トイレが近くて夜何度も起きてしまう、外出中に頻繁にトイレに行きたくなるといった尿のトラブルで悩んでいる方は少なくありません。
尿トラブルに悩んでいる方の潜在患者数は1,000万人にものぼる(大鵬薬品より)といわれています。特に、年を重ねるとともにこのような症状が出やすくなるため、今は大丈夫でも将来はわかりませんよね。
ときには、日常生活にも支障をきたしかねない尿トラブルである「頻尿」、今回は頻尿に効く漢方について詳しくご紹介したいと思います。

目次

頻尿ってどんな状態?

頻尿とは一般的に、24時間で8回以上の排尿があることをいいます。また寝ている間に3回以上の排尿がある場合は夜間頻尿ともいわれます。

頻尿の原因としては以下のようなものが存在します。

  • 緊張や気分、心因性のもの
  • 利尿作用がある飲み物の飲みすぎ
  • 加齢
  • 過活動膀胱(膀胱が過剰に活動して、尿が膀胱にたまる前に排尿する)
  • 何らかの感染症(膀胱炎や尿道炎など)
  • 何らかの疾患(前立腺肥大や腫瘍、子宮筋腫など)

頻尿により夜間の排尿が多くなると、睡眠不足を引き起こす恐れなどもあります。また、加齢などによる排尿機能の低下以外にも、いろいろな疾患が原因になっている恐れもあるため、漢方を服用する前やしばらく服用しても効果が無い場合は泌尿器科などにかかるようにしましょう。

漢方における頻尿

漢方では人の体は「(人体を支える原動力、生命エネルギー、心身の機能を表す)」「(各組織に栄養を与えるもの、血液、身体の力や生命力の程度を表す)」「(血液以外の体内の水分、体を潤すもの、体液の活動状況を表す)」で構成されていると考えられています。

このうち、「水(すい)」に異常が起こっている状態(漢方では「水滞・水毒」と呼ばれる状態)であるときに、頻尿などの尿トラブルが起きると考えられています。そして、この「水」の調整をしているのが「」であり、この腎の働きが衰えることを「腎虚(じんきょ)」といいます。

漢方では、加齢により「気・血・水」が消耗され潤いや温もりが失われることで膀胱がかたくなり、多くの尿をためることができなくなり、尿の回数が増えていくと考えられています。そこで、このような状態を正常に近づけて頻尿を改善させます。

頻尿に効く漢方

トイレ

頻尿の症状があるときに、使われる漢方を紹介します。

八味地黄丸(はちみじおうがん)

体力中等度以下の方で、疲れやすく、手足が冷えやすく、尿量減少又は多尿で夜にトイレに起きてしまう方に用いられます。

体を温めて「気・血・水」を増やして巡らせることによって頻尿や夜間頻尿、尿漏れなどを改善させます。

また別名「腎気丸(じんきがん)」とも呼ばれており、「腎虚(じんきょ)」の状態によく用いられている漢方で、昔からよく使われています。

牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)

体力中等度以下の方で、疲れやすく、胃腸障害がなく、尿量減少又は多尿な方の頻尿などに用いられます。

八味地黄丸に牛膝・車前子という生薬が加えられた処方で、下半身のむくみやしびれがある方はこちらの方が向いています。医療現場では糖尿病患者さんに起こるしびれにも応用されることがあります。

六味丸(ろくみがん)

体力中等度以下の方で、疲れやすく、手足のほてりや口渇があり、尿量減少又は多尿な方の頻尿、排尿障害に用いられます。

八味地黄丸から桂皮・附子を抜いた処方で、余分な熱や水滞を取り除き症状を改善させます。

清心蓮子飲(せいしんれんしいん)

体力中等度以下の方で、胃腸が弱く、冷え症で神経質の傾向があり全身がだるい方の頻尿や排尿痛などに用いられます。

ストレスなどの精神的な疲労による排尿障害によく用いられる漢方で、四君子湯を元にして組み立てられているため、八味地黄丸では胃腸障害がおきてしまう胃腸の弱い方でも服用できます。

市販ではユリナールといった商品名でも販売されており、手に入りやすいお薬です。

まとめ

夜間に何度もトイレに起きたり、また尿が気になって外出できないなんて、つらいですよね。そんなときには自分に合った漢方を服用してみましょう。

また漢方を服用するとともに、利尿作用のある飲み物(カフェイン)を控えめにしたり、骨盤の底の筋肉を鍛えたりなど日常でもできることを行ってみるのもいいでしょう。