喘息の患者さんによく処方される気管支拡張薬。名前の通り、気管支を広げて呼吸を楽にしてくれます。喘息にだけに使われていると思われがちですが、風邪をひいて気管支炎になったときなどにも使われる場合があります。小さいころ、咳が出るとテープを貼ってもらった経験はありませんか?実は、それも気管支拡張薬の一つなのです。

今回は、この気管支拡張薬について詳しく見ていきたいと思います。

目次

気管支拡張薬とは?どのような人に使われるの?

気管支が炎症を起こした状態になると気管支が狭くなり息苦しくなります。その際、気管支を広げて息をしやすくする薬のことを気管支拡張薬といいます。

気管支拡張薬を用いる主な疾患としては、次のようなものがあげられます。

気管支喘息

気管支に炎症が続き、さまざまな刺激に敏感になり、発作的に気管支が狭くなることを繰り返す状態です。ゼーゼー、ヒューヒューといった呼吸音で、夜間や早朝に出やすいのが特徴です。

急性気管支炎

細菌やウイルスなどが原因で気管支に炎症を起こした状態です。気管支喘息と同様、風邪などを発端に起こります。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)

COPDとは慢性気管支炎・肺気腫と呼ばれてきた病気の総称で、長年のタバコ大気汚染などが原因となります。

慢性的に気管支・肺に炎症を起こす病気で、息苦しさ・呼吸困難などの症状があります。

気管支拡張薬の種類と作用

いろいろな疾患に使われている気管支拡張薬。もちろん、種類もさまざまです。ここでは、種類ごとの作用機序、副作用などについて詳しく見ていきましょう。

β2刺激薬

作用機序

交感神経に存在するβ2受容体を刺激することによって、気管支拡張作用を得られます。

副作用

交感神経を刺激するため、動悸手の震えが現れやすいです。

主な薬剤(成分名/商品名)

  • プロカテロール塩酸塩/メプチン
  • サルブタモール硫酸塩/サルタノール、ベネトリン
  • ツロブテロール塩酸塩/ホクナリン
  • サルメテロールキシナホ酸塩/セレベント

キサンチン誘導体

作用機序

気管支平滑筋を弛緩させることによって、気管支拡張作用を得られます。また、気管支の炎症を抑える作用もあります。

副作用

量が多すぎると副作用が出やすくなり、頭痛・動悸・手の震え・吐き気などが生じる場合があります。特に、子供などではけいれんを起こす場合もあるので、医師や薬剤師が適正服用量となるように注意する必要があります。

また、ほかの薬との併用で血中濃度の変化が起こりやすく、副作用が出やすくなったり効果が現れなかったりする場合があります。併用薬については医師・薬剤師に確認することが必要です。

加えて、喫煙によって作用が弱くなり、禁煙によって作用が増強することがあります。喫煙者はその旨を医師に伝え、禁煙などをする際は相談してから行いましょう。

主な薬剤(成分名/商品名)

  • テオフィリン/テオドール、テオロング、ユニフィルLA

抗コリン薬

作用機序

副交感神経抑制作用によって気管支収縮を抑え、気管支を拡張させます。COPDに有効とされています。作用時間から、長時間作用性抗コリン薬と短時間作用性抗コリン薬に分類されます。

副作用

抗コリン作用により、口の中が乾きやすくなります緑内障の一部、前立腺肥大症の人には使用できません。

主な薬剤(成分名/商品名)

  • チオトロピウム臭化物/スピリーバ
  • オキシトロピウム臭化物/テルシガン

気管支拡張薬の剤形

薬

剤形(薬の形)もいろいろなものがあります。飲み薬、吸入薬、貼り薬と剤形が異なることで、病気やそのときの状態に合わせて使い分けます。

ここでは実際のお薬を例にして、それぞれの使用方法や特徴をお伝えします。

飲み薬

基本的には毎日服用して、発作を予防したり息苦しさを改善したりするために用いられます。

喘息発作は早朝に起こりやすいため、就寝前の服用が有効とされています。商品名としてはメプチン錠テオドール錠などがあり、子供も飲めるようなシロップ・顆粒・ドライシロップも存在しています。

比較的使い慣れている剤形ですので使用することに抵抗は少なく、また錠剤であれば持ち運びしやすいため、管理しやすい剤形であるといえるでしょう。その結果毎日服用を続けることが容易になり、発作予防の目的を達成しやすいと考えられます。

吸入薬

発作を予防するタイプと、発作が起こったときに使うタイプの二つに分かれます。

薬が口腔内や喉に付着すると、口腔カンジダや嗄声などの副作用が出る場合があります。これらを防ぐため、吸入後はうがいを行いましょう。

内服薬に比べて全身性の副作用が少なく、患部に直接作用します。また発作時に使用するタイプのものは即効性があるため喘息治療には不可欠とされています。

しかし吸入は慣れるまで使いづらかったり、吸入後のうがいが必要であったりするため、負担になる場合も少なからずあります。

発作を予防するタイプのもの

発作予防のため、毎日吸入を行います。

セレベントスピリーバなど、1日1~2回吸入するものが多いです。最近では気管支の炎症を抑える吸入ステロイド薬と吸入β2刺激薬が一緒になったアドエアシムビコートなどが発売されており、毎日の負担を軽くして吸入し忘れを防いでいます。

発作時に使用するタイプのもの

発作が起こってしまった場合にのみ使用する、即効性のあるものです。

サルタノールメプチンなどが存在し、副作用防止のため1日に使用できる回数が決められています。

貼付薬

発作を予防したり、息苦しさを緩和させたりするために用いられます。ホクナリンテープがよく知られており、子供から大人まで使用されています。夜寝る前に胸、背中、上腕部のいずれかに貼ることで、早朝の発作を抑えるよう作られています。

貼るだけでよいため、吸入や錠剤が苦手な小さな子供も使うことができ、親も管理しやすいです。

しかし貼付薬であるため、かぶれなどの副作用が生じる場合がありますので、毎日違う場所に貼りましょう。

まとめ

気管支拡張薬には様々な種類と剤形が存在します。そのため今の自分の体の状態を理解して、なぜこの薬は毎日服用する必要があるのか、なぜこの薬は発作時しか使うことができないのか等を理解することが、症状悪化を防ぐことにつながります。

吸入薬は使い慣れない方も多いと思いますが、効果的に使うためにしっかりと説明書を読んでから吸入を行ってください。