「サルコペニア」「フレイル」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
高齢者のQOL(生活の質)や健康寿命に大きな影響を与える要因で、誰もが関係のある事柄です。

それにも関わらず、認知症などと比較してサルコペニアやフレイルなどは一般の方々にあまり知られておらず、予防の対策なども特に実施されていないのが実情です。
そこで、ここではサルコペニアやフレイルを予防するためには一体どのようなことをすれば良いのかについて説明します。

目次

サルコペニアやフレイルはなぜ恐ろしい?

サルコペニアとは加齢に伴う筋肉減少症のことです。また、フレイルとは加齢に伴って生じる様々な能力低下のことを指します。

歳を摂ったら筋肉量が落ちたり、若い時よりもできることが少なくなるのは当たり前、と思う方もいるかもしれませんね。ある程度は仕方のないことですし、多少の衰えはサルコペニア、フレイルとは呼ばれません。
加えて両者とも、がんや脳卒中、心筋梗塞などの様に直接的に人間の生命を奪うことはありませんが、そのまま放置してはならないとされています。
というのも、サルコペニアとフレイルは両者ともに高齢者の『行動力』を奪ってしまうからです。

例えば、筋肉が減少してしまうと、姿勢を支える筋肉が失われてしまいます。すると転倒しやすくなり、打ちどころが悪いと大腿骨(太もも部分の骨)や腰椎(腰骨)などを骨折してしまいそのまま寝たきりになってしまいます。
この様な状態になると、本人だけではなく周囲の人間にも多大な影響を及ぼします。したがって、他の恐ろしいとされる疾患と同様に、サルコペニアやフレイルに対しても十分に注意を払う必要があるのです。

予防するためにはどうすればいい?

では、サルコペニアやフレイルを予防するためにはどうすれば良いのでしょうか?これらの疾患は、日常的な努力によってリスクを大きく下げることができます。

サルコペニア

まずサルコペニアですが、これは筋肉の減少を抑えるための対策が必要となります。
若者が筋肉を鍛える時トレーニングをするように、サルコペニアの予防にも運動が大きな役割を果たします

エクササイズによって適度な刺激を筋肉に与えることで筋肉量の減少を防ぐことができます。
特にサルコペニアに対しては、レジスタンス運動と有酸素運動という2つのタイプの運動を並行して実施するのが有効とされています。レジスタンス運動とはいわゆる筋トレのことです。筋肉に対して一定の負荷をかけることで筋肉量の増加や筋力の向上を目指します。
一方、有酸素運動ですが、これはマラソンなどのことを指し、持久力の向上を目指すトレーニングのことです。

これらをバランスよく行うことがサルコペニアには有効です。もちろん激しい運動をする必要はありません。また、運動をする場合は転倒には十分注意する必要があります(高齢者では、転倒による怪我が原因で寝たきりになってしまう例が少なくありません)。まずは一日中家で座っているようなことを減らすことから始めてみましょう

あわせて、筋肉量の維持のためにバランスの良い食事をきちんと摂取することも大切です

フレイル

フレイルは、加齢によって生じる機能低下のことです。
したがって、予防の方法もサルコペニアと比較するとより広い視点からのものになります。基本的には、コンディションが極度に悪化することを防ぐことが重要です。高齢者のコンディションが悪化する要因として以下のものがあります。

1.持病の悪化

高齢者の場合、ほとんどの場合何らかの持病をかかえています。
これらの持病の悪化が、寝たきりなどの深刻な結果を招くことも少なくありません。
そのため、持病を抱えた高齢者がいる場合は、継続的な治療をきちんと受けられるようにしてあげる必要があります

2.運動と食事

こちらはサルコペニアと同様です。定期的な運動ときちんと栄養を考慮した食生活によって骨折などの怪我を予防します。繰り返しになりますが、運動時は転倒のリスクに十分気を配ってください。

3.感染症

高齢者は若者と比較すると感染症にかかりやすくなっています
肺炎やインフルエンザなどによって人工呼吸管理が必要となったり、死亡などの深刻な結末を招くことも少なくありません。
感染症にかからないように日頃の体調管理に気を付けるとともに、きちんと予防接種を行うことも重要です。

まとめ

サルコペニアやフレイルの予防は、それほど複雑なものではありません。
ですが、運動や食事、持病や感染症の管理などを継続することは状況によっては難しくなることもあるでしょう。
特に、高齢者ひとりで全てを管理することは難しいため、周囲の人間が積極的にサポートすることが重要となります。高齢者が周りにいる方は、サルコペニアやフレイルについて理解を深められると良いですね。