においを感じる嗅覚は、生活になくてはならない感覚です。食事の匂いは食欲をそそりますし、花の香りで心を落ち着かせることもあるでしょう。また体に有害なガスの臭いを察知するなど、命を守るためにも必要になってきます。

しかし、鼻の疾患や怪我などが原因で嗅覚に何らかの異常が生じてしまうと、においを察知できないといった嗅覚障害が起きる可能性があります。今回は嗅覚障害の症状や嗅覚障害の原因として考えられる疾患などを紹介していきます。

目次

嗅覚障害が起きる理由とは

嗅覚とは「におい」を感じる感覚で、五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)の一つです。鼻の中は粘膜で覆われていて、上部の粘膜には嗅上皮(きゅうじょうひ)と呼ばれる部分があります。そこには嗅神経という神経があり、そこがにおいを感知し脳に刺激を伝えることで、においを感じることができます。

嗅覚障害は嗅上皮を含む鼻の粘膜やにおいを伝える神経、伝えられたにおいを感じる脳に何らかの異常が起きた場合に起きます。

嗅覚障害の症状を5つに分類

嗅覚障害は、嗅覚を感じるプロセスのどの部分が被害を受けるかで、見られる症状が異なってきます。症状は大きく5つに分類することができるので、それぞれ簡単に説明します。

嗅覚脱失

においを感じることが全くできなくなってしまう状態

嗅覚減退

においを感じることはできるが、感じる力が弱くなってしまった状態

嗅覚過敏

少しのにおいでも過剰に感じてしまう状態

嗅覚錯誤

特別な悪臭でないにおいでも、悪臭に感じてしまう状態

嗅覚幻覚

実際は何もにおいがしないのに、何かのにおいを感じてしまう状態

嗅覚障害はにおいを感じないという症状だけでなく、過敏に感じすぎたり、間違って感じてしまったりと様々な症状が含まれます。

嗅覚障害を引き起こす原因

鼻をティッシュで覆う少年

嗅覚障害を引き起こす原因について見ていきましょう。それぞれの原因に特徴があるで、違いを参考にしてみてください。

アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎の主な症状は鼻づまりです。鼻づまりがあると、においが嗅上皮のある粘膜まで到達しないためにおいを感じにくくなってしまいます。また、炎症による粘膜の異常で嗅覚障害が生じる場合もあります。

慢性副鼻腔炎

アレルギー性鼻炎と同様、鼻づまりや粘膜の障害によってにおいを感じにくくなってしまいます。嗅覚障害の原因の中で最も多い疾患とされています。

鼻中隔弯曲症

鼻中隔弯曲症は鼻の穴を左右に分ける壁である鼻中隔が曲がってしまい、片方の鼻の穴を狭くしてしまう状態です。鼻の構造上、慢性的な鼻づまりが生じる場合があります。結果としてにおいは嗅上皮まで届くことができず、嗅覚障害を生じてしまいます。

風邪

ウイルスなどによる風邪でも嗅覚障害が生じるとされています。風邪の原因となるウイルスによって嗅神経のある粘膜が障害されてしまうことが原因と考えられています。においを感じにくくなることに加えて、嗅覚錯誤のような症状も見られることがあります。

頭部外傷

事故などで頭を強く打つことで嗅神経が障害されてしまい、嗅覚障害が起きる可能性があります。嗅覚が低下するとともに、嗅覚過敏の症状が見られる場合もあります。

薬物

薬の毒性などで嗅神経がダメージを受け、嗅覚障害を引き起こす場合があります。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症の初期症状として嗅覚障害が生じる可能性があります。においは感じるが、どんなにおいか分からないといったにおいの認知機能が低下する症状が考えられます。

パーキンソン病

パーキンソン病は脳の神経に異常をきたすことで体が震えたり、こわばったりといった運動の障害が生じる病気です。加えてにおいの認知機能が低下するといった嗅覚障害も見られることがあります。

精神・心理的要因

統合失調症などの精神疾患などでも嗅覚障害が生じる場合があります。この場合、自分のにおいを異臭として過敏に感じることがあります。統合失調症の症状の一つとして嗅覚幻覚を伴う場合もあります。

まとめ

においが感じられない、においを過剰に感じるなどの嗅覚障害は様々な原因が考えられます。鼻の疾患以外にも嗅覚障害になる可能性があるため、気になる場合はまずは耳鼻科を受診してみましょう。