一般の方が「血尿」という言葉を聞くと、「血の混じった赤いおしっこ(肉眼的血尿)」を想像するかもしれません。確かに、「血が混じった」という部分は医学的にも間違ってはいませんが、血尿は必ずしも赤いわけではありません。見た目ではほとんど変化がない場合でも、おしっこに血が混じっているケースは少なくないのです(顕微鏡的血尿といいます)。
また、痛みなどの症状がほとんど認められない場合でも、実際には血尿が出てしまっているということもあります。正しい認識が得られていない「血尿」について説明します。
血尿ってなに?
血尿とは、文字通り「尿中に血液が混じっている」状態のことをいいます。
通常、尿は腎臓で血液中の不要な水分や不純物などをろ過することで作り出され、腎臓→尿管→膀胱→尿道というルートを通って体外へ排泄されます。このルートのいずれかが障害されることによって血尿は生じます。
色がない血尿(顕微鏡的血尿)って?
初めでも触れましたが、血尿だからといって必ずしも尿が赤くなるわけではありません。
尿中に含まれる血液の量が少なければ、見た目では正常の尿とほとんど変わらないこともあります。
そのため、定期健診時の尿検査などで偶然発見されるケースも多く、その場合には「尿潜血」の項目が陽性となります。
血尿が指標となる病気
血尿が出ているということは、上でも説明した腎臓→尿管→膀胱→尿道のルートのいずれかにトラブルが起こっている可能性を示唆しています。血尿を引き起こす疾患としては主に以下のようなものがあります。
腎臓が障害される疾患
腎臓のなかでも、血液をろ過して尿を作る役割を担う糸球体という部分が障害されると血尿が生じます(糸球体性血尿)。
糸球体が障害される腎疾患で有名なものとしては、IgA腎症や遺伝性腎炎などがあります。
なお、血尿の原因が糸球体の異常である場合は、血尿に加えて蛋白尿が生じる場合が多く、足のむくみなどといった特徴的な症状がみられることも少なくありません。その場合、重要な疾患の可能性も高く、専門的な検査が必要となる場合もあります。
尿管や膀胱、尿道が障害される疾患
尿管や膀胱、尿道の壁がダメージを受けて出血することでも血尿は生じます。主なダメージの原因としては、炎症(膀胱炎や尿道炎など)や結石のほか、がんを含む腫瘍などがあります。
また、交通事故などによって外部から強いエネルギーが加わることでも血尿が生じることもあります。
一見血尿のように見えるけれど…
このように、血尿は腎臓や尿管、膀胱、尿道などの異常を示すバロメーターとなります。
ただし、痔による肛門からの出血や、女性であれば生理による性器からの出血が尿に混ざってしまい、これが血尿であると誤解されてしまうこともあります。
まずは病院にてきちんとした環境を整えたうえで尿を採取し、本当に血尿かどうかを判断することが大切です。
まとめ
血尿は腎炎や腫瘍などの重大な疾患の早期発見に役立つ重要な症状の一つです。もし定期健診で血尿・尿潜血を指摘されたり、トイレで血尿が出ていることに気付いたりした場合には必ず医師の診察を受けるようにしましょう。