皆さんはCOPDという言葉を聞いたことがありますか?最近テレビCMなどでも放送されているので、言葉自体はご存知の方も多いと思います。でも、COPDが実際にどんな病気なのか詳しく知っている方は少ないかもしれません。今回は、COPDがどのような病気なのか、その原因から治療法まで詳しく解説します!

目次

COPDとは

COPDとは、Chronic Obstructive Pulmonary Disease(慢性閉塞性肺疾患)の頭文字を取った名称です。タバコなどの有害物質の吸入によって肺に慢性的に炎症が起き、空気の流れ(気流)が制限される結果、呼吸困難などの症状がみられる病気です。この項では、この病気の病態についてもう少し掘り下げて説明します。

COPDの病態

有害な粒子やガスなどの有害物質を吸入すると、肺では炎症反応が起こります。これらの有害物質はサイズが小さいため、末梢気道や肺胞に到達しやすく、そこで炎症反応が起きます。末梢気道では炎症でダメージを受けた細胞を修復しようとして、新たに上皮細胞が形成されます。長期間有害物質を吸入していると、この炎症と修復の過程が繰り返され、気道壁はだんだん厚くなり狭窄します。また、肺胞では肺胞壁が破壊される結果、肺胞の弾性力や収縮力が低下し、息を十分に吐きだすことができなくなります。このようにして、気流が制限され、呼吸困難などが生じます。

COPDの原因

それでは、COPDの原因は何でしょう?以下に代表的なものを挙げます。

1.喫煙

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最大の原因はタバコです。喫煙者の15~20%にCOPDが発症し、COPD患者の90%は喫煙歴があります。

2.遺伝的素因

もうひとつ重要視されているのが遺伝的素因です。現在最も解明が進んでいるのがα1-アンチトリプシン欠損症という病気です。この病気があると、肺胞の破壊が促進することが分かっています。また、この病気を持っている人がタバコを吸うと、肺胞の破壊や肺機能低下に陥る速度が増加するといわれています。ただし、日本人ではα1-アンチトリプシン欠損症は非常に稀です。

3.大気汚染

大気中の汚染物質や、換気の不十分な室内での調理なども原因となることがあります。

また、中国で問題となっているPM2.5も原因として挙げられます。PM2.5はCOPDだけでなく、喘息のリスクが増加する原因ともされています。

COPDの症状と気をつけるべき点

COPDの症状

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慢性的にが続き、労作時に呼吸が苦しくなります。口をすぼめて呼吸をしたり、肺が過膨張して胸郭が前後に大きく膨れてきたりします。進行すると、体重減少が認められます。ただし、このような典型的な症状は、重症になるまで出現しないことが多いです。つまり、COPDの症状が出てきたときは既に肺がかなりダメージを受けていることを示しています。また、合併症として心不全うつ状態骨粗しょう症、筋力低下、消化性潰瘍などが認められることもあります。

気をつけるべき点

COPDの患者さんが最も気をつけなければならないのが「COPDの急性増悪」といわれる病態です。これは、呼吸困難や咳、痰などのCOPDの症状が悪化した状態で、放っておくと命に関わる可能性もあります。急性増悪の原因としては、肺炎球菌やインフルエンザ菌などの細菌やインフルエンザウイルスなどによる呼吸器感染症が多いです。

COPDの診断

診断には、呼吸機能検査高分解能CT検査が有効です。

呼吸機能検査では、息を吸ったり吐いたりすることで肺活量と息を吐いた時の通り具合などを調べます。スパイロメトリーという器械を咥え、いっぱいに吸い込んだ息をできるだけ速く吐き出すという検査です。

最初の1秒間で吐き出せた量(1秒量)を、思いきり吐き出した息の全体量(努力肺活量)で割って「1秒率」を算出し、この値が70%未満かつ他の疾患の可能性を除外できる場合にCOPDであると診断されます。

さらに詳しく肺や気管支の状態を調べる場合、高分解能CT検査を行います。この検査では、肺胞の破壊および早期の気腫病変が発見できます。

COPDの治療法は?

 

1.禁煙

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まずはなんといっても禁煙です。禁煙によってCOPDの進行が遅くなり、寿命が伸びることが分かっています。COPDの治療法の中で最も効果的といわれています。

2.薬物療法

呼吸困難などの症状がある患者さんには、気管支を広げる薬(抗コリン薬やβ2刺激薬など)を使います。

3.予防接種

COPDの急性増悪を防ぐための治療です。インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンがあります。

4.呼吸リハビリテーション

これは、寿命を長くするわけではありませんが、QOLの改善を目的として行います。腹式呼吸、口すぼめ呼吸などの呼吸訓練や筋力トレーニングなどを行い、少しでも楽に呼吸できるようにします。

5.在宅酸素療法

低酸素血症のある重症の患者さんに行います。寿命を延ばし、QOLを改善する効果があります。

6.肺移植

α1-アンチトリプシン欠損症が原因のCOPDの場合、肺移植による治療が可能です。日本人では非常に稀なケースではありますが、欧米ではこのα1-アンチトリプシン欠損症が問題となります。そのため、欧米では若年性肺気腫(若年発症COPD)も多く、肺移植の適応となります。

最後に

いかがでしたか?COPDについて理解できましたか?大切なのでもう一度言いますが、タバコを吸っている方はCOPDのハイリスクです!残念ながらCOPDは一度かかると治らない病気です。しかし、早期に発見して治療することで進行を遅らせ、他の人と変わらない生活を送ることができます。老後を健康的に楽しむためにも、一刻もはやく禁煙することをおすすめします。