「もしかして、わきがかも?」と思っても、誰に相談したら良いのか分からないですよね。どのくらい人に迷惑をかけているのか、治療が必要な状態なのか…考えれば考えるほど、不安になったり誰にも会いたくないと思ったり、ネガティブになってしまう一方かもしれません。
わきがは、病院で治療をすれば改善させることができる症状です。この記事では、わきがのメカニズムとその治療法について解説します。においに悩んでいる人は本記事を参考に、医療機関で相談してみてください。

目次

腋臭症(わきが)が起こるメカニズムとは?

わきがは、医学的には腋臭症(えきしゅうしょう)と呼ばれます。

ヒトの汗腺にはエクリン汗腺アポクリン汗腺の2種類があります。エクリン汗腺は全身に分布しているのに対し、アポクリン汗腺は脇の下や外陰部・外耳道・乳輪などに分布しており、性ホルモンの影響から思春期になると分泌が活発になります。

アポクリン汗腺から分泌された汗自体は無臭です。しかし腋毛(わき毛)の量や精神的なストレス・緊張などにより発汗が多くなると、皮膚に付着している細菌の繁殖が増えます。

これらの細菌が汗に含まれているたんぱく質や脂肪を分解してできる低級脂肪酸、揮発性硫黄化合物、揮発性ステロイドが腋臭症の原因と考えられています。

腋臭症は遺伝する?

腋臭症は顕性遺伝(優性遺伝)であるため、親が腋臭症であれば、その子供にもわきがが現れることがあります。

※遺伝子の2つある型のうち、特徴が出やすいものを「顕性(優性)」、出にくいものを「潜性(劣性)」と呼びます。
中学や高校の生物で「優性遺伝」「劣性遺伝」という用語を習った方が多いと思いますが、日本遺伝学会では現在、「顕性」「潜性」へと用語の変更を進めています。

腋臭症の手術の対象となるのはどんな人?

脇の臭いを気にする女性

手術の対象となるのは、全員ではない

腋臭症は、症状を訴えるすべての人が手術を受けるべき疾患ではありません。手術の対象となるのは、限られたケースです。

というのも、実際には腋臭症ではないにも関わらず「自分には強い体臭や口臭がある」と思い込んでしまっている方は少なくありません。そういう方々に対しては、手術を行っても意味がないため、別の対応が必要となります。

加えて、腋臭症であっても「自分では臭いが気にならない」という方は手術の対象とはなりません。

手術の適応となる条件

診察の際に医師にも「手術が必要」と判断された場合に手術を受けることになります。考慮される条件として、次のようなものがあります。

  • 汗の量が通常以上である
  • 実際に強い臭いが生じている
  • 生活に支障をきたしている
  • 耳垢が湿っている

汗の量については、アポクリン汗腺からの発汗量は分かりにくい傾向があります。汗の量以外にも、カウンセリングを通じて臭いの強さや、患者さんの日常生活への影響を考慮し、手術適応が判断されます。

例えば、エクリン汗腺からの発汗が多い多汗症を合併している場合は、アポクリン汗腺からの発汗がそこまで多くなくとも、臭いが広がりやすい可能性があります。

腋臭症ではどんな手術を行うの?

腋臭症の手術で最も多く用いられているのは剪除法(せんじょほう)と呼ばれる方法です。

剪除法では、脇の下にあるアポクリン汗腺を、皮膚の裏側から皮下組織ごと切除します。

手術を行うことで、においの大半は取り除くことができます。しかし、汗腺を完全に取り除くことは難しいため、においをゼロにすることは困難です。加えて、汗腺は再生するため、手術後に症状が後戻りしてしまう場合もあります。

腋臭症の手術のリスクと合併症

手術では脇の下の皮膚を切開するため、傷ができます。その傷が治るまでの間、熱感や腫れ、痛み、内出血、皮膚のひきつれが起き、傷の部分を動かして血腫ができた場合は皮膚壊死を起こしてしまうこともあります。手術後は医師の指示に従い、しっかりと止血した上で安静にしておく必要があります。

 腋臭症は手術以外でも治療できる?

腋臭症で手術の対象となる方は限られています。では、手術を受けられない場合は改善できないかというと、そんなことはありません。

殺菌作用のある外用薬による治療のほか、脱毛(細菌の繁殖を減らすことができ、結果的に腋臭症の改善にもつながります)なども有効な治療法とされています。

また、実際には臭いがないのに「自分はわきがである」と思い込んでしまっている方に対しては、認知行動療法などが効果を発揮する場合があります。

いずれにせよ、一度皮膚科を受診してみると、自分にあった治療法がどのようなものなのかを知ることができます。

まとめ

脇の臭いが気になる場合、まずはこまめに汗を拭いてみたり、市販のデオドラント商品や制汗剤を試してみたりするのも一つの方法でしょう。それでも改善しない場合や、納得できない場合には皮膚科で相談してみてください。

腋臭症で悩んでいるのは、あなただけではありません。欧米やアフリカの諸国と比べると、日本人で腋臭症の人は少ないと言われますが、その分、自分の「におい」に深刻に悩まされるケースは多いのです。医療機関で適切な治療を受けることで、悩みの解決へと一歩踏み出しいただければと思います。