小さく萎んで本来の働きを失っていくのです。

肝臓はトカゲのように再生する!?

本来、肝臓は再生能力の非常に高い臓器です。正常の肝臓ならば、3/4切除しても元のように戻ると言われています。肝臓はトカゲのしっぽのように再生するのです。

そして、生体における肝臓の働きも並大抵のものではありません。

肝臓は生体の化学工場といわれており、栄養の貯蔵や供給、胆汁の生成、アルコールや有害物質の分解など、なくてはならない肝心要の臓器です。

肝臓は能力が高い生体臓器の優等生なのですが、それゆえにあまりにも多くの要求に答え過ぎることで、不具合が生じてくることがあるのです。

肝硬変は慢性の刺激により起こる病気

砂漠-写真
先述したように、肝臓は再生能力が非常に高い臓器です。
しかし、その能力を超えて使用し続けると、流石の肝臓もバテてきます。

いくら性能の良い車でも、足場の悪い荒れ地を何年もの長い距離を走らせ続けさせると壊れてしまいます。

荒れ地にあたるのが、肝炎ウイルス「アルコール」脂肪肝などです。

そして、「飲酒歴」「病気にかかっている期間」が走った距離といえるでしょう。
例えばアルコール性肝硬変の場合、お酒の量や度数に比例して、そして飲酒の期間が長くなればなるほど肝硬変になりやすくなります。

しかも、個人差や体格差、性差も関係するため、数年で肝硬変になってしまうことも少なくはありません。特に女性は、少ない量で肝硬変になりやすいので注意が必要です。

肝硬変の症状合併症

では肝硬変になるとどのような症状が出るのでしょう。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、症状が出てきた場合にはかなり進行しています。身体がだるい疲れやすいなどの症状で始まり、皮膚が黒ずんだり、手のひらが赤くなったり(手掌紅斑)します。

さらに進行すると、黄疸が出たり、お腹に水が溜まったり、脳症による意識障害をきたしたりします。

これは肝不全の症状で、こうなるともう末期です。予後は数年かもしれません。

食道静脈瘤ができていた場合、急な破裂で出血死することもあります。
また肝臓がんも併発しやすいので、がんに対しての注意も必要です。

肝硬変の治療法

正直なところ、肝炎から肝硬変になってしまった場合、根本的な治療法はありません。
肝臓はある意味精密機械であるため、ある程度壊れてしまうと、代替品がないのです。

ただし、肝硬変になるには数年~数十年の年月を要するため、事前に予防することができます。

ウイルス性肝炎の場合、近年は飲むだけでウイルスを除去できる薬もあります。ウイルスを除去できなくても、薬や注射で進行を止めることは可能です。

ウイルス性肝炎の方は、近くの医療機関に相談してみると良いでしょう。

アルコール性肝炎の場合は、飲む量を控えて、休肝日を作ることで肝臓を休ませるだけで肝臓は回復します。

脂肪肝炎は、余分な栄養が肝臓に負担を掛けている状態なので、食べる量を抑えて運動をすることで、余分な栄養を燃焼させるようにすると良いでしょう。

まとめ

どうですか?肝硬変といっても、発症するまで数年~数十年かかる病気なので、事前に予防することが可能です。

逆にジワジワと進行し、自覚症状がほとんどないため、自分自身や周囲が意識をしていないと見逃されやすいのも事実です。

近年、生活習慣の乱れによる脂肪肝アルコール性肝炎からなる肝硬変や肝臓がんが増加しています。まず自分自身の生活習慣を見直してみましょう。

そして、定期的に健康診断でチェックし、メンテナンスを行うことも大切といえます。