皆さんは、サルコペニアフレイルという言葉を耳にしたことはありますか?
近年、テレビ番組などで取り上げられる機会は徐々に増えてきましたが、いまだに一般の方にはあまり馴染みのない言葉かもしれません。

シンプルに説明すると、サルコペニアとは加齢に伴う筋肉減少症のことであり、フレイルは加齢によって生じる様々な能力の低下となります。

「年をとれば能力が落ちたり筋肉が減るのは当然じゃないか!」と思うかもしれませんが、サルコペニアとフレイルはともに健康寿命の長さに大きな影響を与える要因であるとされています。
ここでは、サルコペニアやフレイルが一体どのようなものであるかを解説します。

目次

サルコペニアとは?

ギリシャ語でサルコペニアのサルコは「筋肉」、ぺニアは「減少症」を意味します。
よって上でも説明したようにサルコペニアで「筋肉減少症」という意味になります。

筋肉の量が減少すると人間は動きにくくなり、活動性が低下します。
また、姿勢を維持する筋力も低下するため転びやすくなります
若いうちは転んでも何ともないかもしれませんが、お年寄りの場合は一度転倒し大腿骨や腰椎(腰骨)などを骨折してしまうと、そのまま寝たきりになってしまうケースも少なくありません。

寝たきりになってしまうと、本人のQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)が低下するだけではなく、介護者にも大きな負担がのしかかります。したがって、高齢者の筋肉量については積極的に注意を払う必要があるのです。

フレイルってなに?

サルコペニアはギリシャ語由来でしたが、フレイルは『弱い、脆弱』といった意味がある英単語のfrailを由来としています。
サルコペニアが筋肉の量や運動能力などに視点を限定しているのに対して、フレイルはより広い視野(栄養状態や経済力など)から高齢者の機能低下を評価しているのが特徴です。
フレイルもサルコペニアと同様に、進行すると健康寿命が短くなり、死亡のリスクが上昇します。

サルコペニアやフレイルに当てはまるのはどんな人?

ここまでサルコペニアやフレイルが一体どのようなものなのかについて説明しました。
では一体、どの様な高齢者がサルコペニアやフレイルに当てはまるのでしょうか?

人間、年をとれば誰でも、若いころのようには振る舞えなくなりますし、筋肉量も落ちていきます。
しかし、そのような高齢者をみなサルコペニアやフレイルだと言ってしまうのは無理があります。
そこで、サルコペニアやフレイルを客観的に評価する指標が存在します。

まずサルコペニアですが、EWGSOP(European Working Group on Sarcopenia in Older People)というヨーロッパの学会が具体的な評価指標を作成しています。
詳細は割愛しますが、その評価指標ではまず歩行速度握力で筋肉の量を推定します。その上で、それらが一定の水準に達していない人に対してSMIと呼ばれる筋肉量測定のための特殊な測定法を用いて筋肉量を調べます。SMIが年齢相応の水準に到達していない場合、サルコペニアと判断されます。

一方、フレイルですが、こちらもJ-CHSと呼ばれる厚生労働省の研究班が作成した診断基準が存在します。この診断基準では、

  1. 体重減少(半年で2~3 kg以上の体重減少)
  2. 握力(男性26 kg以下、女性18 kg以下)
  3. 疲労感(ここ2週間で理由もなく疲れている)
  4. 歩行速度(通常歩行速度1.0 m/秒以下)
  5. 身体活動(ここ最近軽度な運動や定期的な運動をしていない)

といった基準が挙げられています。このなかで、1~2項目が該当するとプレフレイル(フレイル一歩手前の状態)、3項目以上該当するとフレイルと診断されます。

まとめ

サルコペニアとフレイルはともに、高齢者の生活の質や健康寿命に大きな影響を与える要因です。それにもかかわらず、認知症などと比較すると認知度が低い現状にあります。
しっかりとその存在を理解し、対策を実行していけばサルコペニアやフレイルは予防することができます

これを機会に高齢者の方や高齢者のサポートをする立場にある方々は、サルコペニアやフレイルの存在に理解が深められるとよいでしょう。